「Happiness!」
ところかまわず

ところかまわず 10

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冬期講習は終了して、イクヤ、ジン、タカシとファミレスで打ち上げ。
四月からは、月金で通うから、またよろしくって握手した。
ジンとタカシは、志望校が違うから、別のコースになっちゃうけど。


カンは大晦日以来、何も言ってこない。
ロウにメッセしてみたけど、ロウにも何もないらしい。

気になるけど、たったの一週間だ。
冬休みが終われば、また毎日一緒なんだし。


それに、明日はイクヤが遊びに来るから、下手に拗れても困る。
せっかく来てくれるんだから、気分良く過ごしたいじゃん?


自分でも、冷たいかなって思うんだけどさ。
大晦日に言ってたことが、引っかかっちゃって。




イクヤのことは「可愛い」とは思うけど、カンに対する感情とは別。
そりゃ、セックスできるかって聞かれれば「イエス」だよ。

俺、ゲイだもん。

ノーマルの男だって言うじゃん。

『切羽詰ってたら、どんなブスでもババァでもヤれる』

ってさ。

まぁ、イクヤは綺麗な顔してて、中身も可愛いし、そんな言い方するのは変かもだけど。

でも、今のところは、一緒にいて楽しい「友達」でしかない。
イクヤはノーマルっぽいし、進展するとは思えない。


それにさ......


カンに執着してる間は、よそ見する余裕なんかない。
自分から関わらないようにしてるのは、俺が弱いから。

他の男とヤれば、スッキリはするだろうけど。
まだまだガキな俺には、ハードルが高いんだってば。

インターでもカムアウトしてないんだ。
勘づいて、こっそり誘ってくるヤツはいるけど、スルーしてる。


そこら辺は、親父とキャシーに影響されちゃったのかなぁ。


キャシーに出会うまでは、女と遊びまくってたらしいのにさ。
出会ってからは、キャシーしか見えてないって、本人が断言してる。


『あ?そりゃ、欲はあるさ。
 でも、キャシーを裏切るってのは、自分を裏切るってことなんだよ。
 んなこと、できっか』


ミュージシャン仲間が来た時に、とーぜんって感じで質問に答えてた。
質問した人も酔ってたから、俺やキャシーがいるのも気にしなかった。


親父は建前でそんなこと言わないって、みんな知ってるから、ただ感心してたよな。
キャシーはキャシーで、俺のこと、自慢気に笑って見てたっけ。





約束の時間に、駅まで迎えに行った。

イクヤは、いつもの真っ青なベンチウォーマー。
電車の中が暑かったのか、白い顔がピンクになってる。

声をかけると、真っ直ぐにこっちを見て、走ってきた。
やっぱり、ニコニコしてて、見てると、心がほんわりする。


歩きながら、ちょっと興奮気味に喋ってたのに、エントランスまで来たら、ポカンとしてた。


「ここ?すごくない?ああ、お金持ちだったっけ」

「家でもギター弾くからね。防音のしっかりしたとこじゃないと困るんだ。
 他のメンバーも、ほとんど近くに住んでる」

言い訳っぽいかなと思ったけど、イクヤは、別に妬んだりしてなさそう。
単に、事実を思い出しだけって感じなんだよね。
こーゆーとこは、ほんとにつきあいやすいと思うよ。



玄関を開けると、鍵の音で気づいたのか、キャシーが出迎えてくれた。
ニコニコ顔のキャシーに、ぴょこんと頭を下げてる。

中身は大人なのに、仕草がほんとに可愛らしいんだよなぁ。
同い年には、絶対に見えないよ。


「これ、祖母が作ったんです。よかったら、召し上がってください」


キャシーが受け取った風呂敷包み、中身は草餅。
ばーちゃんも作ってくれたっけ。


「ありがとう!カミカワさんの草餅は、ユージの大好物なの。
 ユージも喜ぶわ」


親父、酒好きなのに、甘いモノも好きだよな。
和菓子限定だけど。
俺も和菓子好きだら、やっぱり似てるのかな。



お昼は、グランマ直伝のインド料理。

チキンカレーとほうれん草とチーズのカレー。
タンドリーチキンにカリフラワーのサブジ。

ユージがあまり好きじゃないから、滅多に出てこない。
俺は、大好きなんだけど。

あ、似てないって、ホッとしてるな、俺。


「うっわ、美味しそう!!こんなに本格的なインド料理は、初めてです!」

「お口に合うといいけど」


イクヤが素直に喜んでるから、キャシーはすっかり気に入ったみたい。

俺や親父と違って、キャシーは誰とでも仲良くなる。
イクヤなら、絶対に大丈夫だと思ってたけど、予想通り。

キャシーとイクヤが、初対面とは思えないくらいに喋っててさ。
俺が喋らなくても、全然、空気が悪くならない。

安心して食べてたら、キャシーから注意される。


「あなたのお客様なのに、黙ってるのはおかしくない?」

「...俺の喋る隙なんて、なかったと思うけど」


反論したら、イクヤとキャシーが顔を見合わせて笑ってる。


「ゴメン!おばさんのお話、とっても興味深くてさ」

「いや、いいんだ。見てるだけで楽しいから、俺」

「そういうところは、ユージにそっくりよね」


うへー、親父と一緒にしないでほしいなぁ。
俺は、一応、空気読むってば。

デザートは、インド式アイスクリーム。

俺にはちょっと甘すぎるけど、イクヤは気に入ったらしい。
レシピをキャシーに質問してた。





「カイの部屋、すっごーい!」


部屋へ案内したら、また驚いてる。
ああ、確かに、イクヤの部屋よりは広いか。


「これが、話してくれた幼馴染?」


さっそく、俺の机のフォトフレームを見てる。

五人で最後に撮った、去年の、ああ、もう一昨年か、クリスマスパーティーの写真。
俺のスマホからは、もう移しちゃったから、見せられなかったんだ。


「そう、長髪なのが、ロウ。背が低くて髪の毛立ってるのが、カン...」


そこまで説明して、イクヤが「あ」って声を上げた。


「これって、澤井春樹と高井すずじゃない?」


リンの芸名は、リョーコの結婚前の名字+鈴を別読みしたもの。


「そうだよ、二人とも、お父さんが親父のバンドのメンバー。
 ハルのお父さんは、抜けちゃってるけどね。
 リンは、二世タレントで売りたくないから、公表してないんだ」

「大丈夫だよ、俺、喋らない。
 カイのお父さんのことも、ジンやタカシには言ってないしね」


うん、覚悟してたのに、話さなかったよね。
だから、信用できると思ったんだ。


「わかってるよ。友達だしね」











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