「Happiness!」
一発逆転?!

一発逆転?! 8

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この人たちにはあって、俺たちには足りないもの。

エイチに突きつけられた問題を、メモリをフル回転させて、俺の頭は考える。
同時に、映像と音を再現しながら。

シャウト直後の、ギターリフを聴いて、まず驚いたよな。
歌も、巧いだけじゃない、歌詞は自分たちの感情を爆発させてるのに、ちゃんと韻を踏んでた。

こんなバンド、日本にいたの?って、まず思ったってことは......。

ああ、答えはこれだ。



「......オリジナリティですか?」



勇気を振り絞って、思いついた答えを言ってみた。
それなりに考えてきたはずなのに、いつの間にか重要視しなくなってた気がする。



「当たり。さっきの三曲は、全部、海が書いたんだよな?
 メンバーのテクや得意技を考慮して、凝ってはいる。
 でも、それだけだ。どっかで聴いたことがあるような音ばっかじゃん」



エイチの言葉は、グサリと俺の心を刺した。

思い返してみれば。

自分の中から湧いてきたもののはずなのに、元を辿れば、どこかに行き当たる気がする。



「三曲が三曲とも、別のバンドの曲っつっても通る。
 テクだけ考えりゃ、今すぐにでも、スタジオやサポートでプロになれるよ。
 ただ、バンドとしてデビューするんなら、お前らじゃなきゃ作れない音ってのが必要だろ」


エイチは、ニヤニヤ笑いを消して、真剣な顔で俺たちを見た。
対照的に、他のメンバーは、穏やかに笑ってる。



「自分たちの売りを考えろ。どんな層に受けるのか、どんな世界を作りたいのか。
 自分の主張を音に乗せたいのか、それとも、客を楽しませたいのか。
 それがわかんねぇうちは、バンドとしては長続きしねぇよ。
 それに、お前らは、すぐに二世バンドだってバレて、世間の目は厳しくなる。
 だから、他のヤツらより、ハードルは高いんだ。
 俺たちも通ってきた道だ。越えられなきゃ、プロとしては食ってけねぇよ」



正論...だよな。

真っ向から、ぶつけられて、俺、固まるしかなかった。





「そんなに深刻な顔しなくていいぞ。
 英一は、厳しいことは言うけど、才能のないヤツはバッサリ切る。
 それは優児だって知ってるだろが」


シュンが俺たちと親父を交互に見て、そう言ってくれた。
SMSのメンバーたちは、微笑んだまま頷いてる。


「俺もそうだったけどな。他人のライブに、もっと行ってみた方がいい。
 自分の世界がどれだけ狭いか、よくわかるから」

「ああ、そうですね。優児さんたちのライブには行ってるでしょうけど。
 自分に当てはめて、どんな空間を作り上げたいかまでは、考えが及んでない感じがしますし」



ソウジロウとゴイチが、忠告してくれる。

確かに、フルの単独ライブは、親父のバンドしか行ったことなかった。
SMSは、イベントだったしな。



とりあえず、完全なダメ出しじゃないってことだけは、わかった。

親父たちを見ると、親父はいつもの仏頂面で、コウセイたちはニコニコしてる。



「俺らとは、全くタイプの違う音だからよ。
 どう意見していいのかわかんなかったんだよな。
 ま、言い訳にしかならねぇか」


親父が頭を掻きながら、エイチに話しかける。
コウセイは、「ありがと」って。


「生まれた時から音楽に浸ってたんだろ?
 一時期は弾けなくなってたって聞いたけど、それでもブランクは俺より短い。
 どーせ、優児さんが甘やかしてんだろうから、ハングリー精神も少ねぇだろ。
 そこら辺が、甘さに通じてんだと思うよ。
 ま、若いんだし、まだまだ伸びしろはある。これからが勝負だ、頑張れ」

「痛いとこ突くよな、相変わらず」

「優児さん自身が、ボンボンじゃん。俺は、十二年間も母子家庭だったからね」



笑ってるけど、エイチって、父親が大売れしたミュージシャンじゃなかったっけ?
ブランクが長いって、どういう意味なんだ?


俺たちがポカンとしてるのに、エイチとゴイチが気がついた。


「ああ、俺ん家はな、とーちゃんが浮気したんで、一時期、離婚してんだ。
 かーちゃんと二人で、大学入るまで、大阪に住んでたんだよ。
 だから、堅い仕事に就くつもりで、バンドは一旦抜けたんだけどな。
 事情があって、元に戻って、結局は、いついちまったんだ」

「俺は、生まれてすぐに、寺に捨てられて、施設で育った。
 中学出て、バイトしながら、ひたすらギターの練習してたんだ」



明るく笑ってるけど、それってすごくない?
エイチが東大卒って驚いたけど、プロになるつもりがなかったからってこと?




「ご指摘、ご忠告、ありがとうございました」


ロウが凛とした声で、はっきりと礼を言う。
カオルがすぐに頭を下げた。

慌てて、俺とカンも深く深く頭を下げる。


そうだよな。

いくら、親父の友達だからって、プロのミュージシャンに聴いてもらって、意見をもらえるなんて。
そのこと自体が、とても恵まれた環境なんだ。


少しは世界が広がったと思ってたけど。

自分の立ち位置にさえ気づいてないって、俺、どれだけ視野が狭いんだ。




「よそのライブに行く時は、後方で全体が見える席がいい。映像じゃわからんことがたくさんある。
 音だけじゃなくて、聴いてる客の体温とかな」

「聴いてくれる客がいてこその、音楽なんだよ。お金もらうんだからね」

「CDや音源が売れるだけだったら、長続きしないんだ。
 もちろん、売れなきゃ困るけどな」

「いくら親父とは路線が違っても、比べてくるヤツは比べてくる。
 プレッシャーに負けんなよ。
 ああ、大学も、ちゃんと行けよな」


SMSのメンバーが、帰り際にまたアドバイスをくれた。
そして、最後にシュンが耳打ちしてきた。


「お前ら、できてんのがまるわかりだ。
 太一郎と薫、お前と完な。
 もっと隠さなきゃ、すぐにバレて売り出しにくいぞ」


隣にいるカンにも聞こえてたらしい。
真っ赤になって、固まってる。


「はい、気をつけます。みなさん、今日は本当にありがとうございました」


今度は、俺が言葉にして、四人でもう一度頭を下げた。






「......エイチに聴いてもらって、よかったな」


SMSとシュンが帰った後、ドカッと椅子に座り込んで、親父がため息を吐いた。
コウセイ、サム、ゴウも座り直して、頷いてる。


「俺たちは、自分のバンドのことだけ考えてればいいけど、エイチは違うからね。
 二代続けて、稀代のヒットメーカーでプロデューサーだから」

「あそこは、ゴイチも他のプロデュースやったりしてるもんな」

「観客動員数ではうちが勝ってるけど、総合的に考えると負けてるんだよな、実は」



口々に、SMSを褒めてるけど、俺とカンは、シュンの言葉に動揺したままだ。
カンが真っ赤になってるのに、コウセイとロウが気がついた。


「カン、どうした?」

「俺とカイ、ロウとカオルがつきあってるの、シュンにバレてた。
 もっと隠せって、最後に言われた」


ロウに聞かれて、素直にカンが答える。

いや、そこは恥ずかしがらないわけ?!
俺、親父たちにそんなことバレるの、すっごく恥ずかしいんだけど?



「あー、マネージャーとしては、やりにくいってこったろな。
 まだまだ日本じゃ、理解してもらいにくいしよ。
 俺たちは、そこまで考えなくてよかったけど、お前らはそこも考えねぇとな」

「鮎川さんにまで忠告もらえるなんて、すっごくラッキーじゃん」


あれ、ゴウとサム、驚いてないっぽい?


「太一郎と薫ちゃんは、有りっちゃ有りだもんなぁ。
 鈴が心配してたぞ。いくらバンドでもゲイバレすると大変だろうって」

「ああ、そう言えば、カレンも心配してたな。
 ずっとインターだったから、感覚がわかんないんじゃないかってさ」


女性陣のネットワークは、健在ってわけか。


「それも課題だろうが、まずは音だ。
 せっかく忠告してもらったんだから、お前ら、頑張れよ」


親父に言われて、俺もカンも現実に引き戻された。



そう、まずは音。

俺たちの音を探す旅に、四人で出発だ。











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