「Happiness!」
一発逆転?!

一発逆転?! 9

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エイチに厳しい批評をされた翌日、カンの家でミーティング。
四人で今までの曲を流しながら、まずは、どんな音が演りたいのか話し合うことにした。

スタジオには、ホワイトボードも置いてあるから、そこに今までの傾向なんかを書いてみる。


「そんなに個性ないかなぁ...。私は対バンで聴いてた時から感心してたけど」


意見を言うって感じじゃなくて、まるで独り言みたいに、カオルが零した。


カオルが、そう考えてもおかしくはないよ。
ただ、俺とカン、ロウなら、あの言葉は刺さるんだ。


「えっとね、確かに、日本には少ないと思う。
 でも、言われてみれば、エイチの言うことは正しいんだ」


その理由は、はっきりしてる。
俺たちが聴いてきた音の量とジャンルが、同世代で生粋の日本人のカオルとは違いすぎるんだ。



「ガキの頃はさ、親父たちの音や親父たちの好きな音ばっかじゃん?
 そのうち、親父たちからは離れたくて、色の違う音に手を出した。
 それこそ、ヒップホップから派生してEDMだの。
 逆に、アコースティックにこだわってみたりしてさ」

「うん、カンの言うとおり。古いのから新しいのまで、手当たり次第に聴いては演ってた。
 ただ、ほとんどが、日本の曲じゃなかっただけなんだよ。
 だから、カオルにはわからなくても、エイチにはバレバレだったんだと思う」



演奏した三曲の、どれがどのミュージシャンに影響されてるか。
自分では意識してなかったけど、帰ってから、よく考えてみた。

それをホワイトボードに書いていくと、カオルが真剣に眺めてる。
俺たちの説明に納得したのか、何度も頷いてる。



「そういうことなんだぁ。うん、私、聴くのはJPOPばかりだったかも。
 助っ人やってたバンドもそんな感じが多かったしね」

「子どもの頃に聴いたのが、染み付いてしまったところもあるよね。
 全くのゼロから作り上げるのは、不可能に近いから」


ロウは俺を慰めてるんだろうな。
でも、心配しなくていいよ。俺、自分で思ったより、落ち込んでないんだ。


「エイチの知り合いの曲聴いた時、単純に「すごい」って思ったんだよね。
 次に、自分がどれだけ身の程知らずだったかって、思い知ったんだ。
 あの人たちは、純粋に音楽が好きで、自分たちを表現してたわけでしょ?
 プロになりたいってわけじゃないのに、あんなに人を惹きつける曲が作れる。
 つまり、天才ってことじゃん?」


三人が、俺を見て頷いた。


「俺は、ギターについては自信があったけど、曲作りは自信があるわけじゃなかった。
 みんなで演るのが楽しくて作り始めたのが、きっかけだしさ。
 それぞれのパートが活きることに重点を置いて、オリジナリティが後回しになってたなって。
 エイチに指摘されて、気づかされたんだ」

「あー、それは俺たちにも責任があるかなぁ。
 自分たちの好きなように演れるのが第一で、全体的なことはカイに任せっぱなしだったよね」


ロウが珍しく眉間に皺を寄せてる。


「そっかもなぁ。スコア見たら、まずどう歌うか、どう弾くかばっか気にしてた。
 対バンでは、似たような音のヤツって、ほとんどいなかったし、安心しちまったかも」


カンも、いろいろ思い返してるのかな。
表情は冷静だけど、気弱な言葉。


「親父が作ってるから、当然、俺も作るもんだって感じだったんだよね。
 でも、曲作りが好きか嫌いかって聞かられたら、好きだって言える。
 だから、まずは、俺たちがどうしたいか。それが重要なんだと思う。
 エイチが言ってくれたみたいにさ」



それから、俺たちは、自分たちの長所と短所を分析することにした。


長所は、全員が、きちんとスコアを読めて、テクが充分だってこと。
エイチも言ってくれたしね。

それと、四人が四人とも、どのパートも演れること。
特に、カオルがキーボード、ギター、ベースにも回れるのは、大きなアドバンテージ。

でも、それが短所にも繋がることに、昨日の夜、気がついた。

制限がない分、どんな音を作っても演りこなせてしまえる。
演奏すること自体が好きで、思い通りに弾けたら、そこで満足しちゃってるよね。

曲作りでは、どんなタイプでも、ラブソングがメインになっちゃってる。
俺からカン宛のラブレターみたいなものだから、そうなるのは当たり前なんだけど。

カンが俺の想いを受け取って、歌い上げてくれたら、すごく嬉しい。
それを他人がどう思うかまでは、ボランティアに行くまで、あんまし気にしてなかったよな。





「聴く人が共感できないと、プロにはなれないよね。
 それは、俺たちの世界を作り上げて、そこに引きずり込むのか。
 あるいは、聴いてる人も一緒になって、世界を作り上げていくのか。
 違いはあっても、独りよがりになっちゃダメなんだ」

「そうだね。DVD見てるだけでも、引きずり込まれるステージはある。
 父さんたちは前者で、SMSは後者かな。
 いろんなライブを見てみろってアドバイスは、それを実感しろってことだよね」



俺とロウが話してたら、カオルがスマホをチェックしてる。


「今、友達からチケット余ったってメッセが来た!
 人数分あるから、今度の木曜に行ってみない?」

「お、どんなバンドなんだよ?日本のバンド?」

「うん、一昨年デビューして、去年、大ヒット飛ばしたバンド。
 映画の主題歌が、ミリオン越えして、なかなかチケット取れないんだ。
 何人かで一斉に申し込んだら、スタンドが五枚余ってるって」

「あ、ちょうどいいね。スタンドの方が全体見えるって、ソウジロウも言ってた」



厳しいこと言われて、崖っぷちにいるはずなのに、俺はワクワクしてた。
自分でもよくわからないけど、新しいことに挑戦するって、難しいけど、すごく楽しい。



四人で、そのミュージシャンのこと調べたりしてると、コウセイがやってきた。
それも、お客さんを連れて。


あ、この人、たまにエレベータやエントランスで見かける人だ。

背はコウセイよりちょっと高い。
親父くらいかな。
年は、親父やコウセイと同じくらい?

見た目は、髪は茶色がかった黒髪に少しだけ白髪が混じってる。
日本人の割にはくっきりした目鼻立ちで、かなりの美形。
表情は、穏やかでニコニコしてる。
釣られてニコニコしたくなるような感じの人。



「俺たちの大先輩で、川上錬太郎さん。エイチの親父さんだよ」

「えーーーーーーーーーーーー!!!!」


コウセイが紹介してくれて、俺たちは失礼だけど、大声で叫んだ。
だって、どう見ても親父と同年代にしか見えないよ?

エイチの親父さんってことは、六十過ぎだよね?

えっと「Quiet Life」のヴォーカルでリーダーだった人だっけ。
SMSの十五周年ライブで歌ってたのDVDで見たけど、別人みたい。




「はじめまして。英一のとーちゃんです」


レンタロウは、ニコニコしたまま、気さくな感じで挨拶してくれた。
俺たちは、慌てて頭を下げる。


「英一がね、「気に入ったけど、自分には時間がない」って言っててね。
 よかったら、お手伝いできたらなーって、俺が来たの。
 おせっかいかもだけど、話くらいは聞かせてくれるかな?」

「レンさんは、エイチと同じ。
 自分たちのバンドだけじゃなく、いろんな人に曲書いたり、プロデュースもやってる。
 知ってると思うけど、業界ではレジェンド的存在なんだ。
 数は抑えてるけど、今も現役バリバリのプロデューサーだよ」

「今日は、話を聞きに来ただけだし、ただの近所のおじさんでいいよー」



コウセイが説明してるような、偉そうな人には、全然見えない。
とにかく、見た目と年のギャップがすごくてさ。

下手すると、親父のが年上に見えるよね、うん。
親父が老けてるのかもしれないけど。

そう言えば、シュンと十歳近く離れてるのに、シュンと同い年くらいに見えたよな。
シュンの年もエイチの四十も驚いたけど、この人が一番の驚きだ。



ああ、親父たちのプロデュースは、この人の相棒がやったんだ。
もう、亡くなったギタリストのルイ。
この二人のステージ姿は、DVDで見てても鳥肌が立つくらいのカリスマ性に溢れてた。



あれ、カオル、どうしたの?
直立不動で固まってる?



「......あ、あの、すみません。後でサインくださいませんか」

「ん、いいよー。俺のでいいなら、いくらでも」



カオル、すっごく緊張してたと思ったら、そんなこと言い出すなんて!
親父たちにも、一度も言わなかったのに!!



「SMSの十五周年ライブのDVD見て、すっごく感動しました!」


うわ、目がハートになっちゃってる!

レンは変わらずニコニコして、「ありがと」とか言ってるんだけど......。


ロウの笑顔がひきつってるのが、俺、ちょっと怖い。 











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