FC2ブログ

「Blue Sky,True Mind」
秋桜、揺れる

秋桜、揺れる 6  翼

 ←秋桜、揺れる 5  和哉 →秋桜、揺れる 7  翼

「はじめまして、西山翼です」


瑛士さんに言われたバーへ行ったら、個室に案内された。

俺、瑛士さんと最初に会ったバーしか知らないけど、ここもそうだよなって。
だって、客も店員も男ばっかで、何っつーか、雰囲気が同じだったんだ。
んで、個室には、おっさんって言うには、まだ若い感じの男が二人いた。


「原田修や。瑛士とはサークルの先輩後輩で同類」

「同じく、北川聡志だよ。修とは違う大学に勤務してるんだ」


挨拶すると、すっげニコニコして返してくれんだけど、この人ら一体何者?
瑛士さんより若く見えるし、先輩って感じしねぇんだ。


「瑛士はリーマンやってるからなぁ。
 きっちりスーツ着て仕事してる分、俺らよりしっかりして見えるやろ」

「そうだね。定職に就いたのも、瑛士の方が早い。
 社会人としては、あいつの方が先輩になるな」


あ、名刺に「聖光大学 准教授」って書いてあったっけ。
つーことは、大学院?とか行ってたってことかぁ。

いやいやいや、そんなことより、今、俺が考えたこと、バレバレだったよな?
初対面なのに、そんなに簡単に読めるわけ?
瑛士さんでさえ、最初のうちはよくわかってなかったのに。



それにしても、この人らカッコいいよなぁ。
もちろん、瑛士さんが俺には一番だけどさ。
俺はブランドとかよくわかんねぇけど、着てるもんとかも上等な感じする。
で、若作りに見えねーの。自然に、若く見えるんだ。
瑛士さんもそうだったけど、無理してないって感じ。
デブでもハゲでもないのもデカいよな。


さっきドア開けてくれた、関西弁の人が、原田さんか。
瑛士さんより、もっと背が高いし、顔が小さくて足も長い。
顔の作りも、面長で鼻筋は通ってっし、目は少し釣ってる切れ長二重。
ちょい軽い感じするけど、瑛士さんがあれだけ信頼してる人だ。
只者じゃないんだろうな。

北川さんは、座ってっからわかりにくいけど、原田さんよりは背が低いよな。
でも、顔の大きさや座高から考えても、スタイルは良さそう。
顔は、目は一重だけど大きめで垂れてる。鼻は細くて高い。
誰だっけかなぁ、誰かに似てるんだけど、思い出せねぇ。



「やっぱ、瑛士は面食いやなぁ。ここまで綺麗な子ぉやとは思わんかった」


関西弁で喋るから、親しみやすい感じするけどさ。
二人とも、俺のこと観察してんだろうなぁ。

瑛士さんも大企業勤務のエリートだけど、この二人は大学のセンセだもんな。
俺とは、全然違う世界に生きてる。いや、世界どころか次元が違うだろ。
瑛士さんの仕事の話は、わかりやすく話してくれたからだけど、なんとなくわかった。
でも、この人らの仕事のことなんか、絶対にわかんねぇ自信がある。


「お腹空いてるでしょ。食べながらでいいよ」

北川さんが勧めてくれたのは、バーなのに雑炊。
出汁の香りが美味そうで、腹の虫が鳴いて恥ずかしかった。

でも、なんで雑炊なんだろな。
今の俺にはありがたいけどさ。

昼に牛丼食ったら、並なのに全部食べきれなくて、残しちまったんだ。
この三日間で、バタバタいろんなことやって、頭に血が昇ってた。
それが、新幹線の中で落ち着いたら、いつもの体力のなさが胃に来ちまったらしい。



渡された雑炊を、ゆっくりと食べる。
急いだ方がいいんだろうけど、また胃の調子が悪くなるのはマズい。
これから、新しい生活始めんのに、体調崩してたら動けなくなるじゃん。


「瑛士が自慢してた通りやな。笙が言うてたのとは、だいぶ印象違うけど」

「自慢...ですか?」

「ああ、出張でこっちきた時に、三人で飲んでな。君のこと、惚気てたわ。
 見た目だけじゃなくて、食べ方や言葉遣い、中身まで綺麗なんやって」


それ聞いて、もう泣かないって決めてたのに、涙出そうになって焦った。
俺のこと、そんなに褒めてくれてたなんて、思ってもみなかった。
つい、癖でニコニコしたら、北川さんが哀しそうな顔になった。


「無理しなくていいよ。少なくとも、俺たちは味方。
 あの瑛士が、泣きながら頼んできたんだから、知らん顔なんかできないよ」


味方...その言葉がずんと来て、我慢できずに泣いちまった。
ニコニコしてんのが無理してるって、バレちまってたのも情けなくて。
冷静な瑛士さんが、泣きながら頼んでくれたってのも、嬉しくてしかたなかったし。
初対面なのに悪いと思ったけど、少し泣かせてもらった。


俺、明後日で二十四になるのに、ガキだなぁ。



「で、今、一番必要なことは何や?」


食べ終わった後に、原田さんに聞かれて、即座に浮かんだのは、免許の更新。
ただ、すぐに引っ越すのはマズい気がしてきたんだよな。
ババァが万が一にでも、興信所とか使って調べたら、また引っ越す羽目になる。
そんな金はないとは思うけど、あの女ならやりかねないって気もする。

しばらくは、ネカフェをハシゴして、ほとぼり冷めんの待つ方がいいかもな。


もう、こうなったら、正直に話してしまえ。
瑛士さんが、あれだけ信頼してる人たちだ。
話したからって、悪い方には転ばねぇだろ。



親父とお袋のこと。
ババァに虐待されて、死にかけたこと。
中学出てすぐに働いて、給料全部取られてたこと。
二十歳になった直後に親父が死んで、逃げ出したこと。
逃げ出した先で、瑛士さんと出会ったこと。
本当に本当に大事にしてもらって、大好きなこと。
ババァが会社に怒鳴りこんできたこと。
会社にも瑛士さんにも迷惑になるから、ここまで逃げてきたこと。


全部、喋った後に、頭下げて頼んだ。


「すみませんが、住むとこが見つかるまで、住民票置かせてもらえませんか。
 免許の更新しないといけないんですが、住所不定だとできないんです」


原田さんは眉間に皺を寄せて、北川さんは哀しそうな顔で、真剣に話を聞いてくれた。
二人が顔を見合わせて、頷いてる。

「住民票置くだけじゃなくて、うちに居候しててもいいよ。
 セキュリティ万全だし、さすがに、俺たちの勤務先で騒ぐ根性はないでしょ。
 もし、騒がれても、スルーできるしね」

「そこまでは、迷惑かけらんないです。住民票だけでも、申し訳ないのに。
 それに、俺、強くなりたいんです。なるべく人に頼らずに頑張ってみたいんで」

いい子ちゃんの意見だけど、これは本音だ。
強くなんないと、ババァのことだけじゃねぇ、これから先、生きてけない気がするんだ。



「笙が心配してたけど、そんだけの覚悟があるんなら、大丈夫そうやな。
 明日は暇やから、一緒に区役所行こうか」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


頭下げた後、「笙が心配してた」って言葉が頭に残った。
大阪で会った人のことだよな。
確か、この人の弟分の妹分だっけ。
ややこしくて、紙ナプキンに書いたのを思い出した。


「俺、心配されてたんですか」

「ああ、笙が言うてたんや。

 『瑛士さんが全開で甘やかしてる感じやけど、相手の子はおどおどして不安そうやった』
 
 ってな。あいつ、人間観察が特技やからな。
 でも、今の翼は、おどおども不安そうにもしてへんやんか。
 瑛士と別れて、こっちに出てくることで、肚括ったんちゃうか」


原田さんは、俺が変わったこともその理由も、瑛士さんと俺の話だけで気がついた。
隣で頷いてるってことは、北川さんも同じなんだろう。


「男だもんね。女の子みたいに、ただ守られたいわけじゃない。
 瑛士のこと考えて、答えを出したんでしょ。
 俺たちは、その覚悟を尊重するし、できる限りの協力はする。
 それが、味方になるってことだからさ」


ありがたいなぁって、素直に思えた。
それは、瑛士さんの信頼する人だからってだけじゃなくて...。
よくわかんねーけど、俺の痛みをわかってくれる、そんな気がしたんだ。


だから、余計に迷惑はかけらんない、そう強く思った。
免許の更新が終わって、瑛士さんに迷惑がかかってないか確認したら、すぐにアパート探そう。
俺みたいな底辺が、書類の上だけでも同居人だなんて、申し訳ないしさ。




瑛士さん、ありがとう。
ほんっと、ありがと。
こんないい人たちと会わせてくれて。
やっぱ、瑛士さんは、俺の一番の恩人だ。



ただ、俺のことは早く忘れて。
想いは、俺だけが抱えとくから。
重いなら、思い出もさっさと捨てていいよ。
俺、絶対に恨んだりしない。

瑛士さんの幸せに邪魔になるものは、ひとつでも少ない方がいい。
俺は、本気でそう思ってる。
大好きだから、そう思うんだ。


たくさんたくさんもらったのに、何も返せなくてごめんなさい。
迷惑かけないように逃げるしかできないって、情けないよね。

でも、いつか。
もし、会えるようになったら、頑張って恩返しする。
その時、何ができるのかは、わかんないけど。 











にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ 3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ 3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ 3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ 3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ 3kaku_s_L.png Time After Time
総もくじ 3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ  3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ  3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ  3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ  3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ  3kaku_s_L.png Time After Time
総もくじ  3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【秋桜、揺れる 5  和哉】へ
  • 【秋桜、揺れる 7  翼】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【秋桜、揺れる 5  和哉】へ
  • 【秋桜、揺れる 7  翼】へ