「Happiness!」
一発逆転?!

一発逆転?! 3

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カオルが初めて参加した、練習の日。

カンは、すっごく気まずそうな顔してた。
それでも、きちんと挨拶しようとしてて、心の中で「頑張れ!」って祈った。


「初めて会った時、逃げ帰ったりしてすみませんでした」


深呼吸した後、一気にそう言って、深く頭を下げた。

カオルは、ロウの隣に立って、ニコニコしてる。


「ううん、生まれた時から一緒にいたんだもんね。
 急によそ者が紛れ込んできたのって、怖かったでしょ?」

「......ほんと、俺、ガキだったから。
 今でもガキっぽいし、迷惑かけるかもだけど、よろしくお願いします」



ちゃーんと言えてるじゃん!
それに、すっごく日本人ぽい挨拶してる!!

嬉しくなって肩を抱いたら、ジロっと見上げてきたから、慌てて体を離した。

今のセーフじゃないの?、仲間内でも、このくらいやるじゃん......。


「お前は良くても、俺が恥ずかしいの!」


小声でちょっと威圧するように、カンが叱ってくる。
わかったよ。もうしないってば。


「こちらこそ、よろしくね。足引っ張らないように頑張るわ」


カオルは、ニコニコしたまま、カンと俺、順に握手してきた。
ロウとは似たものカップルって感じで、いつも穏やかに笑ってる。

二人ともまだ二十歳なのに、落ち着いててずっと大人に見える。
それと、不思議なくらいに、二人でいるのが自然なんだ。

まるで、親父とキャシーみたいに。

これなら、カンの心配も、えーっとなんだっけ...。
ああ、杞憂に終わる、か。

もし、ケンカしても、俺たちの前には出さないだろうし。

それに、別れたとしても、プロになる以上は、覚悟してくれてるんじゃないかな。







さっそく、練習始めてみたけど、カオルのキーボードはマジで巧い!

クラッシックのピアノとはノリが違うのに、正確なだけじゃなくて遊びも入れてくるし。
スコアだけ見て、さらっと弾けてるのが、ちょい悔しいくらいなんだ。


「ヴォーカルも巧いと思ってたけど、キーボードでここまで合わせてくるって」


カンも感想は同じだったみたいで、素直に褒めてる。

ロウがちょっと自慢気にしてるのが、可笑しかったな。


「歌うのも嫌いじゃないけど、やっぱりキー叩いてる方が好きなのよね。
 喉が弱いから、ヴォーカルでプロは無理だと思うし」

「カンの歌やカイのギターを活かすには、ちょうどいい感じだと思うよ。
 本当は、カオルも、プロは諦めかけてたんだ。
 カイの麻痺が治って、カンがイエスって言ってくれたから、助かったよ」


んー、俺ひとりが、ひっかかってるのかなぁ。

カンもロウもカオルも、みんな、プロになるのが既定路線だよね。

そりゃ、俺だって、麻痺が治ったんだし、必死で頑張るよ?
でも、プロになれるかどうかは、別なんじゃないのかな。




「あのー、プロデビューできるって、みんな自信持ってるみたいだけど。
 その自信はどこから来るの?」


恐る恐る質問したら、ロウが「あっ」て声を上げた。
なんだろうなぁと思ってたら、ゴソゴソと書類を出してきた。


「ちゃんと話してなかったね。GWのって、対バンじゃなくて、コンテストなんだ。
 CD審査は通ったから、今度はあて馬じゃないから、本気で演ってくれよな」


ああ、前にバイトでやったっけ。


「今回ダメでも、何度もチャレンジするからね。
 ただ、最低でも、カンの卒業は確定させたいし、俺たちも卒業までは無理はしない」


ロウが説明してくれるの聞きながら、書類を読んで、ちょっとびびった。

......ここってさぁ。



「親父たちが元いた事務所じゃん!バレたら、親父がキレちゃうよ?!」

「まぁ、最初から合格するとは限らないからさ。
 場馴れのつもりで、受けようと思っただけだよ」


あっけらかんとロウは言うけど、もし入賞したりしたら、どうするんだろ?
書類を覗き込んできて、カンもさすがに渋い顔してる。


「ここは止めたほうがいいぜ。マジで止めとけって」


ああ、カンは知ってるのか。
親父たちが解散した、本当の理由。

じゃなかったら、こんなこと言わないよね。

逆に、ロウは知らなかったってことかな。
まぁ、サムもゴウも知らないらしいし、親父もコウセイも言わないだろうしな。




カンがマジメな顔で言うから、ロウがポカンとしてる。
カオルは、何か勘づいたらしくて、難しい顔になった。


「私、席外そうか?」

「いや、ここにいてくれ。メンバーなら知っといた方がいい」


気を利かせてくれたカオルを、カンが制止した。
当事者に一番近いのは、カンだし、ここは、カンの判断に任せた方がいいかな。


「ロウは、親父たちが解散した本当の理由、知らねぇんだっけ?」

「え?トーイがまともに練習しなくて、バンドを後回しにしてたからだろ?」


大きくため息を吐いて、カンが肩を落とした。


「それは、表向きな。それだけなら、トーイが脱退するだけで揉めなくて済んだんだよ。
 ユージがブチ切れたのは、トーイがコウセイに手出そうとしたからだ」

「............」


ロウが、目を見開いて固まった。
ああ、やっぱり知らなかったんだな。

カオルは、哀しそうな顔になって、腕組みしてる。


「トーイがバイなのは、業界では有名なんだってよ。
 さすがに男とのスキャンダルは、表に出てねぇけどな。
 ツアー先のホテルで、ユージが目を離した隙に襲い掛かったんだ。
 コウセイ、弱っちく見えるから、楽勝だと思ったんじゃねぇの。
 実は、合気道やってて、すっげ強いんだけどよ」


え、そうだったの?
それは、俺も知らなかった。


「投げ飛ばした音で、ユージがすっ飛んできて、何があったかバレバレ。
 コウセイは「酔ってたし」で、笑ってすまそうとしてたらしいけどな。
 それまでのことがあったから、ユージがブチ切れて解散するって言い出した。
 サムとゴウは知らないはずだから、ロウが知らないのも無理ねぇけどよ」

「ああ、そんなことがあったのかぁ。それで納得できた。
 ユージがハルのこと遠ざけたはずだ。
 トーイとそっくりな顔は、ユージは見たくないよね」


カンは頷いて、ロウとカオルの顔を見た。


「これは、俺とコウセイ、カイとユージ、張本人のトーイしか知らねぇ。
 今さらかもしんねぇけど、トーイと同じ事務所は、俺もイヤだ」

「わかったよ。もうひとつ、受かってるとこがあるんだ。
 こっちのが大手だから、優先しようと思ったけど止めとこう」




え...そこ、かなり大手だよね?
そっちのオーディション蹴って、別のとこ行ったら、いい顔されないよね?


「ロウ、俺たちの履歴書とか詳しいの送った?」

「いや、まずは音と映像だけだよ。連絡先として、俺の名前と住所、携帯は記載したけど」


......よかったぁ。

当時のこと知ってる人は少ないだろうけど、下手に二世だってバレたらめんどくさいし。
それこそ、邪魔されるか、利用されるかじゃないかな。
あそこの事務所、今は俳優さんやタレントさんが主流だしさ。


うん、リーダーは、当然、ロウだけど、任せっきりは良くない。
ロウだって知らないことはたくさんあるはず。

きちんと、自分の意見を言わなきゃ。



「あのさ、まずはライブを数こなそうよ。
 オーディションは、もっと後でもいいんじゃないかな。
 カオルが加入したばっかなんだし、カンの卒業はもう少し先だし。
 経験積まないと、親父たちも認めてくれないと思うんだ」

「ん、俺が先走っちゃったかな。ゴメン」



その話は、そこで終わって、俺たちは練習を再開した。
 










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NoTitle

ほう・れん・そう(報告・連絡。相談)。
今では必要ない、っていう所も多いみたいだけど、
グループで行動するなら、意思の疎通は必要だよね。

ロウ、後悔先に立たず、だけど、一応の用心? 履歴書的なものは送って無かったのね。! ・・よかった。
せっかく業界の先輩って言う親がいるんだから、相談くらいはしようね♪

カオルさんー、男って子供なところがあるから、しっかり手綱握ってくださいませ。m(__)m

Re: NoTitle

アップ済みの話で、すでに裏ボス認定のカオルちゃん(笑)

ロウは、しっかり者のはずですが、いい子ちゃんで来たので、人の裏を読むことが苦手だったりします。
まだ二十一歳になるとこなので、そこら辺は経験値積むしかないですかねー。
リーダー気質ではありますが、怜と違って裏がないもんで(笑)
英一みたいに苦労もしてませんしね。

カイ、カン同様に、ロウも今後の成長に期待するしかないようです(苦笑)
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