「Happiness!」
一発逆転?!

一発逆転?! 6

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夏休みが終わって、カンの卒業が確定したって連絡が来た。
俺も夏休み前の試験は、全部合格してたんで、ホッとした。
でも、まだ大学は始まったばかりだから、油断しちゃダメだよね。

それでも、カンの卒業っていう、一つ目の区切りがついたから、親父がエイチと話し合ってくれた。
演る場所は、親父たちの事務所が持ってるスタジオ。
親父も、頼んだ手前、「下手なもんは聴かせらんねぇ」とかって、練習に使わせてくれてる。



そうそう、夏休みが終わったら、ビッグニュースが待ってたんだ。


イクヤに彼女ができた。
もちろん、あのジャンヌダルクこと、下園美希ちゃん。

俺たちが参加してるボランティアに、二人で来たりしてたから、もしかして、とは思ってたんだ。
でも、イクヤからは何も言ってこなかったんで、そっとしておいた。




「カイのおかげだよ、ありがとね!」


報告してくれたイクヤは、すっごく嬉しそうでさ。
いつもの穏やかなニコニコ顔が、倍以上になってるの。


「よかったね。俺、二人とも大好きだから、ほんと嬉しいよ」


チビッコな印象だったけど、また少し背が伸びて、カンより少し低いくらいになってた。
もう、子どもっぽさは、全然感じさせなくなった。

美希ちゃんは、受験の時から、しっかりして大人びてる感じだったから、お似合いのカップル。
なんとなく、ロウとカオルみたいな雰囲気なんだ。





家に帰って、またペーパーやってると、カンが来た。
一休みしようって、日本茶を淹れてくれた。
お茶うけは、俺の好きなきんつば。

コーラばっかり飲んでたのに、いつの間にか、合わせてお茶やコーヒーも飲むようになってた。
コーヒーの淹れ方は、キャシーに習ったって。

コウセイとスーは、コーヒーは飲まない。
いつも、ハーブティーや少しはちみつの入ったレモネードだったりする。
コウセイがカフェインに弱いのと、喉をキープするためらしい。

カンは、カフェインは大丈夫だから、ウーロン茶以外はだいたい飲む。
ウーロン茶は飲み過ぎると、喉の粘膜に悪いんだって。
喉のために、自分でいろいろとカンは調べて、実行してる。
一番身近にいるお手本、コウセイがプロ意識の塊だから、それが当たり前だと思ってるんだ。



イクヤと美希ちゃんの話をすると、俺と同じくらいに喜んでる。


「やっぱ、そうだったんか。いい感じだとは思ってたんだよな。
 イクヤもミキもいいヤツだし、目標も同じだし、よかったんじゃね?」


何度か会ってるうちに、イクヤだけじゃなくて、美希ちゃんにも気を許すようになった。
カンの世界が広がってきて、他人の感情もわかるようになった。
今では、俺の方が鈍い時もあるくらい。




嬉しくて、カンを見ながらきんつば食べてたら、笑ってたのに、カンの顔が曇った。

あれ、なんか地雷踏んだ?


「ごめんな」

「は?何が?」


とぼけてるんじゃなくて、ほんとにわからなかったんだよ。


「お前だって、せめて知ってる人間の前では、もっと堂々としたいよな」

「それは、カンの性格じゃ無理だろ?肩抱かれるのも恥ずかしいんだし」


俯いて、顔赤くしてる。心の中で葛藤があるんだろう。
俺を喜ばせたいと思っても、どうしても恥ずかしいのがガマンできないんだよね?


「わかってるから、気にしなくていいのに。
 その分、二人の時は、いっぱい甘えてくれるじゃん」

「.........だって、お前が甘やかすから」


ほら、そんなに可愛い顔されたら、甘やかすしかないじゃん!
それに、そんな顔は、俺の前だけでいいの!!





一口残ったきんつばを飲み込んで、お茶で口をすっきりさせた。


「カン、こっちおいでよ」


カンが、黙ったまま、すっと近づいてきた。
言わなくても、腕が首に回ってくる。

ほら、俺のカンは、こんなに可愛い。
片思いの間は、絶対に、こんなことしてくれなかったんだから。



ギューっと抱っこして、耳元で囁く。


「俺にだけ、見せてくれればいいよ。
 今でも、女の子や他の男にモテまくってるのに。
 こんなに可愛いいとこ見られたら、俺、勉強どころじゃなくなる」

「...二人だけの時は、こんなに言葉にするくせに」


それは反省したってば。
ちゃんと、練習の時にも意見出してるだろ?


それにさ。


「こんなこと、カンにしか言えないし、人前で言うのは、カンがイヤだろ?」

「うん...逃げ出したくなると思う。俺が意識し過ぎなのが悪いんだけどよ」



もそもそと体を動かして、頭を首筋に擦りつけてくる。
子どもが甘えてくるような仕草に、やっとこの頃慣れてきた。

最初の頃は、いちいち感動しては、下半身が落ち着かなくて、カンを怒らせてた。
慣れてはきたけど、可愛いと感じるのは、全く減っていかないんだ。

初めの「ドキドキ」が、今は「ジワーっ」に変わって、胸がほわほわと温かくなる。


あんなにショックだったタトゥーも。
振り向いてもらえなかった淋しさも。

今の幸せのためには、必要だった。


最近、そう考えるようになってきたんだ。




「あーーーーーーーーっ!!」


幸せだーって、和んでたら、カンが叫んだ。

俺、一瞬、耳が聞こえなくなった。

ただでさえよく通る声に、ボイトレ筋トレまでやってるんだ。
俺の耳、破壊する気?!


「カン、耳痛い...」


俺の泣き言に、焦って謝ってくる。


「ゴメン!言わなきゃなんねぇと思ってたの思い出した!」

「ん?何?」


カンは体を離して、デイパックをゴソゴソしだした。
取り出したのは、USBメモリ。


「エイチに聴いてもらう曲のベース、少しアレンジ変えたいんだ。
 変えたヤツ、入力してきたから、ペーパー終わったら聴いてみてくれ」

「あ、うん。歌いながらでも大丈夫そう?」

「それは問題ねぇよ。家で何度も演ってみた。
 感想聞きてぇから、早くペーパー終わらせろ。
 俺がいると、ヤバそうだら、一旦、帰るな」


そう言って、さっさと部屋から出てっちゃった。



......俺、ぼっち。

さっきまでの甘い空気なんか、どっかにすっ飛んでっちゃって。

ペーパーはやらなきゃだし、あのままだとヤバいってのも、よくわかってるんだけどさ。

別人なのは、カンじゃないか!!
あんなに甘々してたのに、切り替え早すぎだろ!


文句言ってても仕方ないから、またパソコンに向かって、ペーパーを書き始めた。

親父の言うとおり、俺、カンに振り回され人生、確定だよなぁ。
それを選んだのは、俺なんだけどさ。










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