「Happiness!」
ところかまわず

ところかまわず 7

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朝、九時にアラームが鳴って、目が覚めた。
ちょっとボーッとした頭を、熱いシャワーでハッキリさせる。

網でモチを焼いて、チーズと海苔で巻いた。
雑煮より、こっちの方が好きなんだよね。

温めたモチ抜き雑煮とお煮しめをよそって、重箱をダイニングテーブルに広げた。
数の子とブリの照り焼き、黒豆、栗きんとん。
好きなのを皿に取って、さっさと重箱は片付ける。


あー、幸せ!


仲間内で、俺だけなんだよね。正月料理が好きなのって。

好きじゃないのは、カンだけじゃないんだ。
コウセイもあまり食べないから、スーは作らない。
ロウん家も、全員が好きじゃないって、作らない。
リョーコは作るけど、リンは黒豆と栗きんとんしか食べない。

うちは、ばーちゃんがずっと作ってたし、親父がブリの照り焼きとか数の子が好きだ。
キャシーは、親父のために、一生懸命にばーちゃんから習って、ほとんどは作る。
買うのは伊達巻くらいじゃないかな。

性格は似なかったけど、好きなものは似ちゃったんだよね。

キャシーに指摘されるまで、気づかなかったけどさ。



ゆっくり味わって、キャシーに感謝。
後片付けをしたら、もうそろそろかな。

歯磨きをして、着替えて。

いざ、出発って外へ出たら、なんかワクワクしてきた。


初詣は、初めてじゃない。
ばーちゃんが生きてた時は、連れてってもらってた。
キャシーとばーちゃんと三人で、昔、住んでた家の近所の神社に。

二人に手を繋いでもらって、神社の階段を上がったら、近所の人がたくさんいてさ。
よくわかんないままに、「あけましておめでとうございます」って挨拶したら、お菓子とかお年玉くれたんだ。

ばーちゃんは顔が広くて、面倒見がよかったから、近所でも人気者だった。
キャシーも、そんなばーちゃんが大好きだったから、ヨメシュウトメ?の争いもなかった。
近所の人も、ばーちゃんが認めてるから、キャシーをすぐに受け入れてくれた。

もちろん、キャシーが、日本語や習慣を一生懸命に覚えようとしてたのも、大きいけどね。





インターの最寄り駅のひとつ手前が、待ち合わせの駅。

改札を出たら、真っ青なベンチコートを着た、イクヤが先に来てた。
俺に気がついて、ニコニコ顔で、ブンブン手を振ってる。


「あけましておめでとう」

「あけおめー!ことよろー!」


不思議だね、昨日も会ったのに。
年が明けたからか、予備校じゃないとこで会ったからか、すごく新鮮。


「やっぱ、カイは目立つから楽だね」

「イクヤこそ、そのコート着てると目立ってるよ」


うん、足首まである、鮮やかな青いコートは予備校でも目立ってた。
寒いのが苦手で、できるだけ温かくて軽いヤツを探したら、それになったらしいけど。


「俺、チビだからさ。このくらいしないと見つけてもらえないじゃん!」


本人は自覚がないみたいだけど、すごく目立つよ。
こんなに可愛い顔してるのは、女の子にもなかなかいないと思うし。

それ言うと怒っちゃうだろうから、言わないでおくけどさ。


「んじゃ、こっちね」


イクヤが歩き出したから、隣に並んだ。
せっかちなカンとは違うから、ペースを落として合わせないとね。

ニコニコと喋ってるの見てると、話はよくわからなくても、俺までニコニコしたくなる。


「学校とは、駅の反対側でさ。俺ん家は、神社の方が近いんだ」


ああ、自転車通学だったっけ。
予備校まで電車に乗るのが、楽しみなんだよね。




歩いていくうちに、なんとなく、見覚えのある町並みになってきた。

......あれ?

ここら辺って、ばーちゃんと一緒に住んでた家があったとこじゃない?



「あ!」


神社が見えてきて、思わず声が出た。
ここって、ばーちゃんと初詣に来てたとこだ!!


「どうしたの?」

「俺、ちっちゃい頃、ここに初詣に来てた!ばーちゃんと一緒に!!」

「えー?!」


イクヤもすごく驚いててさ。

ばーちゃんが死んで引っ越したのは、俺がまだキンダーの時。
すごく遠いとこに引っ越したと思ってたけど、こんなに近かったんだ。


「ああ、じゃあ、俺たち、入れ違いに引っ越したんだ」


俺が説明すると、イクヤが教えてくれた。
お祖母さんと、一緒に住むって引っ越したのが、小学校に入る直前。

小学校は公立で、中学から今の学校。
俺は、キンダーからずっとインターだから、完全にすれ違い。


偶然に驚きながら、鳥居をくぐった。


ぼんやりとだけど、思い出した。
昔、ばーちゃんにやってもらったように、柄杓で水を汲む。

まず、手を清めるんだったよな。

水の冷たさで、身が引き締まる。

イクヤの手にもかけてやると、嬉しそうに「ありがと」って。
手に水を受けて、口をすすいで、イクヤにも水を注ぐ。


「俺なんかより、ばっちり決まってる!」


変な感心の仕方されたけど、からかってるわけでもなさそう。


まずは、合格祈願なんだろうけど、祈りながら最初に浮かんだのは、手のこと。

手の麻痺が治るんだったら、大学落ちても文句言いませんって、つい考えちゃった。
天神様、ごめんなさい。


まだ一年あるから、絵馬はいいよねって、お守りだけ買って、神社を後にした。




ずんずんと歩いてくイクヤについてって、どんどん見覚えのある場所に来た。

下町って感じの町並みで、イクヤの家は古い一戸建て。
ばーちゃんの家があったところは、一区画手前で、更地になってた。

ちょっとだけ、がっかりしたけど、全然、思い出しもしなかったんだから、しかたないよね。



「ただいまー!」


元気よく玄関を開けて、イクヤが家に入ってく。
後ろについてって、忘れないように、デイパックからお年賀を取り出した。

うん、気をつけてたから、紙袋もクシャクシャになってない。


「おかえりなさい」


出迎えてくれたのは、お母さんかな。イクヤにそっくり!
あ、ちゃんとご挨拶しないとね。


「あけましておめでとうございます。石田海といいます。
 今日は、お招きありがとうございます。これ、母からです」


頭を下げて、お年賀を渡したら、おばさんはびっくりしてる。


「あらー、郁弥より、ずーっとしっかりしてるわ」


そう言って、ちょっと間が空いたけど、「上がって」って言ってもらえた。
お邪魔しますって、上がり込んで、二人の後に続く。

外から見ても似てると思ったけど、中もばーちゃん家にそっくりで、嬉しくなった。


畳の部屋へ通された。
真四角じゃない、長方形のコタツがあって、お祖母さんとお父さんが座ってる。

おじさんは、もうお酒が入ってるのか、ニコニコ明るく話しかけてくれた。


うちと違って、おばさんもおじさんも、よく喋る。でも、イヤじゃない。
イクヤがとても明るいのがわかる気がした。

自分から話さなくても、ガンガン、質問されるから、答えてるだけで間が保つのも助かった。

話していくうちに、黙って聞いてたお祖母さんが、急に話しかけてきた。


「あんた、石田さんとこのお孫さんかい?優ちゃんの息子さん?」

「え、優児の息子?!」


おじさんがすごく驚いてる。

いや、俺も驚いたんだけどさ。
よく考えたら、親父はあの家で育ったんだから、知り合いがいてもおかしくないよね。


イクヤにどう説明しようかなぁって、悩みながら、お祖母さんに「ハイ」って返事した。











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