「Time After Time」
午後五時の入場開始

午後五時の入場開始 12   冬威

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目覚めたのは、朝の九時。

隣の伊織は、半分起きてぼーっとしているようだ。
抱き寄せると、もぞもぞしながらも頬にキスしてきた。


「おはよう。そろそろ起きなきゃと思ってたら、君も目が覚めたね。
 軽くシャワーでも浴びようか」

「シャワーより湯船で温まった方がいいよ。
 俺、溜めてくるから、少し待ってて」


部屋着に着替えて、リビングに行くと、風呂上がりの洋一がいた。


「おはようございます。風呂は、洗って溜めてるとこです。
 幸宏さんは、先にシャワー済ませてますんで、お二人でごゆっくり」

「ありがと。洋一君、バスバブル持ってない?
 伊織さん専用のシャンプーとかは持ってきたんだけど、忘れちゃってさ」

「もう垂らしてありますから、ご心配なく。
 いつもお使いの分は、全て風呂場に置いてあります。
 俺、髪の毛乾かして、先に隣で手伝ってますね。
 幸宏さんは、もう行ってます」


遅く寝たはずなのに、洋一はきびきびと玄関へ消えていった。




やっぱ、若いよなぁ。
若い頃って、いくらでも眠たいはずなのに、気合が違うよ、うん。

昔は、忙しくて少しでも寝る時間が欲しかったのに。
最近は、ダラダラ寝てると、腰が痛くなったりするもんな。
眠るのにも体力が必要だって聞いたことあるけど、本当だった。



新年早々、自分の老いを実感して、焦るかと思えば、ただ事実として受け止めている。
そんな自分も嫌いじゃないと、少しおかしく思っていると、風呂が溜まった合図。
下着や新しい部屋着を準備し、浴室のチェックをして、寝室へ戻った。





「改めまして、あけましておめでとうございます」


風呂でさっぱりした後、隣へ移動した。
リビングのローテーブルには、おせち料理が詰まった重箱が並んで賑やかだ。

今日は、由人と烈が動き回る番らしい。
笙と要は、ソファから立ち上がって、楽しそうに挨拶してきた。

挨拶の後、烈が、すかさず質問してくる。


「お餅はどうします?焼いて雑煮、茹でて雑煮、ただ焼いて醤油や海苔?」

「僕は、焼いたのを海苔で巻いて食べたい!一個でいいからね」


風呂に入ったせいか、朝の散歩なしでも、伊織は食欲があるようで安堵する。
洋一も同じように心配していたらしく、ホッとした顔をしている。


「俺は、焼いて雑煮かな。久しぶりだ」

「はい、すぐに焼けますから、待っててくださいね」

「君たちばかりに働かせて、ななは?」

「台所で、いろいろやってますんで、ご心配なく」


噂をすれば影、で、七海がかなり大きめのトレイに湯気の立つ椀を乗せ、運んできた。
自分よりは背が低いが、それでも、笙や烈よりは体格が良い。
こういう時には、役に立つらしい。


「兄貴たちのは、今、焼き始めた。すぐに焼けるからね」


椀をそれぞれに渡しながら、子供の頃と変わらない笑顔で言ってくる。



あのまま東京にいたら、こんな顔して笑ってなかったんだよな。



無意識とは言え、弟にプレッシャーをかけていた。
弟は弟で、自分がマイノリティだと隠すのに必死だった。

高校で烈と出会い、大学で他のメンバーに出会ったことで、大きく成長してくれた。
しみじみと、ありがたいという気持ちが湧いてくる。



「はい、お屠蘇とお雑煮は行き渡りましたね。
 では、みなさん、改めまして」

「あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いしまっさ」


笙と昇平が、テンポよく、仕切り始めた。
みな、合わせて「あけましておめでとうございます」と、声を合わせ、お屠蘇を口にする。


「この後、午後からでも、近所に神社に初詣行きましょう。
 小さいけど、由緒あるところです。
 歩いて二十分くらいなんで、腹ごなしにはいいでしょ?
 飲みは、帰ってきてから、本格的に始めましょ」

「ああ、昇平なんか弱なってしもてるからな。
 マジで飲み始めたら、昨夜みたいになる。
 一旦、お参りして、一年の区切りつけやんとあかん」


今度は、笙に由人が合わせて、笑いが起こる。


「いつもこうなんだよ。賑やかだろ?」

「ああ、でも鬱陶しい賑やかさじゃない。楽しいな」

「うん、巧いんだよ、みんな」


元からコミュニケーション能力の高い伊織だけでなく、少々難ありの幸宏も楽しそうに溶け込んでいる。

弟が影響され、時には、急所を突かれるような指摘も受けた、そして自分自身を省みた。

照れくさそうに話してくれたことが、今、目の前の光景で、染み込むように理解できる。





料理は、どれも美味かった。

重箱のおせち料理も、きれいに盛り付けられたオードブルも。
雑煮も、昆布と鰹節、椎茸の出汁が香り良く、胃に染み渡る。


「今年の煮しめは、要か?」

「当たり。よくわかったね」

「お前のんが、ほんの少しだけ味付けが甘いよってな。
 笙もお前も、だいぶ似てきてるけど、そこは変わってない」

「要ん家は、醤油自体が甘かったりするからなぁ。
 最初のうちは、カルチャーショックの連続やったわ」


新婚の頃の衝突も、笑えるエピソードとして、笙と要が話してくれる。

話を聞きながら、ふと疑問に思った。
確か、昇平は既婚者で子どもがいたはず。
弟が嬉しそうに話していた記憶がある。

その疑問に答えるように、昇平がしみじみと嬉しそうに言った。


「嫁にガミガミ言われん正月は、何年ぶりやろなぁ。
 笙が一緒やから、今回は来れたけど」

「いや、そこは嘘でも「淋しい」って言えよ。
 普段は、娘たちにベッタリのくせに」

「あ、昇平は、三日に家族と合流して帰るんやで。
 由人には、言うてなかったん?」

「あ、バタバタして忘れとったわ。
 嫁はちびたち連れて、TDLに行ってんねん」

「んじゃ、お年玉は昇平に預けとけばいい?」

「烈さん、あきませんって。そんなんしたら、昇平の飲みに消えてまいますわ。
 合流地点までは、車で行きますから、そこで芽衣ちゃんたちか菜々子ちゃんに渡してください」


菜々子というのが嫁なのだろう。
たったこれだけの会話で、昇平の家族やメンバーとの関係がよくわかる。



「お前、本当に友達に恵まれたな」


七海にそう耳打ちすると、嬉しそうに笑った後、思い出したようにすぐ真顔になった。


「そうだ!兄貴に報告があったんだよ。
 このままだと忘れそうだから、今から言うね」 











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