「Time After Time」
午後三時のメッセージ

午後三時のメッセージ 14   幸宏

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半ば保護されるように居候を始めて、あっという間に三週間。

卓也と高島のことを思い出しては、吐き気がしていたのが、少しマシになってきた。
朝の問診で、そう報告すると、伊織がニコニコと指示を出した。


「よし。じゃあ、次の段階に行こうか。
 いきなり本人じゃなく、共通の知り合いになら、連絡取っていいよ。
 大樹君には、僕から状況は話してあったけど、かなり心配してたし。
 倒れる直前に話した先輩も、心配してるんじゃない?」


倒れた直後の大樹を思い出した。
必死で泣きそうなのを堪えて、真っ青な顔をしていた。
卓也の姻戚に当たるからと、連絡は控えるよう、伊織に指示されているはずだ。

会った回数や話した時間の濃さを考えると、自分との方が、より親しい。
自惚れではなく、大樹自身がそう言っていた。


『きっかけは卓也さんですけど、それは関係ないですよ。
 幸宏さんご自身とお話してて、信頼できると思ったんです!
 それに、正直言って、卓也さんとは数えるほどしかお会いしたことないですし。
 ツッコんだ話もしたことないです』


言い終わった後、少し舌を出し、「卓也さんには内緒ですよ」と言っていたのが可愛らしかった。
中身はしっかりしているが、見た目でどうしても幼く見られがち。
それも、今では武器にすることを覚えたというところで、意気投合したことも大きいのだろう。

大樹のパートナー、誠は、自分と同い年だが、落ち着いた外見で年相応に見える。
しかし、本人も認めているが、中身は大樹の方がしっかりしているらしい。

クラッシック一家に生まれ育った「ボンボン」で、ミュージシャンという職業。
自分には想像もつかない世界に住んでいると、そうなるのかもしれないと、見ていて思う。



会社には病気休暇を申請して、三ヶ月の許可が下りている。
直属の上司である湯浅部長とは、承認書が郵送された後に、電話で一度話した。


『ゆっくりしてろ。医者の言うこと聞いて、きちんと治せ。
 会社のことは考えるなよ。お前一人いなくても、回るんだからな』


体調不良を打ち明けた時と同じように、親身に諭してきた。
転職するつもりなのは、まだ話していない。
申し訳ないとは思うが、先がまだ読めないうちは、黙っていた方がいい。





携帯の電源を入れて、メールフォルダを開く。
PCの分も転送されているから、卓也からのものは、専用のフォルダへ中身を見ずに移動させる。

別れたいのか、引き留めたいのか。

そのどちらだとしても、今は考えたくない。


元々、携帯にはDMが来ないように設定してある。
卓也からのメールを移動させたら、残ったのは部下からの見舞いが何通か。
そして、内村と大樹から。

大樹は、北川経由で伊織から連絡がついてからは、落ち着いたようだ。
連絡できるようになるまで待つと、十日前のメールが最後。

ただ、内村は自分の失言が親友の修羅場を招いたせいか、毎日のようにメールが着ている。
隣に洋一がいるのを確認して、深呼吸してみた。

洋一は、特に態度は変わらない。
そばで、そっと見守るように立っている。



『卓也から聞いた。すまんかった。
 俺から言うことやなかったな』

『大丈夫か。会社休むほどなんか?
 俺にはええから、卓也に連絡してやってくれんか』

『医者に止められてるんやって?
 卓也に直接は無理なら、俺にでも連絡してくれ』

『そんなにひどいんか?葛西も心配してる』


大樹からの情報が、卓也へ届き、卓也が内村へ連絡したのが、メールの文章で伺われた。



ここまで心配してくれたんだ。
卓也の親友だけど、俺の先輩でもあるんだし。
これは、返信しないとだよな。



「ご心配かけてすみませんでした。
 俺は、今、知り合いの精神科医に世話になってます。
 不自由はしてません。
 卓也とのことは、体調が落ちついてから、二人で話し合いたいと思います。
 それまでは、申し訳ないですが、そっとしておいてください」


そこまで打ってから、洋一に見せた。
許可は要らないだろうが、なんとなく。


「携帯を使用するには、医師の許可が必要。
 だから、頻繁にメールするなって、付け加えれば楽になりますよ」

「あ、そっか。あの人、マメだから言わないと、また毎日送ってきそうだ。
 ありがと、それも打っとく」


洋一のアドバイスに従って、書き直し、送信。

無意識に体に力が入っていたのか、全て終わった後、強張った感覚が取れた。


「吐き気やめまいはありませんか?
 間接的でも、卓也さんのことを思い出したら、症状が出てもおかしくないです。
 体調がおかしくなったら、すぐに言ってくださいね」

「なんか...緊張してた。訳わかんねーけど」


子供のような感想だと、自分でも思った。
しかし、洋一は微笑んだだけで、からかったりはしなかった。


「ストレッチして、軽くジョギングでもしますか。
 そろそろ、ウォーキングじゃ物足りなくなってきてません?」

「あー、体動かしたら、すっきりするかも。
 この近所、車少ないから走りやすそうだよな」


ジムにも長い間、通っていない。
ただ料金がカードから引き落とされるだけで、もったいないと思っていた矢先に体調を崩した。



なんか、金のことも考えられるようになってるよな、俺。
少しは、マシになってきたってのは、当たってる?



「焦っちゃダメっすよ。
 伊織様の指示を守ってくださいね」


考えたことを見透かされたようで、肩をすくめる。
洋一は、そんな自分を見て、面白そうに笑っている。


「幸宏さん、子どもっぽいとこありますよね」


そう笑われるのが、不思議とイヤではなかった。











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