「Double Fantasy」
Mission 1

うさぎは淋しくても死なない 11

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「サイッチ、どうした?寝落ち?それとも、体調でも悪くなった?」


心配そうなRitiの声で、我に返った。
ショックが大き過ぎて、黙り込んでしまっていたようだ。

Ritiがログインしたことも気づいていなかった。
キーボードを操作しようとして、手が震えていることに気づく。


どうやら、俺のミッションを手伝う話になってたみたいだな。
当事者の俺が何も言わないから、みんな困ってたんだ。


「すみません、なんだか寒気がしてきて」

声が震えそうになるのを必死でこらえた。

「すぐに落ちて、ベッドに行きなさい。じゃないと除名するからね」

Ritiに強い口調で言われて、助かったと思った。


こんな状況でゲームなんてできるわけない。


「はい。じゃ、お先に失礼します」

「おやすみー」

「お大事にー」

「ゆっくり寝てね」

口々にメンバーが心配してくれたが、そんなことに気づく余裕もなかった。



ログアウトしてから、ベッドに座り込んだ。
いくら考えても、原因が思い当たらない。


最後の日も、普通に喋ってたよな。

あ......笙さんのこと見てたっけ。


でも、それと俺が何か関係ある?


笙さんなら何か知ってる?
研修終わってから、ずっとあの二人おかしかった。
何かあったんだろうけど、二人とも何も言わないし...。


いてもたってもいられず、及川にメールした。


『メールじゃ説明しづらいから、明日の夜にでも会えるかい?』

すぐに返信すると、時間と場所を指定された。
三人でよく通った、いつもの店だ。



頭の中は、困惑と驚きと落胆、そしてひどい混乱に支配され、熱暴走しだした。
何度も何度も、ここ最近の岡野との会話が再生される。




もしかして...あの時?

岡野の淋しそうな表情と言葉が蘇った。


『どうして、恋愛抜きでは、一番にはなれないんだろうな』


とっさに言っちゃったんだ、俺じゃダメですかって。
誤魔化したつもりだったけど、岡野さん、何か感づいた?

俺、恋愛抜きって言ったよな。
岡野さんも、脅かすなよって......。


でも、それしか思い浮かばない。

最後の日まで、俺には普通に話してた。
ログインできるようになったら連絡するって、言ってくれた。



......んなの、ありかよ。

気持ち悪いって言われる方が、まだマシだ。
フェードアウトでもないじゃん。
告ったわけでもないのに、バッサリ切り離して知らん顔ってさ。


吹野の時は完全にバレたし、気持ち悪いって言われたけど、気持ちに蹴りはついた。
でも、こんな切り方されたら、こっちは混乱して、どうしようもないじゃん。


DFやめてくならまだしも、原田さんだけ連れてサーバー移動する?
自分はゲームが楽しいからやめる気はない。
でも、俺とは関わりたくないから、別の場所へ行く。

そういうことかよ?

俺のこと誘っておいて、置いてけぼりくらわすのかよ。
あんた、そんなに酷いヤツだったんだ。


たかがゲームだとは言わせない。

あんただって、俺と同じでゲームにのめり込むオタクじゃん。

現実世界を見たくない時に逃げ込む、格好の逃げ場だよな。
コツコツ攻略していけば必ずクリアできる、現実では味わえない達成感。
努力してもダメなものはダメ、そんな厳しさは存在しない甘い世界。


人と関わりたくないなら、オフゲーでガマンしてろよ。
オンゲー始めてみて、一人じゃ無理だって、原田さんと俺を誘ったんだろ。
あのゲーム、クエストでもダンジョン攻略でも、一人じゃとても無理だもんな。
ギルドの人達が助けてくれたから、俺もなんとかやれてるんだし。


あのゲームのテーマって「絆」だっけ。


ハッ、何が絆だよ。

ヴァーチャルだけのつきあいならまだしも、会社の後輩だぜ?
そんな俺をぶった切って、たった二人で何するっていうんだよ。
ギルドだって、三人いないと作れないはずだろ。


ヴァーチャルでも人を寄せつけたくなかった。
だから、仲の良い後輩誘って、なんとかしたかったってことだよな。
原田さんだけじゃ足りない、そこに俺が異動してきて、ちょうどよかったわけか。


俺、また利用された?



少し頭が冷えてきた。

それでも、岡野に対する怒りと落胆は収まらない。
涙の一粒も出なかった。


せめて、メールでもいいから、一言欲しかった。
返信なしで電話にも出ないってさ。


卑怯じゃねーの?!


これから先、また同じ部署になったら、どーすんだよ?
何もなかったような顔して、一緒に仕事すんのかよ?
去年の今頃みたいに、距離置いて、仕事の話だけする。
そこまで巻き戻すつもりなのか。

俺、買いかぶってたのか?



でも、と今までを振り返り、怒りは少しずつ弱まっていく。


......岡野さんは、優しかった。

おせっかいを焼くわけじゃないけど、仕事でもゲームでも親切に教えてくれた。
飲みに連れて行ってくれて、いろんな話をして、たくさん笑った。
趣味が完全にかぶってたから、話題が尽きることがなかった。
あの楽しそうな笑顔に、嘘はなかったと思いたい。



とにかく、笙さんに話を聞いてみよう。
切られた事実は消えないにしても、少しでも納得したい。

じゃないと、この先、やってられない。


その夜は眠れずに、及川との約束の時間まで、感情の持って行き場を探し続けた。

ただ傷ついただけじゃない。

こんなに怒りと戸惑いがつきまとう、恋の終わりは初めてだったから。










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