「Double Fantasy」
Mission 1

うさぎは淋しくても死なない 8

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年末年始は実家で過ごした。
瑞樹は元旦を智也の実家で過ごし、二日は二人で実家で過ごす。
前もって瑞樹が母に頼んでおいたようで、智也の食事は最初から取り分けられている。

「すみません、ワガママ言いまして」

恐縮する智也に、父と母は「気にしない。いろんな人がいるんだから」と、にこやかに答えた。
智也が嬉しそうな顔で礼を言い、隣の瑞樹に頷いた。


うちの親って、ほんとに偏見ないんだよな。
俺達もそう育てられたけど、深く考えたことなかった。
どうしてそういう考え方ができるようになったのか、いつか聞いてみよう。



三日の夕方には帰ろうかな。
DFにインして挨拶したい。

そう考えている時点で、ゲームが生活の中心になっていることには、まだ気づいていない。
毎週のように実家に帰っていたのが、ゲーム開始からは、ほとんど帰らなくなってきた。
理由を知らない両親は、心配どころか、親離れしてきたと喜んでいる。


ギルドで年越しイベントやるって言ってたけど、瑞樹ちゃん達が来るし、まだ仮所属だから遠慮したんだよな。

どんなことやったんだろうな。
あそこって、ほんと和気あいあいで、すごく楽しい。
ログだけじゃなくて、声が聞こえるせいかな。
仲よく遊べる、でも現実世界では知らない人、っていう距離感がいい。

岡野さんと原田んさんが帰ってきたら、一緒に所属できるといいのにな。



いつも、年明けからはバタバタと時間が過ぎる。
特に、人事異動の内示が出ると、浮足立つ者が多くなる。

一月下旬、幹部人事と霞が関人事が発表になった。


回ってきたコピーを天野、及川と眺めて、三人とも絶句した。

情報管理室長 真鍋
システム第一係 係長 岡野
システム第二係 係長 原田


え...岡野さんと原田さん、本省行くの?
首席が室長ってことは、二人を引っ張ったってこと?


「首席、やってくれましたね」

及川が、呆れたように真鍋を見た。

「基幹システムの変更で、慣れてるヤツが欲しいんやと。
 俺かって、また単身赴任やねんから、岡野と原田にもガマンしてもらう」

「これ、研修所で岡野は聞いてるんですよね。どんな顔してるんやろ」


及川はそれ以上、話には加わらず、黙々と仕事をこなしている。


なーんか、最近、笙さんが変なんだよな。
二人で飲んでても、岡野さんの話はしないし、俺が振ってもすぐ流しちゃう。


「真鍋さんの後は、勝田さんか。経験者やし、いい人でよかったわ」

ああ、名古屋で会計課長補佐やってた人だ。
うん、あの人なら大丈夫。
課長が痛い人だった分、ずっとフォローしてたくらいだし。

首席が出るってことは、統括はまず残留決定。
笙さんも俺と同じで来たばかりだし、いなくなると仕事が回らないのは、首席もわかってるはず。
岡野さんの後に来る人がまともだったら、来年度も楽しくやっていけそうかな。



そうこうしてるうちに、二月中旬、岡野が戻ってきた。
人事異動のせいだろうか、ずっと不機嫌で仕事の話以外しない。
及川も放置していて、あれだけ一緒にいたのに、不自然なくらい距離を置いてる。


んー、どうなってるんだろう。
二人とも、飲みにも行かないし、岡野さんは戻ってきたのに、DFにログインしてない。
遠隔地異動だから、準備が大変なのはわかるけど、宿舎の決定はまだ先のはず。



「犀川、散々待たせたのに、またごめんな。
 引っ越しや引継ぎでバタバタするから、しばらくは無理そう。
 たぶん、原田もそうだと思う」


あれ、思いすごし?
ゲームのことは、普通に話しかけてくるんだ。

あ、荷造りが大変なんだよな、たぶん。
プラモやフィギュアで溢れかえってるって話してた。
実家に送るようにしないと、東京じゃ狭くて荷物が全部入らなくなる。
東京の宿舎は独身だと6畳ワンルームしかなかったはず。
今、公団住宅で2DKだもんな、キャパが違いすぎ。


自分に対しては、普通に接してくるようになった岡野が、及川にはやはり距離を置いている。
二人の距離の近さを羨ましいと思っていたのに、二人が離れていると淋しく感じてしまう。


二人でセット、そんな気がしてたからかな。
岡野さんなんか「魂の双子」なんて言ってたのに、今の二人はただの先輩後輩以下。


気になるけど、下手に聞けないし。
あんまり、気にしてて、仕事ミスってもマズい。
どっちかが話してくれるまで、待ってよう。
DFだって、岡野さんと原田さんがログインできなくても、ギルドの人達いるしな。

今のうちに、楽しもう。
こんなに楽な部署は、他にはないもん。
毎日、ネットゲームやる余裕があるなんてさ。


.........あ、そうだよ。

ここだから、こんなに遊べるんじゃん。
本省なんか行ったら、岡野さんも原田さんも遊ぶ暇はなくなる。
終電、泊まり込みがデフォルトだもん、あそこ。


ショックーーーーーー!!


基幹システム変更のために呼ばれたなら、余計に忙しいよな。


俺、本末転倒してない?!
岡野さんに誘われたから、嬉しくて始めたのにさ。
もうすぐ、岡野さんと原田さんに追いつく、そう思って頑張ってきたのに。


「来年度は準備段階やから、官房会計と業者との板挟みや。
 設計でプロトができたら、仮想サーバー使って改良していく。
 国会待機はほぼないから、他の部署よりは、ずっと暇やで」

真鍋の言葉に、岡野は黙って頷いた後、こちらを見た。

「だから、しばらくは大丈夫。
 平日は時間が短くなるけど、休日出勤はなさそうだから、そこで遊ぼうな」

真鍋に聞こえないように、小声でそう言った。

露骨に安心した顔になったのだろう。
岡野が吹き出しそうになったのを、必死で堪えている。


うわ、恥ずかしい。
いい年して、ゲームできないって拗ねてるみたいじゃん。
よりにもよって、岡野さんに宥められるって。
子供じゃないんだから、いい加減にしろよな、俺。



「犀川、どうした。顔、真っ赤になってるで」

真鍋に指摘されて、誤魔化すのに一苦労するはめになった。









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