「Happiness!」
ところかまわず

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『正月、どうすんだよ?』


カンから、久しぶりにメッセが来た。

ロウの行ってる大学を第一希望にするってメッセして以来、大学の話は一切してこなかった。
休みの間、予備校に行くのは、キャシーからスーに話してるはずだから、知ってると思う。
家に来いとか、来るとか、そんな誘いもなかったしね。

タイムリミットは近づいてくる。

ロウとカオルの距離も、離れることはなさそう。

さすがにマイペースのカンでも、現実にぶち当たって、悩んでるかもしれない。




『予備校は一日だけ休み。友達と初詣に行く約束した』


そう返信したら、既読はついたけど、そのまま。

淋しいんだろうな、そうは思ったけど、初詣には誘えない。
まぁ、誘っても来ないのは、わかりきってるしね。

インターでさえ、他に友達いないのに、イクヤと一緒に過ごせるわけない。
イクヤに気を遣わせるだけで終わるのは、簡単に予想できるし、俺も疲れる。


どうしてるのか、気にはなったけど、曲作ったり、楽器弄ったりしてんじゃないかなって。
なるべく考えないようにして、大晦日まで過ごした。





大晦日は、午前中だけで終わり。
イクヤと、ランチにハンバーガー食べながら、翌日の待ち合わせ時間と場所を決めて、サヨナラ。


帰ると、ちょうどキャシーが出るところだった。


「お煮しめは鍋にたっぷりあるし、お雑煮用のお汁もあるわ。
 お蕎麦が食べたかったら、乾麺を茹でてね。
 他のものは、重箱に詰めてあるから、起きたら適当に食べなさい」


やったね、ジジ臭いって言われるけど、俺、お煮しめ大好きなんだ。
特に、味の染みた鶏肉や椎茸が、すっごく好き。

喜んでたら、キャシーが紙袋とお年玉をくれた。


「これ持っていくの、忘れないでね。きちんとご挨拶するのよ。
 お年玉は、今年は多めにしておいたけど、無駄遣いしちゃダメ」


紙袋の中身は、いつもは買わない、ちょっと高めのケーキ屋の箱。
たぶん、クッキーなんかの詰め合わせかな。


「うん、ありがと。キャシーも楽しんできてね。親父によろしく」


軽いハグとキスを合図に、キャシーは出ていった。
ミドルの頃までは、すごく淋しかったの、思い出した。




キンダーまでは、キャシーたちも、年越しを一緒に過ごしてた。
ジュニアに上がってからは、順番に誰かの家に、四人で集まってた。

カレンとリョーコは心配してたけど、キャシーとスーが説得して、当番制が始まった。

ちょうどトーイが抜けて、親父たちが独立した年からだ。

今ならわかる。
親父たちが正念場だったから、そばでサポートしたかったんだろうなって。

もう、ばーちゃんも死んじゃってたしさ。


元の路線に戻して、売れるかどうか。
いくら自信家の親父でも、不安だったと思う。

でも、リーダーだからって、気張ってたよね。
コウセイたちは長いつきあいで、そんな親父のことわかってるから、黙ってフォローしてた。
ガキなりに、親父たちを見て、キャシーたちが喋ってるのを聞いて、ぼんやりとだけど理解した。

だから、淋しくてもガマンしなきゃって、思えたんだよね。
ひとりじゃなかったし、みんながガマンできてるのに、俺だけワガママ言えないしさ。





お煮しめだけは、もう食べていいことにして、蕎麦を茹でた。
エビと小柱のかき揚げも用意してくれてて、単純な俺は、それだけでハッピーな気分。

リビングのローテーブルに、かき揚げ蕎麦大盛りとお煮しめ皿一杯。
テレビはつけっぱなしで、今年最後のディナーを楽しんでたら、インターホンが鳴った。

エントランスやエレベーターホール前からじゃないってことは......カンだ。

インターホンには答えずに、玄関に行ってドアを開けた。


「晩メシ、一緒に食おうぜ。俺の分は持ってきた」

「ああ、入って。今、食べ始めたとこ」


何も連絡なしに来るなんて、よっぽど淋しかったのかな。
誘ってあげればよかったかな。

カンは、リビング見て笑ってて、自分の分をテーブルに置いた。
スーがデリを頼んでたんだろう、ピザとチキンにフレンチフライ。

本当に、俺とは真逆なんだよね。
お節も蕎麦も好きじゃないんだもん。




「キャシーもユージもいないから、テレビ点けてんだな」


俺がひとりで好き勝手やってるのに、すぐ気づいて笑ってる。

ああ、悔しいけど、やっぱり、笑うと可愛いよな。


「今日、泊まってってもいいか?」

「ああ、いいよ。明日は、十一時過ぎには出発するけどね」


機嫌が悪くなるかと思ったけど、「ん」って頷いて、食べ続けてる。
以前なら、カンのペースに合わせるのが当たり前だった。

俺たちの関係は、大きく変わったんだなって、実感した。


「なぁ、友達って、どんなヤツ?」


こんなこと聞いてくるのも、以前のカンなら考えられなかったな。


「インターの隣駅近くに、進学校あるだろ?あそこの二年生。
 志望大学が同じなんだよ」


大学の話はマズかったかなと思ったけど、そのまま流した。
スマホ取り出して、ジンやタカシと四人で撮った画像を呼び出す。


「三人が同じ学校でさ。このイクヤってヤツと初詣行くんだ」

「綺麗な顔してんな」


俺が説明した後に、ボソッとそれだけ言う。
ただの感想なのか、何か意味があるのか、よくわかんないけど、また流す。


だって、ただの友達に綺麗かどうかなんか、関係ないよ。
綺麗って言うんなら、インターにだっているんだしさ。


「明るくて優しい性格してるんだ。わかんないとこ教えてくれて、助かってる」

「ふーん」


もう、これ以上は聞きたくないって時の、カンの態度。
自分から聞いてきた癖に、そーゆーとこは相変わらずだよね。




食べ終わって、後片付けしてたら、カンが隣に来た。


「お前も遠くに行っちまうんだな」

「は?」


思わず、聞き返しちゃったよ、俺。
言ってる意味、わかんないってばさ。


「俺、音楽、まだ諦めないって言ったよね?
 諦めない間は、俺の曲はカンが歌うって、大前提じゃないの?
 今だって、すぐ隣にいるのに、何言ってるのさ」


俺のこと、ステディにするつもりはないくせに、俺が世界を大きくするのはダメなわけ?

それって、自分勝手過ぎない?


俺がムッとしたのがわかったのか、カンが「悪い」って謝った。

気まずい空気が流れて、帰るかと思ったけど。
冷蔵庫からコーラ出して、またリビングに戻ってった。


その後は、眠くなるまで、ボーッとライブDVD見て過ごした。

お互い、何も喋らなかったけど、以前とは違って、なんかもやもやした。



年が変わった瞬間、習慣になってるんだろうな、お互いに「Happy new year」って言い合って。
つい笑ったら、カンも笑っちゃって、さっきのもやもやは、うやむやになっちゃった。


「俺の部屋に、布団敷くよ。シャワーは朝でいいね?」


うん、前みたいに俺のベッドで一緒には、俺が無理だ。
布団がイヤなら、俺が布団に寝ればいい。


「いや、帰るわ。つきあってくれて、ありがとな」


カンが殊勝な言葉を吐いて、自分ん家に帰ってった。

淋しそうな背中に、何も言ってはあげられなかった。

ここで声をかけちゃったら、またカンのペース。
そう思っちゃったんだよね、卑怯かもしれないけど。

俺、これ以上は傷つきたくないんだよ、ゴメン。












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