「Happiness!」
ところかまわず

ところかまわず 9

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家に帰ると、親父とキャシーは、リビングでお節つまみながら、ビール飲んでた。

終了後に、一旦、会場近くの高級ホテルで休んで、マンションに帰ってきたんだろう。

ちょっと前なら、スタッフと打ち上げやって、家に帰ってたんだけどね。
さすがに、体のことを考えるようになったみたい。

専属のトレーナーさんに、マッサージしてもらったり、ジムに通ったりし出した。
四十過ぎたら、コンディション整えないと、先が厳しいって痛感したんだって。



「あけましておめでとうございます」

「おう、おめでとさん」


しっかり休んだ後に、好きなお節とビール。
こんなに機嫌がいい親父は、かなり珍しい。


「イクヤ君の家は、楽しかった?」

「うん!すっごく驚いた!」


俺の返事に不思議そうな顔のキャシーと、眉間に皺を寄せた親父。

楽しくなっちゃって、イクヤん家のことを説明すると、二人とも声を上げてる。


「はぁ?!純弥にーちゃん家だったのかよ?」

「カミカワのおばあさん、お元気なのね!」


おじさんたちにお願いして、何枚か写メらせてもらったから、二人に画像を見せた。


「うっわ、純弥にーちゃん、おっさんになってんなぁ」

「イクヤ君は、お母さんにそっくり!」


二人が楽しそうに画像を見て、三人で笑顔の晩御飯。
こんなこと、滅多にないから、心の中でイクヤに感謝した。



ばーちゃんが死んで、十年以上経つ。

直後の解散騒ぎも収まって、好きな音でちゃんと結果を残せてる。
ずっと、ピリピリしてたのが、少しずつ余裕が出てきたってことなんだと思う。


俺にとっては、いつもムスッと黙ってて、怖い親父だったけど。
それは、しかたなかったのかなって、帰り道に思ったんだ。


イクヤん家で見たアルバムで、小学生の親父は目一杯に笑ってた。
高校中退した後のステージの写真もあったけど、すごく楽しそうにギター弾いてた。


よく考えたら、プロデビュー以降の親父の写真や画像しか、見たことなかった。
ずっと、無表情なんだか、不機嫌なんだか、笑ってるのは、ほとんどない。

ばーちゃんがアルバム持ってたはずだけど、親父がイヤがったんだろう。
俺は、一度も見たことがなかった。



プロデビューするために、事務所の要求を飲んだ。
トーイを加入させて、売れ線の曲を書いた。

まるでバックバンドみたいな扱いも、ライブをちゃんと演れるうちはガマンできた。

何より、じーちゃんとばーちゃんを安心させたかったんだと思う。


二人が亡くなって、ガマンする理由が失くなった。
トーイも、より売れる方へと傾いたから、お互いに最善の選択だったんじゃないかな。



そんなことを考えてたら、親父がボソッと呟いた。


「トーイもなぁ......」


すっごく驚いて、キャシーを見たら、キャシーも驚いちゃってる。

解散以降、親父の口から「トーイ」って、聞いたことがない。
名前を聞いただけで不機嫌になってたし、話す時は、「あいつ」「あのバカ」としか言わなかった。


かなり酔ってるのかな。

どう反応していいかわかんなくて、キャシーと首をひねってた。


「あいつん家の事情は知ってたし、抜けるなら抜けるで良かったんだけどよ。
 打ち上げで酔ってたからって、コウセイに手出そうとしやがったから......」


!!!!!!!!!!


聞き返してもいいものか悩んでたら、そのまま親父は寝ちゃった。

キャシーが起こそうとしてるけど、いびきかいてるから、しばらくは無理。
冷やさないように、ブランケットをかけて、起きるのを待つことにした。



「さっきの......」

「もう、ユージったら、弱くなっちゃって!」


キャシーが怒ってる...ってことは、聞き間違いじゃないよね?


「トーイのこと、ハルは知らないはずだから黙っててね」

「えーっと、もしかして、バイってこと?」


キャシーは黙って頷いた。


出そうとしたっことは、未遂ってことだよね。


ホッとしたと同時に、なーんか、納得した。


親父は、メンバーがすごく大事で、特にコウセイのことは、絶大な信頼を寄せてる。
幼馴染ってヤツで、最初に音楽のことを教えてくれたのは、コウセイだから。

そんな大事なコウセイを傷つけられて、親父がどれだけキレたか。
想像しただけで、ゾッとする。


コウセイ自身が流しても、親父は絶対に許さない。
親父の性格を考えたら、わかりそうなもんなのに......。

そりゃ、そっくりなハルの顔は見たくないよね。



合意の上なら気にしないけどさ。
気にしないって言えば、ウソになるか。
まぁ、でも、俺に文句言う権利はないよね。


でも、もし、カンがレイプされたとしたら、俺だってブチギレる。

考えにくいけど、それは、ロウだって同じ。
ハルとリンだとしても、俺は怒り狂うと思う。

どれだけ距離ができたとしても、やっぱ、仲間だもん。
みんなが傷つけられたり、哀しい顔してたら、絶対にイヤだ。


親父もコウセイもノーマルだし。
レイプされるってことは、ゲイだったとしても、屈辱以外の何物でもない。

女の人なら、恐怖とか男性不信とか、そんな感じなのかな。

どちらにしても、プライドをズタズタにされるってことだよね。
心を壊すには、充分な破壊力だ。


それは、いくら酔ってても、言い訳にならない。


ゴウやサムは、知らないのかもしれない。
そんなこと、コウセイもトーイも話さないだろうしさ。

あー、親父が、最後の最後で許せないのは、しかたないよなぁ。




「誰にも喋らないけど...俺だって、トーイのこと、許せないよ」


俺が小声で言うと、キャシーが哀しそうに笑う。


「あなたなら、そう言うと思ってた」

「だからって、ハルはハルだし。
 トーイとは、関係ないから、何も変わらないよ」




部屋に戻って、若い頃の親父たちをネットで探した。


トーイは、背が高くて細マッチョってヤツ?
顔は、ハルとそっくりだけど、ずっと男っぽい。

コウセイは、背は低くないけど、カンと同じくらい華奢で、綺麗な顔しててさ。
今でも、端正な顔立ちって言われてるけど、若い頃は中性的ってヤツかな。
化粧なしでも「ビジュアル系」って言われるくらいだしなぁ。

俺、キンダー生だったし、そんなことわかんなくて、ただ懐いてたけど。

トーイの攻撃避けながら、親父のフォローって、どれだけ大変なタスクだったろうな。



新年早々、楽しいことと、すっごい衝撃。

受験に本気で取り組まなきゃなんないのに、唖然呆然って感じなんだけど...。


ああ、明日も予備校だ。
呆然としてばっかじゃいられない、準備しなきゃね。

準備しながら、自分に言い聞かせる。


親父は親父、俺は俺。


最近、ずっと唱えてるな、これ。











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