「Happiness!」
水に流して

水に流して 3

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うん、ロウと話して冷静になれたら、自分の中にあるものが見えてきた。


タトゥーが、まだ肌に馴染んでなくて、赤く腫れてたんだよね。
それが自分が刺されたみたいに痛く感じて、なんでそんなこと?!って思っちゃった。

あれが馴染んできたら、もう少しはマシになるのかもしれない。
今までも、全身に入れてる人見て、「自分はやらない」と思っても、「気持ち悪い」とまでは思わなかったし。

カンが羨ましかったってのもあるなぁ。

見た目、完璧に日本人でさ。
コウセイとスーの両方に似てて、すごく綺麗でカッコいい。
肌だって、欧米系の白い肌とは違って、肌理の細かいってヤツで、触るとスベスベだった。
そんな綺麗な肌に、あんなに大きくタトゥーがあるなんて......。


綺麗なガラス細工に、わざわざヒビを入れなくてもいいじゃん?

そう思っちゃったんだよね。
でも、それは、俺の好みを押し付けてるってことなのか。



俺は、グランパほどは黒くない。キャシーよりも、まだ薄い。
でも、日本人にしては、かなり黒い肌してる。

肌質だって、親父みたいだしさ。
それで、このデカい体にタトゥー入れたら、威嚇としか表現しようがない。



あー、親父の言うとおり、「ダチ」なら問題ないよなぁ。




ぐすぐず考えるのは止めた。
四月からと思ったけど、春休みも講習受けることにした。

イクヤとは、週に二、三回、メッセのやり取りしてる。
イクヤも講習行くって言ってたから、また短い間だけど、毎日会える。

新学年が始まれば、月金で会うんだけどさ。



「久しぶり!」


春休み講習初日、元気いっぱいで、イクヤが声をかけてきた。
相変わらず、ニコニコしてて、見てる俺も、ニコニコしたくなる。


「何かあったでしょ?」


挨拶を返す前に、ズバッと聞かれて怯んだ。

そうだよ、可愛くて幼く見えるけど、イクヤは、他人の感情に敏感で、俺より大人なんだった。


「長くなるから、今は話せないかな」


苦笑いして答えると、イクヤが真顔になって言った。


「メッセでは書いてなかったけど、なんとなく落ち込んでる感じしたんだ。
 顔見たら、何か悩んでそうだなぁって、すぐにわかった。
 終わったら、カイの家に行ってもいいかな?
 俺の家じゃ、話しにくいでしょ?」

「うん、今夜はキャシーいないから、大したことはできないけど。
 簡単でよかったら、晩御飯作るよ」

「あ、じゃあ、駅に自転車置いてるから、それで向かうよ。
 カイの家からなら、電車使うより早いんだ」


イクヤが家に来る、約束しただけで、なんとなく気が晴れた。
話す内容は、どこまでか悩むけど、イクヤならロウとはまた違った、客観的な意見を持ってそう。




授業が終わって、イクヤは走って駅まで向かった。
予備校へは、俺とは違う路線を使ってるから、急いでくれたんだ。
俺がのんびりしてると、追い越されちゃうかもしれない。

キャシーから、晩御飯の下ごしらえはしてあるってメッセがあった。
いつも、誰かが来るかもしれないって、多めに作ってくれるから、イクヤが来ても問題なしかな。

一応、イクヤを家に呼ぶことはメッセしておいた。
そうすれば、ドキドキしても、絶対に手は出せないと思ったし。

変なことすれば、イクヤどころか、キャシーの信頼を失くしちゃうもんね。




鍋には、ニンジンとタマネギ、アサリのコンソメスープ。
冷蔵庫に、三枚に下ろした鯖、茹でてあるブロッコリーやキャベツ、もやし。

鯖は、塩コショウして軽くソテーでいいよね。
レモンや醤油か、作りおきのトマトソース。どちらか好きな方で食べてもらおう。

ピーナッツバターとココナッツミルク、少しだけの塩と刻んだ唐辛子を加えて、よく混ぜ合わせる。
キャシーがたまに作る、なんちゃって「ガドガドソース」。
本当のインドネシア料理だと、もっとスパイスが必要らしいけど、日本ではなかなか手に入らない。
それに、これだけでも、充分に美味しいんだ。
茹でた野菜や、豆腐、厚揚げなんかにも合う。


作りながら、カンを思い出した。

このソースも、カンが野菜が嫌いで、なんとか食べさせようと、スーが考えたんだっけ。
ピーナッツバターは大好きだから、このソースをつけたら、パクパク食べるようになった。
スーの作戦は大当たりだったんだよな。


できあがったのをテーブルに並べてたら、イクヤがやってきた。

インターホンで応対して、部屋まで来てもらう。




「お邪魔します!」

「もうできあがるから、手を洗っておいでよ」


まだ二回目なのに、イクヤは家に馴染んでて、バスルームへの案内もいらない。

図々しいわけじゃなくて、慣れるのが早いってことだと思う。
イクヤと図々しいって、全然、結びつかないもんね。



「これ、カイが作ったの?すごいねー!」

「下ごしらえしてあったから、俺は焼いただけだよ」

「それでもすごいよ!俺も、家事できるようにしないとね。
 今まで、勉強ばっかしてて、自分の部屋の掃除くらいしかしたことないもん」


作った料理を、イクヤが美味しそうに食べてくれる。
仲間には何度も作ったし、みんな美味しそうに食べてくれたのに、今日はすっごく嬉しく思えた。


食べ終わって、二人で後片付け。
っても、食器は食洗機に並べるだけだし、フライパン洗って、テーブル拭いたら終わり。


「あ、これ!途中のコンビニで買ってきた」


デイパックから出してきたのは、豆大福二つ。
俺が和菓子好きなの、覚えててくれたんだ。

日本茶を淹れて、俺の部屋へ移動。

豆大福なら、日本茶の方がいいよね。
湯は沸かせるから、急須も持ってきた方がいいか。




「で、何、悩んでるの?」


日本茶を一口飲んで、イクヤが話を切り出した。
俺が和んじゃって、相談を忘れそうになったの、気づいたみたい。


ここで、俺は覚悟した。

俺がゲイだって隠してたこと、恋愛に興味ないってウソついたこと。

相談するには、正直に言わないとダメだと思ったから。


イクヤは、最初、ポカンとしてたけど、話を進めていくうちに、真剣な顔になってった。
気持ち悪いって思われると思ってたけど、少なくとも、表情には出してない。



「勇気出してくれて、ありがと」


俺が、話し終わった後、イクヤの第一声。


「ウソは嫌いだけど、そんな事情ならしかたないよ。
 異質だからって排除されるつらさは、俺、よくわかってる。
 カイは、自分の見た目もコンプレックスなんだし、余計に言いづらいよね。
 でも、話してくれたってことは、俺のこと信頼してくれたってことでしょ?」

「うん、話さないと、相談もできないしさ。
 久しぶりに会って、すぐに気づいてくれただろ。
 イクヤが、俺のこと、本気で心配してくれてるって、わかったからさ」


イクヤが、真剣な顔のまま、右手を差し出してきた。
小さな手を握ると、力強く、握り返してきた。

カムアウトしても、気持ち悪くはないんだって、ここで実感した。
情けないけど、嬉しいのと安心したので、泣きそうになる。


「もー、泣かないでよ!俺まで、泣きそうになるじゃん!!」


そう言いながら、もうイクヤの目が真っ赤でさ。
いじめられた頃を思い出しちゃったのかな。


ガマンしようとしたら、余計に涙が溢れてきて。

変かもしれないけど、二人とも、しばらく泣いちゃったんだ。











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