「Happiness!」
ところかまわず

ところかまわず 5

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イクヤのおかげで、冬休みの予備校通いは、楽しくて充実したものになった。

普通の高校生が、どんな生活をしてるのか、どんなモノが流行りなのか。
リンやハルと、ほとんど連絡取らなくなってたから、全然知らないんだよね。

授業の日本語がわかんない時は、メモって、休み時間に質問すると丁寧に教えてくれる。
逆に、同じ大学を志望してるから、英語での授業ってどんなものか説明したりしてさ。

イクヤと同じ高校のヤツも何人か来てて、一緒に帰りにハンバーガー食べたりもした。

やっぱり、俺の見た目でびびってたらしくて、仲良くなった後に謝ってきた。


『よく考えたら、予備校に来てるんだから、日本語わかるはずなのに、敬遠してゴメン』


恥ずかしそうに謝ってきた、敬ータカシーや、仁ージンーとも、アドレス交換した。
四人で、グループメッセ作って、予備校のことや好きな音楽の情報交換。


初めて、日本人の友達とつるんでみて、よくわかった。
確かに、空気読めないとすぐに浮くし、インターの友達に比べれば、精神的にちょっと幼いかもしれない。
それと、意見が違うからって、とことん話し合うってことは、イクヤ以外とは無理だ。

イクヤに前もって注意されてたから、じっと観察してみたけど。
インターみたいに「人は人」って感覚が、理解しづらいっぽい。

タカシとジンはマシな方らしいけど、それでも違和感があったから、イクヤと友達になったのは、本当にラッキーだった。


親父がユージだってことは、イクヤにもまだ話してない。
悪いと思ったけど、もう少し仲良くなってからにしようと思ったんだ。

ハルやリンは、行った学校が学校だから、親が芸能人なのは珍しくない。
でも、イクヤたちは、いわゆる普通の会社員家庭って感じだから、理解してもらうのは難しいかもってさ。




まだ本番まで一年以上あるから、いくら予備校でも、元日だけは授業なし。

イクヤが、初詣に誘ってきた。


「宗教上のタブーに触れないなら、一緒に行かない?
 小さいけど、近所に天満宮があるんだ」



キャシーたちの年越し当番は、もう今年からやらない。
ロウはカオルと別のカウントダウンライブへ行くし、リンはリョーコと一緒に過ごす。
キャシーとスーは、今まで通り、ライブに行くけど、俺とカンは、さすがにもう留守番できるだろって。

好きなお節は、作っておいてくれるらしいから、別に問題なし。
年越しそばは、カップ麺で充分だしね。



「テンマングウ?ああ、学問の神様だっけ」

「うん、俺たちの志望校は、キリスト教の大学だけどね。
 ま、それが日本のいいとこでしょ?」


思わず吹き出しちゃったよ、俺。
本当に、イクヤといると楽しくて、いつも笑ってるんだよね。


「確かにね。お袋も、日本のそーゆーとこが楽で好きだって」

「カイのお母さんって、頭が柔らかそうだよね。お会いしてみたいなぁ。
 今度、遊びに行ってもいい?」


キラキラした顔で言われて、ちょっとだけ、迷った。

キャシーは大歓迎してくれると思う。
もうイクヤの話はしてるし。

でも、俺ん家に来れば、親父のことは絶対にバレるよね。

ああ、それで引いちゃったら仕方ないか。
それだけの縁ってことだろうしさ。



「うん、講習最後の日は...あ、タカシたちと打ち上げか。
 翌日の日曜なら、親父はいないから、気も遣わなくていいな。
 お袋に話しておくから、昼御飯、一緒に食べよう」

「やったね!あ、初詣終わったら、俺ん家に寄ってってよ。
 親には話してあるし、うちのお節も食べてみて!」

「え、いいの?元日って、親戚とか来るんじゃないの?」


ばーちゃんが言ってたもんな。

元日は、家族や親戚だけで過ごすもんだって。
俺ん家は、親父の仕事が仕事だから、しかたないけどってさ。



「うち、お父さんの方のお祖母ちゃんが一緒に住んでるけど、お母さんの方はもう亡くなってる。
 叔父さんや叔母さんはいるけど、ほとんど会ったことないんだ。
 だから、いつも元日は家族五人だけ。
 今年は、お兄ちゃんが帰ってこないし、お母さん、淋しがってたからさ。
 カイのこと話したら、連れてきなさいって、張り切ってた!」


お兄さん、ステイツに留学してるんだったっけ。
だったら、俺が行っても、びっくりされないかな。


「じゃあ、喜んで行かせてもらうね。嬉しいよ」


俺が返事したら、すっごく喜んでくれてさ。
どうしてこんなに喜んでくれるのか、理由はわかんない。
イクヤの笑顔を見てると、俺までニコニコしてくるんだ。


自分の考えはしっかり持ってるし、明るくてハキハキしてる。
でも、一緒にいて疲れないのは、俺のペースを考えてくれてるからだと思う。

同い年なのに、俺よりずっと大人なんだろうな。
ちゃんと気遣いができてるってこと。





「ただいま」


家に帰ると、親父はいなくて、キャシーが晩御飯を用意してくれてた。

着替えて、手洗いうがいを済ませて、ダイニングに行くと、珍しくTVがついてる。
驚いてキャシーを見ると、軽くウインクされた。

ああ、今年出したアルバムが受賞したって、ネットで見たっけ。
テレビ嫌いの親父たちが、生で演奏できるならって、条件付きで出演するんだった。


「やっぱり、ユージは、世界一カッコいいわ!」


キラキラしたアイドルや若いミュージシャンの中で、一組だけムサいオジサンたち。
他の人からしたら、そうとしか見えないかもだけど、俺もキャシーに賛成。


ちょっと悔しいけど、やっぱりカッコいいんだよね、四人とも。
俺より背は低いんだけど、日本人にしては背が高くて足も長い。

親父とゴウは、ヒゲにロン毛のワイルド系。
コウセイとサムは、ヒゲなしで短めの髪、耳にはピアスが光ってる。
化粧はしてないけど、ビジュアル系でも通るんじゃない?、って感じ。

そんな四人は、業界でも一目置かれるテクの持ち主で、若いミュージシャンにも尊敬されてる、らしい。

らしい、ってのは、手が麻痺するまで、全然、知らなかったから。
日本の音楽雑誌や、ネットで検索した日本語の音楽サイトを読むようになって、初めて知ったんだよね。

それまでは、ずっと比較対象は、アメリカやイギリスのミュージシャンだった。
SMSは、タイプが全然違うから、比べることもなかった。




「あのさ、元日にイクヤと初詣に行って、帰りに家に寄る約束した。
 それとさ、家に招待したいんだけど」


親父たちの出番は、まだ先みたいだったから、キャシーに切り出した。
予想通りに、大喜びしてる。


「お友達と初詣!いいじゃない、行ってきなさい。
 ああ、用意しておくから、イクヤのお家には「お年賀」持っていくのよ」


オネンガ??


「ホームパーティに招待されたら、お菓子やお料理持っていくでしょ?
 お正月に日本人のお家に行く時は、お年賀って言うの。
 向こうも、いきなり手作りはイヤだろうから、何か買っておくわ」


ああ、時期によって呼び方が変わるのかぁ。
そんなことまで知ってるって、どこまで日本文化を勉強したんだろう。

感心していると、親父たちの出番がやってきた。
これ以上は話しかけると、キャシーがご機嫌斜めになっちゃうかな。



画面の中の親父は、いつもの仏頂面。
機嫌が悪い訳じゃなくて、これがデフォルト。

ライブの時と同じように、コウセイとサムが挨拶して、MCと話してる。

さっさと済ませて帰りたいんだろうな。
親父の顔を見てると、笑いがこみ上げてきて。

これで声出すと、キャシーが本気で怒っちゃうから、ガマンガマン。


親父たちのプレイが、やっと始まった。

しみじみと、巧いと思う。

少し前までなら、見たくも聴きたくもなかったのに、冷静になってる自分に驚いた。


そう思えるようになったのは、今が楽しいからなんだろう。
イクヤに感謝しないとね。




親父たちのプレイが終わって、後片付け。
キャシーのスマホに、親父からメッセが入る。


『後一時間で帰る。何か食いもんはあるか?』

『ちゃんと用意してあるわよ』


返信してるのを覗き込むと、事務的な文章なのに、ラブラブが溢れてる。
出会ってから、二十年以上経つのに、すごいよね。

自分の親だから、照れくさいんだけど、そんなこと言うと二人に叱られるかな。

いつか、俺もそんなパートナーを見つけられたらいいなぁ。
可能性はゼロじゃないよね?

うん、そうでも思わなきゃ、やってらんないしさ。











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