「Stop Making Sense」
SS/Stop Making Sense

bonus track 4

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「なぁ、駿っ!」


少し焦った顔して、顔を覗き込んできやがる。
別に怒っちゃあいねぇが、焦ってんのが可愛くて、つい焦らす。


「優児さんたちに頼まれて、聴いてみるだけだって。
 トーイは関係ねぇんだってば」


澤井はどうでもいいんだよ、俺は。
今さら、あいつにヤキモチ妬くほど、バカじゃねぇ。


俺が黙ったまま、メシ食い続けてたら、英一のヤツ、困った顔して黙り込んだ。
お前のことだから、優児たちには義理欠けねぇのは、わかってんだって。

ただ、今の状況わかってっか?


「来年の準備があるから、外部の依頼は受けない。
 ほんとに、一度聴いて感想言ってくれって、言われてるだけなんだって」


わかってるようで、わかってねぇよな。
聴いてみて、気に入っちまったら、どーすんだ?
あいつらにプロデュース頼まれて、イヤって言えるか?




解散したHAKONIWAの、リーダーだった優児。
優児のギターとソングライティングの能力は、当時でもかなりのもんだった。
あいつがリーダーのバンドが、元の事務所のオーディションに合格したのは、英一と再会する半年前。

その四人組に、事務所が売り出したかった澤井を加入させて、デビューしたのがHAKONIWA。
SMSとは同期みてぇなもんだし、ルイさんがプロデュースした縁で、俺たちが事務所抜けた後も、つきあいは続いてる。
ルイさんを通じて知り合ったのもでかいが、特に優児とは馬が合うらしい。

バカ売れしたバンドだったが、結局は解散。
理由は、シンガーとしての才能しかねぇくせに、澤井がメンバーをないがしろにしたからだ。
澤井はソロで再開したが、曲は書けねぇし、ドラマのオファーが増えて、今じゃほぼ歌ってねぇ。

優児たちは、もともと演ってた康生にヴォーカルを戻して、事務所から独立した。
SMSとは違ったハードな音だが、優児のギターと曲は、未だに客を引きつけてる。



その優児の頼み事ってのは......


『自分たちのガキがバンドやってる。
 プロになりたいと言い出したが、親としては、冷静に判断しにくい。
 だから、英一に一度聞いてもらって、評価を聞きたい』


だと。






「お前、優児たちに正面から頼まれたら、聴くだけで終われるか?」


ほら、詰まってやがる。

お前の性格は、俺が一番よくわかってんだって。


「それに、再来週の土曜だろ?その日の約束、忘れてねぇか?」

「...............」



その日は、昼は仲間内、夜はレンさん奈津さんと約束してんだろうが。
イベント好きのお前が忘れてるわけねぇよな?


......ああ、こいつ、もしかして。




「諦めろ。どんなに足掻いたって、年は食うんだよ。
 お・ま・え・も、四十代に突入の、めでたい日だ。
 他所ん家のガキの面倒見てる場合じゃねぇだろが」


英一のヤツ、思いっきり、顔顰めやがった。

何を今さら。


「来年の二十周年に向けて、今年はじっくり準備したいって言い出したのは、お前だろ。
 気軽に依頼受けて、自分の首締めてどーすんだ?
 心配しなくても、四十になろうが、お前は世界一可愛いっつってんだろうが」


思いっきり図星指されて、王子様はちょいスネ気味。
それでも、自分の方が間違ってんのはわかってるから、それ以上はワガママは言わねぇ。




そのうち、大きなため息吐きやがった。




「俺、四十になったら、もっと落ち着いてると思ってたのになぁ」



ああ、そっちかよ。
老けるのがイヤなんじゃなくて、思ってたより成長してねぇのがイヤなわけか。

お前らしいっちゃ、お前らしいけどよ。



「充分、成長してんだろ?何がそんなに不満なんだよ?」

「えー、事務所開設した時って、駿は四十三だったよな?」


ああ、お前とは一周り離れてっからな。わかりきってるだろ?


「すっげ頼りがいがあって、俺が全開に甘えても、しっかり受け止めてくれたじゃん。
 俺、三年後にああなれるか、自信ねーの!」


思わず、茶を吹き出した。
慌てて、英一がタオルを持ってくる。




「立ち位置が違うだろうが。あの頃の俺は、事務所の人間で、お前らの担当マネージャー。
 お前なんか、ベースも曲作りもプロデュースもやって、さらに事務所の役員もだろ?
 あの当時の俺は、そんなに何役もやってねぇっての」

「......そっかぁ。そうだよな」



ちょっと唇尖らせて、俯いてやがる。
まぁ、その面見てたら、四十には見えねぇか。


でもな、忘れんな。
お前は、見た目は若くても、中身は充分に強くて大人なんだって。

ガキの頃からしっかりしすぎて、ひとりで何でも背負おうとしてきた。
俺とつきあって、二人の時は、全開に甘えるようになったけど、外では相変わらずじゃねぇか。





「ああ、でも、聴くのだけは、約束したから、日をずらして行ってくる。
 こっちに合わせてくれるらしいし。
 プロデュースは、優児さんか康生さんがやると思うしさ」

「約束しちまったんなら、しょうがねぇか。
 海と完、太一郎のヤツら、でかくなってんだろうな」

「ああ、海なんか、駿より背が高いってよ。
 優児さんもキャシーもデカいしな」



俺よりデカいって、190オーバーってことか。
そりゃ、目立ってしかたねぇだろ。

あいつらと遊んでやったのは、確か、幼稚園行ってたくらいのはず。

キャシーの遺伝がはっきり出た外見なのに、海はおとなしくて神経質。
日本人顔の完の方が、ガキのくせにズバズバ物言う性格だったよな。

あいつらがどう育ったか、見てみたい気持ちもあるな。



「事務所は、優児さんとこに所属するらしい。
 なんか、CDより、生で聴かせたいんだってさ」

「優児のヤツ、自慢半分ってとこじゃねぇのか?」

「それもあるんじゃね?優児さんも可愛いとこあるよな」


俺には、お前がクスクス笑ってんのが、可愛くてしかたねぇけどな。




「ま、二十周年には協力してもらうことになってるし、せいぜいちゃんと聴いてやれ。
 あいつらのガキなら、テクだけは確かだろうしな。聴き応えはあるんじゃねぇか」

「世代が離れてるとは言え、新ライバル出現でもあるよな。 
 俺も気合入れねぇとさ。まだまだ負けてらんねぇっての!」



ああ、そう思えるうちは、大丈夫だ。

そうやって、慢心からは遠いところに、常に立ってる。
だから、お前らの音とステージは、進化し続けてるんだ。



これからも、ずっと、走り続けろ。

俺も隣で走り続けるから。











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カイたちがドキドキしてる頃、こんなやり取りがあったと言うことで(笑)
本日は、Happiness!本編はお休みです。
不惑直前の戸惑う英一と、相変わらずの駿をお楽しみください。




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~ Comment ~

NoTitle

「俺、四十になったら、もっと落ち着いてると思ってたのになぁ」
。。。

英一に言われたら、私なんかどうすればいいのー。
どうせ、頼れるものは、割り箸にまで頼ってる昭和の主腐ですからっ。

でも、駿、あなたも相変わらずの甘やかしっぷり。隣にいたら熱中症になっちゃうわ。

カイたちのこと、こちら側から見ることが出来て、面白かったです(^^♪

Re: NoTitle

私も、英一じゃないですけど、年を取れば取るほど、精神年齢とのギャップに悩んでます(苦笑)

初めて書いた駿視点ですが、楽しんでいただけてよかったです。

幼稚園児のカイやカンと遊んでた駿を想像して、ひとりニヤニヤしてました。←キモい(汗)
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