「Happiness!」
ところかまわず

ところかまわず 8

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「まぁまぁ、優ちゃんやキャシーちゃんは、元気にしてる?」


イクヤのお祖母さんが、ニコニコと質問してくる。

話を聞いたら、おじさんは親父の一歳上で、子どもの頃、一緒によく遊んでたらしい。
キャシーが来た頃は、仕事で別のとこに住んでたから、キャシーを知ってるのは、お祖母さんだけ。




「じゃあ、お父さんが自慢してた人が、カイのお父さんなの?!」


イクヤが、目をパチパチさせて驚いてる。
ここでバレちゃったから、もう悩まなくていいか。


「ああ、テレビでムスッとギター弾いてたろ?
 言われてみれば、確かに似てるよなぁ」


おじさんが、懐かしそうに親父たちの話をしてくれた。



ガキ大将でヤンチャだったけど、ギター始めたら、ピタッとおとなしくなったとか。
夢中になると周りが見えなくなって、よくばーちゃんに叱られてたとか。
じーちゃんは優しくて、怒ったとこを見たことがなかったとか。

知ってたことでも、初めて会う人に言われると、ほんとだったんだなって、変な感想が湧いた。

コウセイは小学校まで、サムとゴウは高校も同じだったって。
アルバム出してきて、みんなの写真を見せてくれた。



「俺より偏差値高い高校行ったのに、ポーンとやめちまって心配してた。
 康生や剛、長生は、大学行きながら、よくついてくなって感心してたんだよ」


やっぱり、周りからもそう思われてたんだなって、つい笑っちゃった。


「父は、相変わらずですよ。母も、毎日、生き生きしてます」


お祖母さんは、ニコニコして、何度も「よかった」って頷いてた。




お腹いっぱいになって、片付けようとしたら、おばさんから止められた。


「ここはいいから、郁弥の部屋でも行ってなさい。
 おじさんの相手して、疲れちゃったでしょ?」

「いえ、お話していただいて、嬉しかったです。
 父は、昔のことは、あまり話したがらないから」


うん、実は犬が怖かったなんて、俺、知らなかったしさ。
帰ってきたら、犬飼いたいって言ってみようかな。

んー、正月から機嫌が悪くなるのもマズイから、それはいつかのお楽しみにとっておこう。




イクヤの部屋は二階。かなり狭い。
ドアを開けて入ろうとして、久しぶりに頭ぶつけちゃった。


「あ、痛っ」

「大丈夫?!」


ぶつけたとこさすってくれようとするけど、身長差がすごいから、背伸びしても届かない。
仕草がいちいち可愛くて、ガマンしきれずに笑っちゃった。


「心配してんのに、何笑ってるんだよ!」

「ゴメンゴメン。そんなに勢いついてなかったから、大丈夫だよ。
 久しぶりだったんで、油断してた」


今の自分ん家だけじゃない、同じマンションのカンの家、同じくらい身長が高いロウの家。
インターでも天井は高いから、あんまり気にしてなかったんだよね。

ぶつけるのは、対バンやったハコの楽屋とかで、ここんとこずっと演ってなかったし。



デスク用チェアを勧められて座ると、イクヤはインスタントコーヒーを淹れてくれた。
自分は、ベッドに座って、こっちを見てる。

何か言いたそうだけど、たぶん、親父のこと聞きたいんだろうな。



スマホで、親父たちの画像を呼び出して、イクヤに見せた。
親父とキャシー、珍しく親父が笑ってる画像。


「滅多に笑わないんだけどね、親父」

「笑ってるとカイに似てる!」


さっき、おじさんにも言われたけど、見た目が親父に似てるって言われるのは珍しい。
自分でも認めてるのは、耳の形だけなんだけどさ。

肌の色と薄茶の瞳は、キャシー譲り。
俺の遺伝子は、アジア系アフリカ系だけじゃなく、どっかでヨーロッパも混ざってるらしくてさ。

純日本人じゃないのは、はっきりわかるけど、じゃあ、どこの国の人間かとは、よくわからない。
そこら辺も中途半端で、コンプレックスだったんだよね。




「カイもギター弾くの?」


ああ、やっぱり聞かれるよね。

バレた時に、それは説明しなきゃって思ってた。
ジンたちには適当に言えても、イクヤにはちゃんと話しておきたかったし。


「あのさ、説明する前に約束してほしいんだ。
 俺の話聞いても、変に同情とかしないでくれる?」


言い方が唐突だったかな。
イクヤは不思議そうな顔したけど、黙って頷いた。


そして、俺が、どれだけどっぷり音楽にハマってたか、や。

原因不明の麻痺で、まともに弾けなくなってしまったこと。

たくさん考えて、完全には諦めないけど、普通に大学行く決心をしたこと。


なるべく冷静に、ゆっくり説明した。


話してる間、イクヤはずっと真剣な顔で聞いてた。

俺が、現状を受け入れて、期限を区切った辺りで、泣きそうな顔をした。
それでも、最初に約束したせいか、変な慰めは言わなかった。




「そっかぁ。うん、俺、応援するよ!
 同情はしない。俺だって、いつ何が起こるかわかんないしさ。
 でも、可能性はゼロじゃないって、カイの前向きな考えは、すっごく共感できる!」

「大学は保険みたいで、ちょっと情けないけどね」

「保険、大事だよ。危機管理できなきゃ、将来困るじゃん!」

「うん、合格できるかはわかんないんだから、何様だよって話だけどさ」


自分で喋りながら、上からかなーって思ったら笑えてきて。
イクヤも、一緒に笑ってくれた。



「俺はね、留学したかったんだけど、お兄ちゃんに先越されちゃったんだ」


俺が自分の話をしたからか、イクヤも進路を決めた経緯を話してくれた。


イクヤは、ロウと同じで国際公務員志望なこと。
大学は海外に行こうと思ってたこと。
二歳上のお兄さんが、高校の交換留学がきっかけで、アメリカの大学進学を希望したこと。
二人ともを海外へ出すのは、お母さんが反対してること。
お兄さんと話し合って、自分は大学は日本、大学院は海外って決めたこと。


「お兄ちゃんは、就職は日本でって希望してるからさ。
 それなら、お母さんも淋しくならないでしょ?
 奨学金取れないと、経済的にも厳しいしね」


やっぱり、俺って恵まれてるよな。
金の心配しなくていいってだけで、全然違うよね。


「ちゃんと話し合って決めたから、お兄ちゃんが羨ましいとは思わない。
 それに、おかげでカイとも友達になれたしね。
 俺って、すっごくラッキーだと思ってる」


ニコニコして、そう言ってるイクヤは、ほんとに可愛くてさ。

可愛いだけじゃなくて、強くて大人なんだなって、感心したんだ。



これで、後はゲイだってカムアウトするかどうかだけ。

でも、さすがに、それはもう少し慎重に考えないとね。
大学に入ってからだって、遅くないと思う。

偏見はなさそうだけど、可愛いなって思ってるのバレちゃってるしさ。
そーゆー意味はないんだけど、誤解されてもしかたない。


せっかくできた友達なんだ。
自分のうっかりで失くすのは、哀しいよね。











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