「Happiness!」
おっかなびっくり

おっかなびっくり 12

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プロムはすっごく盛り上がって、大成功だった。
秋に卒業してた子たちも、結構来てたんだよね。


男連中はスーツ着てて、決まるヤツと決まらないヤツの差が激しくて笑っちゃったけど。
女の子たちは、目一杯のオシャレしてて、見てて微笑ましかった。

パーティドレスの子が半分、それ以外は、色鮮やかな民族衣装着ててさ。
サリーやチマチョゴリ、アオザイにクバヤ、チテンゲにジュパヤ。
誇らしげに、堂々としてる姿が、とても大人っぽく見えた。



ヒップホップ、オールディーズ、リミックスで流行ってるディスコサウンド。
実行委員と打ち合わせたとおりに、時にはノリで、俺たちは演奏しまくった。

俺がギター弾いてるのに気づいて、喜んでくれるヤツらが何人もいてさ。
ギター弾けなくなったことは、担任とカン以外には話してなかった。
でも、音大から進路変更したことや、学内でバンドやらなくなってて、気づいてはいたらしいんだ。

変に慰めたりはしてこなかったし、根掘り葉掘り聞いても来なかった。
そっとしといてくれたんだなって、その時、やっと気がついた。

イクヤとまではいかないけど、心配してくれる友達がいるんだ。
俺、ほんとに周りが見えてなかったなって、反省したよ。


ずっと演奏してたおかげで、女の子には誘われなかった。
自意識過剰かもしれないけど、何人かから誘われそうで、ちょっと警戒してたんだ。
カンが機嫌悪くなるの、イヤだったしさ。


なんて、油断してたら、後片付けの時、こっそり声をかけてきた子がいた。


「ずっと好きだったの。でも、どうやら無理みたいね」


その子が視線をずらした先には、カンがいた。
カンが不機嫌全開になってて、後でどうなだめようかって考えて、あれ?って。


「誰にも言わないから安心してね」


カムアウトしてなかったから、気を遣ってくれたんだな。
その子は、お父さんの仕事の都合で日本に来てた、シンガポールの女の子。
お父さんたちは、シンガポールへ戻るけど、カナダの大学に秋から進学する予定。

「お互い頑張ろうね」って、握手して別れた。
カムアウトはしてなくても、バレバレだったんだろうなって、少し顔が赤くなる。


手のこともそうだけど、俺やカンがゲイだってことも、気づいても知らん顔してくれた。
クラスメイトのみんなには、感謝感謝だよな。

そこらの普通校じゃ、俺たちは、絶対に挫折してたなって、しみじみ思う。
いろんな国のいろんな文化が混じり合って、個人の自由を互いに尊重する。
そんな校風だから、無事、卒業できたんだ。






「半年間、ひとりだけど大丈夫?」


プロムからの帰り、つい、カンに聞いたら、頭を叩かれた。
隣でロウが笑ってる。


「バッカ、今さら、何心配してんだよ?
 俺は、キンダー生か?」

「...ゴメン。休学してる間、ひとりで頑張ってたんだよね」

「ま、わかるけどな。お前が心配すんのはさ。
 今は、自分からも話しかけるようにはしてるし、ひとりで浮いたりしてねぇよ」


学年が違うし、年が明けてからは、ほとんど行ってなかったから、俺、知らなかった。
カンの性格だったら、自分から報告するのは、照れくさくてイヤだろうな。
それでも、俺が心配してるのわかったから、安心させようとしてくれたんだね。




「イクヤと知り会ってさぁ。すっげぇ、反省したんだよな、俺」


カンがボソボソと喋りだして、俺とロウは顔を見合わせた。

イクヤとは、SNSでメッセのやり取りまでしてる。
俺の知らないとこで、そんなに仲良くなってたのも、ついこの前知った。


「あいつ、同い年なのに、すげぇ大人じゃん?
 ロウと喋ってるような気分になんだよなぁ」


カンが、ベースを背負い直して、大きく伸びをした。
重そうだから、持ってやろうとすると、鼻にシワを寄せて拒否られた。

外では、一切、甘えてくれないんだ。
カンらしいんだけど、俺は少し淋しい。




「俺は俺って主張すんなら、他人の意見も尊重しねぇといけねぇんだよな。
 それって、干渉しないってこととイコールじゃねぇんだろ?
 その差がわかってなかったなって、あいつと話しててわかってきたんだよ」


ロウが、カンの頭をくしゃくしゃに撫で回す。
ちょっとだけヤキモキするけど、ロウだからガマン。
俺、ヤキモチ妬きなんだって、こういう時、思い知る。


「そうだよ。ひとりで生きてるわけじゃないからね。
 自分の道を行くために、誰かと協力することも必要になる。
 そんな時は、とことん話し合って、妥協点を見つけないとダメなんだ」

「ロウの意見は、年上だし、ずっとリーダーだったから、納得してた。
 なのに、他のヤツのは、スルーしてたじゃん、俺。
 カイが、周りを気にしすぎだって、イライラしたりもしてた。
 でも、同い年のあいつは、ちゃんとわかって行動してんだなって、話してて思った」



恥ずかしそうに少し俯いて喋るカンが、とても可愛くてさ。
同時に、四月から心配だったのが、ウソみたいに安心できた。

これなら、ひとりで暴走したりはしないよね。


「俺、大学の勉強も真剣にやりたいんだ。
 音楽やってくにしても、絶対にプラスになると思う」


うん、日本をいろんな視点から研究するのは、曲作りだけじゃない。
これからどう活動すればいいかを考えるにも、必ず役に立つと思うんだ。


「ああ、わかってるって。もう、急がねぇよ。
 俺だって、あと半年はインター行かなきゃだしさ。
 焦ったら、ろくなことになんねぇってのは、よーく身にしみたっての」

「......前から思ってたんだけど」


ロウが、俺とカンを見比べながら、笑ってる。


「カンってさ、喋り方はユージの影響受けてるよね。
 コウセイは、そんな喋り方しないしさ。
 どっちかと言うと、カイの方がコウセイに近い気がする」


うん、それはね......。


「性格の問題じゃないかな。
 俺よりカンの方が、親父に近いしさ。
 親父が機嫌悪くても、ガンガン話しかけるの、カンだけじゃん」

「あ?ああ、確かにそうかもな。
 ユージが怒鳴るのって、俺たちが言うこと聞かない時だけだかんな。
 なんで、みんながそんなに怖がるのか、わかんなかったし」


そこで、話を止めて、俺の顔を見上げた。


「でも、カイがプレッシャー感じてんのは、よくわかるぜ。
 ユージは、ギターテクもソングライティングも、天才じゃん?
 越えようにも、すっげ高いハードルだもんな。
 俺は、コウセイとはタイプが違うし、俺は俺って思ってっけどさ」

「............」


カッコ悪いから、それだけはカンにバレないようにしよう。
そう思ってたのに、バレバレだったわけ?



恥ずかしいのと悔しいので、言葉が出なくなった。


ロウが肩を抱いてくる。


「親と同じ仕事をしようと思ったら、避けては通れない道だからね。
 俺は、ドラムを選んだ分、まだマシだったかな」

「子どもの頃は、そんなこと考えもしなかったからね。
 でも、わかってても、ギターと曲作りを選んだと思うよ。
 理由は、自分でもわからない。ただ、好きなんだよ、理屈抜きで」


カンが、俺たちの前に回り込んできた。


「それで充分じゃん!だろ?」


カンが、はっきりした声でそう言って、ニコニコ笑う。
その顔を見てるだけで嬉しくなって、幸せで。


「あ、なんか曲できそう!」

「え、マジ?!忘れんなよ、すぐに帰って入力しようぜ!!」


カンの言葉を合図に、三人で家まで走って帰った。











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