「Happiness!」
水に流して

水に流して 6

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インターでのラストの年になった。

予備校通いのおかげで、今までのところ、模試でA判定。
インターでも頑張ってきたから、志望校の推薦枠には入れそうだ。

ただ、推薦でも落とされることがあるって聞いてるし、気は抜けない。
イクヤたちのおかげで、予備校も楽しく通えてる。



カンのことは、時々、考える。

諦めようと無理するのをやめたら、ほんと、気が楽になったんだよね。

会いたいけど、もう少し、自分の中で考えがまとまってからにしようと思ってる。
カンからも、何も言ってこないしさ。


ただ、ロウからは情報が来る。

ロウの知り合いのバンドに加入して、インディーズデビューした。
でも、リーダーとカンが意見が合わなくて、解散したらしい。

カンは、今、路上や公園で歌ってる。

あの、ハードな音好きのカンが、アコギ一本で歌ってるって、すごく驚いた。
それも、俺が作った曲をテンポを落として、演ってるって。

でも...テンポを落としたとしても、俺が作る曲って、カンが歌いやすいはずなんだよな。

だって、カンが歌うことが大前提で作ってたんだしさ。


音域は、問題ない。声変わりしても、三オクターブは軽く出てたし。
声質は、コウセイみたいに甘くはないし、艶があるとはいい難い。
ただ、もっと伸びがある。
俺だと、惚れた欲目ってヤツかもしれないと思ってたけど、親父が言ってたんだよね。


『若い頃のコウセイより、声が出てる。変な発声して喉潰さなきゃ、もっと良くなる。
 経験積んで年食えば、深みも出るだろ』


滅多に他人を褒めない分、正当な評価なんじゃないかと思う。


コウセイにきちんと頭下げて、ボイトレはやらせてもらってるらしい。
親の七光は認めないって言ってたけど、コウセイもそこら辺は協力してるんだな。





「許してもらえるまで、頑張るってさ」



GW、模試の帰りに、ロウん家に寄った。
久しぶりに、みんなで晩御飯食べようって、親父たちが決めたから。

でも、リンは仕事で、カンは来なかった。
親父がいるから、当然、ハルも来ない。


親父たちが、ビールで盛り上がり出したから、コーラ持って、ロウの部屋へ。

クッションに腰を下ろしたら、ロウの第一声は、それ。



「許すって?」

「ワガママで振り回したことや、相談なしにタトゥー入れたこと。
 組めなくても、パートナーになれなくても、せめて、友達ではいて欲しいんだって」


それ聞いてさ、なーんか、切なくなって。

俺様なカンが、そんないじらしいこと考えてるなんて。


「これは、カンには言わないでほしいんだけど...」

「うん、言わないよ」

「やっぱり、俺、カンが好きなのは好きなんだよ。
 会いたいし、会えなくて淋しいしさ。
 タトゥーのことも、いろいろ調べてて、少しは冷静になってきた。
 でも、今は、自分のことで精一杯だから、もう少し時間がかかると思う」


ロウが、大人っぽく微笑んで、頷いた。


「まずは、自分がしっかりしないと、また振り回されるだけだと思うんだ。
 だから、せめて、大学が決まるまでは、会わないでおく。
 その間に、カンに他に好きなヤツができても、それは仕方ない。
 諦めるか、取り返しに行くか、その時に決める」

「親父たち見てても、いろんなパターンがあるしね。
 カイが自分で考えてそう決めたんなら、俺は応援するだけだよ」



親父たち......そうだよね。

親父とキャシー、コウセイとスーは、レコーディングで出会って一目惚れ。

サムとカレンは、大学のゼミが同じだったって聞いてる。
お互い、つきあってる人がいたけど、浮気されて、結局は振られた。
愚痴り合ったり、慰め合ったりしてたのが、そのままおつきあい。

ゴウとリョーコは、高校の同級生。
くっついたり別れたりを繰り返して、リンを妊娠したから、できちゃった婚。

トーイとヒトミは......トーイは業界で有名な遊び人。
それは、今でも変わらない。

男女問わずだってのは、シークレットらしいけど、知ってる人は知ってるらしい。
俺は、親父が酔っ払って喋んなきゃ、気がつかなかったけどね。

ヒトミが、トーイに夢中で、テレビでも「ファンです!」って公言してた。
超人気アイドルで、事務所も強かったから、気軽な遊び相手じゃ済まないのに、トーイは、つい手を出した。
周りから、ジワジワ追い込まれて、結婚まで持ち込んだ、ヒトミの粘り勝ち。

結婚してからも、別にマンション買って、そこで好きにやってるらしい。
どんなにスクープされても、ヒトミは「絶対に別れない」って言ってる。

トーイが帰ってこない淋しさは、ハルを溺愛することで埋めてるように見えた。
それでも、ハルが俳優の仕事しだして、しっかりしてきたから、少しは子離れしたみたい。
それは、リンからロウに報告があった。





「ああ、あとね、もうひとつ気にしてた」

「え、何を?」


今度は、少し面白がってる感じの、ロウの表情。


「身長が伸びて、175cmになっちゃったんだってさ。
 それでも、カイよりは、かなり低いのにね。
 タトゥーの時に、見た目って大事なんだって、思ったんじゃない?」

「うん...確かに、見た目も込みって言っちゃった。
 でも、そのくらいの身長、俺からしたら、可愛い範囲なんだけど」

「これ以上、少しでもマイナス要素が加わるのが、イヤなんだよ。
 あのカンが、そこまで考えるって、悪いけど、可愛くて笑っちゃった」

「キレなかった?」


思い出したんだろう、笑いながら、頷いてる。


「真っ赤になってキレてた。それも珍しくて、なかなか笑いが止まらなくてさ。
 クールが売りのカンが、あんなになるんだから、カイのこと、それだけ好きなんだろ?
 俺、思わず、カンの頭、ぐりぐりに撫で回しちゃった」


笑い続けるロウを見ながら、その光景を想像したら、俺まで笑っちゃって。


そして、やっぱり、嬉しかったんだよね。
カンが、俺を好きなんだってこと。



だったら、もっと考えなきゃね。

今のまんま、また会っても、何も始まらない気がする。




「カンに負けないように、俺も頑張るよ。
 なし崩しに、元の幼馴染に戻ってたら、悩んだ時間が無駄になると思う」

「そうだね。それがいいんじゃないかな。
 俺が偉そうなこと言うのはおかしいけど」


その時、キャシーが呼びに来た。
親父たちの宴会が終わって、帰るんだろう。


「無理はしちゃダメだよ。心が折れる前に、立ち止まるんだ」


ロウの別れ際の言葉は、すっごくリアリティがあった。

今では、笑い話にしてるけど、あの時は、ロウ自身が一番苦しんだんだよね。



「大丈夫。ロウにはロウがいなかったけど、俺にはロウがいるじゃん」


俺が返事すると、ロウがニヤッと笑って言った。


「うん、その調子。その余裕が、あの時の俺にはなかったって、今ならわかる。
 カイの方が、大人で、周りがちゃんと見えてるってことだね」


大好きな兄貴分に褒めてもらって、すごく嬉しかった。

でも、調子に乗っちゃダメなんだ。
ロウより大人なんて、口が裂けても言えないし。


「俺が言うのも変だけど、カンの話、聞いてやって。
 カンも、俺と同じで、ロウにしか話せないんだと思う」


言いながら、いつもの儀式をやったら、終わった後に、ロウが言った。


「カンも同じこと言ってたよ」


それ聞いて、俺、胸がきゅんとした。

JKかよ、俺。 











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