「Happiness!」
東西南北!

東西南北! 3

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ツバサさんとカズヤさんが帰った後、エイチとレンさんに、演奏をチェックしてもらった。
カンが、さっきの失敗を引きずらないかと心配したけど、なんとか切り替えられたみたい。


「おーし、よく練習した。特に、ロウ。
 お前、パーカッションのノリがすっげぇいいよ。
 適度な遊びも入ってて、カイとカンを巧く乗せてるな」


厳しく言われると覚悟してたから、褒めてもらって、ちょっとびっくり。
レンさんからも、細かい注意を言われただけで、大筋ではOKをもらえた。




「お父さんになるからかな。ぐんぐん伸びてるね。
 俺はダメ親父だけど、ロウなら、いいお父さんになれそう」

「とーちゃんは、音楽の神様に選ばれてんだから、しかたないじゃん。
 ダメ親父なんて、自分で言うなよな」


レンさんに、エイチが真剣にツッコんでる。
言い合いになるのかと焦ってたら、シュンが間に入った。


「レンさん。英一にとっては、レンさんは自慢の親父なんですよ。
 だから、たとえ、ご本人でも落としてほしくないんです」


レンさんがすっごく嬉しそうに笑って、エイチは恥ずかしそうにそっぽを向いた。

子供っぽいエイチなんて、初めて見た気がする。


「翼も言ってただろ。今が最高に幸せなら、過去なんてどうでもいいって」

「んー、それは若いから言えることだよ。
 奈津も英一も許してくれたけど、俺自身は反省することばかりだしさ。
 それに、とーちゃんくらいの年になるとね、つい、過去を振り返ってしまうんだ」



いくら見た目が若くても、この人はもう七十近い。
残された時間は、そんなに長くはない。
哀しいけど、それが自然の摂理。



「自分の持ってるものを、できるだけ下の世代に渡しておきたい。
 BANZAI-SANSHOは、俺が全面的にプロデュースする、最後のバンドになると思う。
 だから、精一杯のことはやるよ。俺が動けなくなった後は、セルフでいけるようにね。
 まぁ、英一や優児たちがいるし、心配はしてないけど」


いつもニコニコしてて、音楽のことだけは厳しい。
音楽仙人みたいなレンさんが、そんなことを考えてるなんて、なんだか切なくなった。

そして、最後のバンドとして選んでもらえたって、ありがたさと誇りを同時に感じる。





「なーに、しんみりしちゃってんだよ。
 とーちゃんは、イヤでも長生きするってば。
 健康診断で一度も引っかかったこともないし、かーちゃんがガッツリ管理してるじゃん」



暗さを吹き飛ばすように、エイチがいつものエイチに戻った。

その時、なんとなくだけど。

レンさんだけじゃない、シュンのことも心配してるんだろうって思ったんだ。


シュンとは十二歳も離れてるんだよね。
自分だけが取り残される可能性って、イヤでも考えちゃうよな。

年の差は埋めようがないし、事故や病気は、いくら予防しようとしても限界はある。



大好きな人の死。

考えたくもないけど、いつかはやってくる。

ばーちゃんの時は、子どもで意味がわかんなくてさ。
もう会えないって、キャシーに言われて、不思議でしかたなかった。

「どうして?」「どこにいるの?」って、質問ばかりしては、キャシーを泣かせてた。
いくら子どもでも、空気読めよな。
ほんと、キャシーと親父に悪いことした。

引っ越して、新しい生活に馴染んでいくうちに、ばーちゃんがいないことに慣れた。

そんな感じだったから、まだ「死」ってものに、まともに向き合ってはいない。





「今日は、いろいろ考えさせられることばかりだったね」


終わってから、ロウの家でミーティングしてたら、ロウがポソっと言う。

ツバサさんの言葉、レンさんの言葉、エイチの表情。

ロウは、俺よりずっと敏感だから、意味を汲み取ったんだと思う。


「ボランティアで施設の子どもたちに会う機会は、たくさんあった。
 中には虐待されて、心を閉じてる子もいた。
 それでも、あそこにたどり着いただけ、あの子たちは運が良かったんだ。
 そんなことも、すっかり忘れてたな」

「ん、俺、メチャクチャ、反省した。
 つい、聞きたくなっちまってさ。
 ツバサが気にしてないからって、聞いていいことと悪いこととあるよな」


カンがしょげかえっちゃってて、ロウと二人で頭を撫でて慰める。

ここまで落ち込んだなら、もう追い込んじゃいけない。
さすがのカンも、迂闊なことは言わなくなるんじゃないかな。





マンションまでの帰り道、カンが急に立ち止まった。
合わせて立ち止まると、俺を見上げて、真剣な顔してる。


「お前は、絶対に、俺より先に死ぬなよ」


同じこと考えてたんだ。

でもさ。


「俺だって、取り残されるのはイヤだよ」

「そっか、そーだよな。せーの!って、一緒に死ねればいいのにな」



カンの言葉で、親父とキャシーの会話を思い出した。

俺が寝てると思ってたんだろう。
リビングで好きな日本酒を飲みながら、親父がキャシーに甘えてた。


『お前が死ぬ時は、俺も連れて行け。
 俺が死ぬ時は、ちゃんと見送ってくれな』

『ユージったら......その日は、誰にも決められないのよ。
 でも、その瞬間まではそばにいられるよう、最大限の努力はするわ。
 だから、ツアーにも同行してるでしょ?』


聞いてしまって、ヤバいと思ったから、そーっと自分の部屋へ戻ったんだよね。
もうカンとステディになった後だったから、卑屈にはならずに済んだけどさ。

親がずっとラブラブなのは、日本だけじゃなく、ステイツでも珍しいんだって聞いた。
コウセイとスーは、うちと大差ないらしいけど、サムとカレン、ゴウとリョーコは、そんなにベタベタしないって。
インターの友達も、親が離婚だ再婚だって、振り回されてるヤツがいたよな。


『普通は、夫婦ってより家族って感じになるのよ、日本では』


リンがそう言ってた記憶がある。




自然とそばにいられるなら、それが一番の幸せだよな。

そう思ってたら、言葉が溢れた。



「日本でも、パートナーシップ制度が導入されてきてるだろ。
 俺たちが生きてる間に、もしかしたら同性婚が認められるかもしれない。
 その時は、プロポーズするからね」



周りに人がいないかどうか、確認もしなかった。
言っちゃった後に、カンがキレると思って、すっごく焦った。

外では「恋人同士」な雰囲気を出すと、カンは嫌がるから。

でも、よく考えたら、先に「死ぬな」って言い出したのは、カンなんだけどね。


カンは、みるみるうちに顔を赤くして、俯いた。
何かボソボソと言ってるのが、聞こえてくる。



「バカ。俺が先にプロポーズするつもりだったのに、いきなり言うなよ」











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