「Happiness!」
ところかまわず

ところかまわず 11

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「へへっ、そう言ってもらえるの、すごく嬉しい」


ちょっと照れくさそうだけど、笑顔のまんまのイクヤ。

ジンとタカシが、「郁弥は学校で人気者」って言ってたけど、想像つくな。
見た目は正反対だけど、ロウと似てるんだよね。

ハキハキ明るく喋るけど、ちゃんと相手のペースに合わせるとことか。
空気を読んで、誰もリーダーシップを取らないなら、自分が進んでリーダーになるとことか。

ひねくれたヤツから、僻まれたりはしそうだけど、周りがみんな味方になるんだろう。
ロウがそうだったから、イクヤもそうなんじゃないかな。


そんなこと考えてたら、イクヤが口を開いた。


「俺ね、小学校では、いじめられてたんだ」

「......マジ?そんな風には、全然見えない」


すごく驚いてたら、暗くならないように気をつけながら、イクヤが話してくれた。



小学校入学直前に引っ越したから、同じ幼稚園や保育園の友達がいなかったこと。

チビで女の子みたいな顔だったから、オカマって、よくからかわれたこと。

エスカレートしてイジメの対象になると、一緒にいじめられたくないからって、遠巻きにされたこと。

お兄さんが庇ってくれたけど、卒業したら、余計にイジメがひどくなったこと。

イジメから抜け出すために、今の中高一貫校に入りたくて、必死で勉強したこと。




「...中学に入ったら、同じ小学校のヤツはひとりもいなくてさ。
 おかげで、イジメはなくなったんだ。
 あの時、結果を出せたから、目標に向かって勉強することが楽しくなった。
 近所に住んでるヤツらも、さすがに学校が違うとイジメたりしてこないしね」


一度、話を止めて、恥ずかしそうに笑った。


「オカマって言われるきっかけがあってさ。
 同じクラスの女子に、「好きな人」聞かれたんだよね。
 俺、何のためらいもなく「お兄ちゃん」って、即答しちゃったんだ。
 お兄ちゃんは、俺と違って、背が高くて、スポーツ何でもできたしさ。
 俺にとって、ヒーローだったんだ」


とっさに、カンを思い出した。


『ロウは、俺のヒーローだったのに!』


ロウが引きこもった時、カンは取り乱して、そう叫んでたよなって。
もちろん、イクヤは、そんな意味は全然なかったんだろうけどさ。




「でね、カイは、お兄ちゃんに似てるの!
 横顔の感じとか、一緒に歩く時、ちゃんとペース合わせてくれるとことか。
 俺がずっと喋ってるのに、うるさいって言わずに、ニコニコと聞いてくれるとことかさ」

「横顔は、自分ではわからないけど、ペース合わせたりするのは、普通じゃない?
 それに、イクヤが喋ってるのは、面白いし楽しいから、うるさいと思ったことないよ」

「ほんと?」


俺が答えたら、また嬉しそうにしててさ。


オカマって言葉、日本語では蔑称だったよね。
そんなこと言われていじめられても、頑張って耐えて、ニコニコできるって、強いよなぁ。


それから、ガールフレンドはいるのかって話になってさ。
正直に言うわけにはいかないから、将来のことで頭がいっぱいだって、適当に話してた。

それも、うんうんって頷いて、イクヤは仲間がいたって、嬉しそう。


「俺だって性欲はあるし、女の子見てドキドキすることもあるけどさ。
 まだ、恋愛とかって、よくわかんないんだよね」

「急がなくてもいいんじゃないの?数こなせばいいってわけじゃないみたいだし」


ちょっと上からかなと思ったけど、親父とキャシーを例にして話してみた。

真剣に聞いてるイクヤが、また可愛くってさ。

弟がいたら、こんな感じなのかなーとか。
こんな弟だったら、可愛いだろうなーとか、失礼だけど思っちゃった。


ほんのちょっとだけ、ベッドではどうなのかなぁって想像したのは、誰にも言えない。




「うっわー!素敵だよね、ご両親!!
 俺も、いつかは、そんな人と出会えればいいなぁ」


うっとりと感想を言ってて、俺、つい頭撫でちゃった。
だって、ほんとに可愛いんだよ。


「あー、また子どもっぽくて可愛いとか思ったでしょ?
 でも、そんなとこもお兄ちゃんみたいで、ちょっと嬉しいかも」


さっきの想像がバレたのかと思って、俺、焦った。
なんとか顔に出さないようには、できたみたい。

まさか、イクヤも自分がそんな対象にされるとは、思ってないだろうしね。




遅くならないうちにって、イクヤは帰ってった。

キャシーが、晩御飯も誘ったけど、それは遠慮してた。
持ってきたタッパーに、キャシーがお手製のクッキーを詰めて、風呂敷で包んで渡してる。


「柔らかめだから、日持ちはしないけど、お祖母様も大丈夫だと思うわ」


ああ、ボランティアで持っていく、ソフトタイプのか。
あれなら、お年寄りにも食べやすいよね。


「ありがとうございます!今日は、ごちそうさまでした。
 また、お邪魔してもいいですか?」

「大歓迎よ、またいらっしゃい」


エントランスまで見送りに行ったら、ブンブン手を振って、走ってった。
背中が、「ほんとに楽しかった」って、言ってるみたいで、嬉しくなる。




「聞いてた通りの、いい子ね。予備校行って、よかったじゃない」

「うん、俺もそう思う。四月からも、やっていけそう」


去年の夏は、一体何だったんだってくらい、俺、前向きに明るくなってて。
イクヤに感謝してた、冬休み最後の夜。


それなのにさ。ほんと、俺って、メンタル弱いなって事件が起きた。





冬休みが終わって、初日の登校。

朝、カンと待ち合わせて、駅へ歩き出そうとした時、何か違和感があった。


「カン、ピアス開けたの?」


カンの白い右耳に、クロスが二つ光ってる。
慌てて、左耳を見たら、そっちは三つ......。


「ああ、似合ってんだろ?」

「うん、似合ってるけど...急にどうしたの?」



特に、校則違反でもないのに、俺たちは開けなかった。
それは、ロウの影響が大きかったんだけど......。


なんかモヤモヤして、歩きながら、カンをマジマジと見ちゃってさ。

そうしたら、ピアスの何倍もショックなモノのが、襟元から見えた。



「......ちょっと、待って。それ、何なんだよ?!」

「別にいいじゃん。お前には、関係ないだろ」


俺、もう、何言っていいのかも、わかんなくなって。

カンは、固まってる俺を置いて、さっさと先に歩いてる。



俺、マジでわかんないよ。

それ、どーゆーつもりなんだよ?!











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