「Happiness!」
一発逆転?!

一発逆転?! 4

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練習は、ほとんどロウの家かカンの家。
録音する時だけは、機材が一番揃ってるから、俺の家でやる。

基本、土日のランチが終わってから。

ロウがボランティアに参加する時は、俺たちもついていくことにした。
それもいい経験になると思ったんだよね。


俺とカンも、ロウみたいに、アコギ持って行く。

昭和の歌謡曲や演歌、小学生が喜びそうなアニソンやアイドルの曲も聴くようになった。
一、二回聴けば、簡単な伴奏くらいはできるしさ。

老人ホームでは、カラオケ大会なんかもやるらしい。
その練習につきあえって伴奏してあげたりするのも、ロウはニコニコしてやってるんだ。

カオルが安くて軽いキーボードを持ってきて、子どもたちに人気のアイドルの曲を弾く。
子どもたちが、合わせて歌ったり、踊ったりして、大喜びしててさ。
障害のある子も車椅子のまま、音に合わせて体を揺らしたりしてるんだよね。


もちろん、みんながみんなじゃない。

それでも、多くの人が楽しそうにしてる。



ロウが言ってた「音楽の力」って、これかぁって。

カンと二人で、実際に目の当たりにして、反省したんだ。

「演る」ことばかりに気を取られて、「聴く人」のことを何も考えてなかったなって。




キャシーは、日本に馴染もうとして、ばーちゃんやカレンと一緒によく行動してた。
そのうち、スーも誘って、ボランティアによく行くようになった。
一番は、親父と俺の世話だけど、なるべく時間を作って、今でも通ってる。

俺は、話を聞くだけで、参加しようとはしなかった。
キャシーも強制しなかったし。

ロウは、ミドルの頃から、カレンと一緒に参加してた。
そして、挫折してからは、ひとりでも積極的に行くようになった。

カオルと出会ったのは、対バンやった時。
でも、つきあうきっかけは、ボランティアで再会したからなんだって。


ロウが、自分より大人で頼りになるのは、年上だったからだけじゃない。
こういう経験を積んで、世界を広げてきたからなんだ。


この前のオーディション参加の件は、珍しく先走っちゃってたけど。
ロウからすれば、場数を踏んでおこうくらいの気持ちだったんだろうしさ。



そうそう、実は、業界のことに一番詳しいのは、カンなんだよね。

一度、インディーズでデビューしたってこともあるけど。
一番大きな理由は、コウセイにも親父にも、疑問に思うとすぐにガンガン質問するからだと思う。

情けないけど、親父のこと、すっごく怖かったからさ。
地雷を踏まないように、必要なことしか喋らなかったんだ。

手のことがあって、やっと、怖いだけじゃない親父が見えてきたくらいだし。






大学もインターも夏休みに入った。
補講があるから、俺とカンは完全に休みってわけじゃない。

それでも、できるだけ対バンやイベントに参加して、ステージ経験は積んできた。


そんな時、すっかり忘れてたことが、まるで時限爆弾みたいに時間差で爆発した。




「おい、お前ら!」


カンの家で合わせてたら、いきなり、親父が怒鳴り込んできた。
後ろには、コウセイが困った顔してるのが見える。

久しぶりに、超弩級の怒り顔。
俺、条件反射で、すくみ上がった。



「ユージ、どしたんだよ?」


さすがだよね、ほんとに。
こんな状態の親父にも動じないのって、カンぐらいだと思うよ。


「オーディションに応募しといて、途中でバックレたって本当か?」


うわっ、なんでそんなこと知ってんだよ?
ロウ、誰かに話したの?!


焦ってロウを見ると、ロウは怪訝な顔してる。


「バックレって意味がわからない。ちゃんと辞退の連絡は入れたよ」

「プロになるんならプロになるで、通さなきゃなんねぇ筋があんだよ。
 遊び半分なら、応募なんかすんな」

「応募した時とは編成が変わったし、時期尚早だって判断して、きちんと謝ったよ」


ロウの説明に、いまいち納得してない感じだけど、親父の怒りは、一応、トーンダウンした。
軽く顔を顰めて、コウセイを見た。

あー、めんどくさくなって、コウセイに投げたな。



コウセイが苦笑いしながら、話し始める。


「俺たちのマネージャーやってた人がね、審査に加わってたらしいんだ。
 それで、映像も送ったでしょ?
 カンは俺に似てるし、カイも優児に似てきてる。
 さらに、太一郎の名前と住所で、息子だろってわかっちゃった」


ああ、やっぱり......それも心配したんだよね。

ロウを見ると、失敗したって後悔が、もろに顔に出てる。


「曲もテクも見た目も、群を抜いてたって、連絡取ってきたんだよ。
 辞退なんてもったいない、うちでデビューさせろってね」

「お前らはお前らだ。あの事務所に所属してぇんなら、別に構わねぇ。
 大手な分、売り込みはやってくれっからな。
 だけど、俺らの邪魔はすんな。俺と康生に、ガンガン電話やら来て迷惑だっつーの」



ロウが何か言おうとしてるけど、今、何言っても言い訳にしかならない。
そう思ってるんだろうなってのは、表情でわかる。

怖がってる場合じゃない。メンバーなんだから、俺たちがフォローしなきゃ。
親父への恐怖をなんとか飲み込んで、口を開こうとしたら、カンが先に謝った。


「ユージ、ごめん。応募した後に、俺があそこはイヤだってゴネたんだ。
 ロウは、俺の意見入れてくれて、辞退したんだ」


慌てて、かぶせるように、俺も後に続く。


「ううん、カンだけじゃないよ。俺だって、まだ早いんじゃないかって反対した。
 カンのせいじゃないんだ。迷惑かけて、ほんとにゴメン」


俺たちが謝ると、カオルがパシッとロウの頭を叩いた。
びっくりしてると、親父もコウセイもカオルを見て驚いてる。


「何、ひとりで先走ってんの?!お父さんたちに迷惑がかかるって気づかなかったの?
 弟たちにフォローさせて、恥ずかしいと思いなさい!」


ロウが弱りきった顔になった。
こんなロウは初めて見るから、すっごく驚き!!



「すみませんでした。俺が軽率でした。
 二世だって意識がなくて、父さんたちに迷惑がかかるとは気づいてませんでした。
 カイとカンにも、事後承諾で話をしてしまって、反省してます」


頭を深々と下げて謝れば、優しいコウセイだけじゃなく、親父も受け入れるしかないよね。
まだ、不機嫌な顔だけど、さっきまでの怒りは消えてる。



「俺も康生たちを振り回したから、お前のことは強く言えねぇけどな。
 あそこは止めとけ。今、音楽より俳優やタレントに傾いてっから、自由はねぇぞ」

「うん、ロウもカイも、カオルちゃんだっけ?
 全員が本気なら、うちに所属するのもありだよ」

「おい、康生。その話すんのは、早くねぇか?」

「言い出したのは、優児だろ?先走って、下手なことされるよりはマシじゃない?」



親父とコウセイが言い合いしてるの見て、俺、ポカーンとした。

だって、親父が「自分の事務所に所属しろ」なんて!

口が裂けても言うわけないと思ってた!!




「ま、親の身びいきも欲目もあるかもしんねぇしな。
 一度、知り合いに、お前らの音を聴いてもらおうかと思ってる。
 編成変わったんなら、もっと場数踏んでからだな」



親父の大人な発言に、また驚いて。


俺たち四人は、思わず「お願いします」って、揃って頭を下げた。











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