「Happiness!」
一発逆転?!

一発逆転?! 7

 ←一発逆転?! 6 →一発逆転?! 8

とうとう、エイチがやってくる!

俺たちは、約束の時間より二時間早く行って、入念にチューニングと最後の練習をした。
ほんとは、もう少し時間が欲しかったけど、親父たちのスタジオだからワガママは言えなかった。



「あー、すっごく緊張する......」


俺がギターを置いて、ストレッチしてると、カオルが真似しだした。
俺も緊張をほぐすためだから、気持ちはよくわかる。

ロウとカンは、そんな俺たちを見て、余裕で笑ってる。
なんでそんなに度胸あるんだよ、二人とも!


「オーディションってわけじゃねぇだろ?
 ダメ出しされたら、弱点克服すればいいだけの話じゃん」

「そうそう、エイチの評価が絶対ってわけじゃない。
 チャンスは、まだまだ残ってるんだから」


......確かにそうなんだけどさ。



親父があれだけ信用してるってことは、エイチの評価次第で、俺たちの待遇は変わるはず。
デビューを焦ってるわけじゃない。
それでも、低い評価しか与えられなかったら、親父が出してくる条件はどんどん厳しくなるだろう。
事務所に所属させるつもりなら、親父は「事務所の代表」として、判断するからだ。

俺が心配してるのは、それなんだ。

ロウやカオルは、話し合う余地があるだろう。
でも、他人の話を聞くようになったとは言え、カンが素直に受け入れるか不安が残る。




約束の時間、十分前。

エイチが、やってきた。
SMSのメンバーとシュンも一緒に。



「マジかよ?!ほんとに、駿よりデカいんじゃん!」

「ああ、驚いたな。あーんなチビッコだったのによ。
 完なんか、若い頃の康生にそっくりじゃねぇか」


挨拶したら、エイチとシュンが、俺たちを見て笑ってる。
キャシーが言ってたのは、ホントだったんだ。


「今日は、わざわざご足労いただいて、ありがとうございます。
 メンバーの皆さん、全員いらっしゃってくださるなんて、光栄です」

「長生の息子とは思えねぇな。ま、ガキの頃からしっかりはしてたか」


シュンは、親父より十歳近く年上らしい。
SMSが所属してる事務所の役員でもある。

ベテラン扱いされてる親父たちを、気軽に呼び捨てしてるくらいだ。
敏腕って言われてるのも、納得って感じ。



「ま、とりあえず、聴かせてもらおうか。
 力まずに、普段通り演ってくれ」


エイチの一言で、親父が頷いた。
今日は、コウセイもサムもゴウも、心配だったのかオブザーバーとして来てくれてる。



ロウのカウントから始まって、準備した三曲を立て続けに演る。


一曲目は、俺のギターとカオルのキーボードで、メロディに幅をもたせた、アップテンポなもの。
カンのヴォーカルが俺たちの世界をがっしりと作り上げていく。

二曲目は、俺がアコギに持ち替えて、ミドルテンポのちょいラップも入った今時の曲。
ループペダルを操作しながら、リフを録音、二度目はかぶせて再生する。
ペダルを間違うと、ぐちゃぐちゃになるから、ラップだけで精一杯。
コーラスは、ロウとカオルに任せてる。

三曲目は、またエレキに戻して、カオルもギターで、ロックバラード。
ツインギターを活かして、間奏のリフとソロで、切なさを盛り上げる。
カオルのピッキングは正確で、さっきまで緊張してたとは思えない。



三曲目でバシッと四人が揃って決めたら、全員から拍手が起こった。

とにかく、大きなミスはなかったはず。

カンの声もよく出てたし、俺としては満足な出来。
三人も、やり切ったって顔してる。





「んー、緊張してただろうし、座って話せる方がいいか。
 優児さん、DVD見れるミーティングルームある?」

「ああ、一番広い部屋なら、全員座っても余裕だし、AV機器は揃ってる」


すぐに何か言われると思ったら、移動が始まった。
エイチを始めとする、SMSのメンバーはニコニコして、親父の機嫌も悪くはない。

ただ、DVDって言葉に引っかかりを感じて、単なる講評だけじゃなさそうな......。



「なんで、ミーティングルームなんだろな?」


隣のカンも、同じように訝しんでる。


「何か見せたいものでもあるんじゃないかな。
 とにかく、ついてくしかなさそうだよ」


俺が返事すると、カンは頷いて、俺の袖をちょっとだけ引っ張った。
珍しく、不安を感じてるみたい。

俺たちは、最後尾だったから、気づかれないよね。

カンの手をギュッと握って、すぐに離す。

いつもなら怒るのに、安心したのか、「サンキュ」って小声で言ってきた。





ミーティングルームには、テーブルと人数分の椅子が並べられてた。
事務所の人がコーヒーやお茶を出してくれた。

全員に飲み物が行き渡るのを待って、親父が切り出した。


「エイチ、どうよ?」

「ああ、テクは問題ねぇ。つーか、さすがだよな」


褒め言葉なのに、素直に喜べない。
それは、他の三人も同じみたい。


「ほぼ、ノーミスでしたしね。ループペダルの使い方も見事でした」


うわ、ゴイチに褒められた!
すごく嬉しいはずなのに、やっぱり、どこか引っかかる。



「これ、ちょっと見てくれる?」


エイチが、親父にDVDを渡してる。
マネージャーの大迫さんが、セットして、正面のデカいモニタに文字が浮かんだ。


『SOLD OUT 2006.11.28』


真っ黒な画面に白抜きの文字、次の瞬間、シャウトが聴こえてきた。

映像は、どこかのスタジオ。

ガツンと主張するギターとヴォーカルを、ベースがしっかり支えてる。

あれ、ドラムはシンジだよね?


......これ、何なんだ?


初めて聴くぞ、こんな曲。
日本にこんなバンドいたの?

音がすごいだけじゃない。
プレイしてる姿が華やかで、強烈に惹きつけられる。


俺たち四人は、モニタの音と映像に、完全に打ちのめされた。




「エイチ、こいつらは、一体何なんだ?」


親父も知らなかったのか。珍しく、焦った声。


「ん?俺の知り合い。この時、ちょうど海や完と同い年。
 曲作ったのは、ヴォーカルの怜。
 こいつとギターの涼は、絶対音感持ちの天才ってヤツ」

「曲もテクもそうだが、華がすげぇな、おい」

「でも、星の数ほどのスカウト、ぜーんぶ蹴ったってよ。
 今は、東大卒業して、司法修習生やってる。
 ベースの健太は、親父の後継ぐために、修行中」


はあ?


「つまり、今は、ただのアマチュアだ。
 これ見て、お前たちに足りないものがあるって、さすがにわかったろ?」

「あいつらと比較すんのは、さすがに酷じゃねぇか?
 あんなのは、百年にひとりの天才ってヤツだろ」


シュンがフォローしてくれてるけど、それで安心しちゃいけない。


どうして、エイチがこれを見せたのか。

その意味を、俺たちはよく考えなきゃいけない。


ロウとカン、カオルを見ると、みんな、真剣な顔してる。
俺と同じように思ったんだね。


考えてる俺たちを、エイチたちは、じっと観察してる。
親父は、苦い顔になってる。


考えろ、俺。

きちんと答えられなきゃ、俺たちに将来はないってことだ。

考えるんだ。











にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ 3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ 3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ 3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ 3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ  3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ  3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ  3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ  3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【一発逆転?! 6】へ
  • 【一発逆転?! 8】へ

~ Comment ~

NoTitle

えー、何だろ??

テクニックは及第点を貰ったみたいだから・・。
リスナーを引き付ける個性? 華? つかみ?

・・と。
英一、これ、怜たちがスタジオ来た時だよね? 録画してたのッ!!?
どーしてもっと早く教えてくれなかったのよ~~! SOLD OUT 、音源ほとんど無いのに!
うぅ、こんなことされたら、また見に行きたくなるじゃないのー。

今夜は台風並みの風雨なのに。。(T_T)

Re: NoTitle

事務所に遊びに来た時、録画してあったんですよ(笑)
笙が入院した時、見舞いに持っていったDVDにも収録されてます。

カイ・カンと同じ年の頃の怜たち、参考になるかもと、英一は持参したようですね。

昌行には連絡して、カイたちに見せる許可はもらってあります(笑)
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【一発逆転?! 6】へ
  • 【一発逆転?! 8】へ