「Time After Time」
午後三時のメッセージ

午後三時のメッセージ 2   幸宏

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とりあえず、高島のことでも調べてみようか。
卓也との話し合いを終えて、最初にそれが頭に浮かんだ。

ネットゲーム仲間のうち、卓也の同期で、現在は母校で講師をしている内村へメールしてみた。
話したいことがあるので、時間がある時にコールしてくれと。
自分たちの関係を知っていて、研究職で学会などのつきあいもある。
卓也ともよく会っている彼なら、何か知っているだろうと思ったからだ。

Skypeをオンにしたままだったからか、メールを送信してすぐに、内村からコールがあった。
PCで作業してるのか、カメラはオフになっていたので、自分もすぐにマイクのみに切り替える。


『どないしたんや?自分、忙しいんは、もう抜けたんか?
 葛西が心配しとったで』


大阪生まれで、三年間のドイツ留学を除いては、大学以降ずっと京都在住。
学会発表では、普通に英語で話すのに、日本語の場合は関西アクセントのまんま。
自分が知る中で、一番「関西人」らしい人間だ。


「あ、はい。DFにはログインできてなかったっすけど。
 内村さんは?」

『俺と葛西は、ぼちぼちやってるわ。卓也が出張やから、今は二人だけや』

「すいません、俺、なんか余裕なくて」


ネットゲーム仲間で、抜けてしまったのは、自分の同期二人に卓也の同期が二人。
八人で始めて、残ったのは四人。
内村と葛西、卓也と同期で二年先輩だ。


『謝らんでもええ。で、今日は何や?』

「内村さん、高島のこと知ってますよね?」

『..................』


内村が、言葉に詰まった。
明るく場を盛り上げるのが得意な、内村。
卓也とは正反対の性格だが、一番仲がいい。
その内村が、言い淀んでいる。

しばらくの沈黙の後、内村が質問してきた。


『......卓也のアホが、言うてまいよったんか?』


何か、奇妙なモノを感じた。
学生時代、高島が引き起こしたことは、内村も知っているはずだ。
それでも、卓也と同じ研究所に転職したことを、内村がそこまで重く考える理由は何か。
この口ぶりでは、卓也に言うなと言い含めていたようにも思える。


「内村さん、どこまで知ってるんすか?」

『俺はノーマルやから、お前らの芯のとこまではわからんけどな。
 一度や二度の浮気くらい、男やったら、珍しないで。
 それも、八年も遠恋やってんねんから、多めに見たれや。
 ただ、魔が差しただけや。あいつが、ほんまに惚れてんのはお前だけやって』

「は...?浮気...?」

『?!』


失言に気づいた気配が、濃厚に伝わってくる。


『もしかして...そこまでは知らんかったんか?』

「俺は、高島が転職してきて、卓也は避けてることしか聞いてません」


喋りながら、血の気が引いていく。
急に血圧が下がったのか、激しい頭痛がしてきた。

冷静にならなければ、そう思うのに吐き気がする。


『すまん、俺が言うことやなかったな。
 卓也のことやから、バカ正直に白状したんやとばかり......』

「いえ、何年も待たせてたのは、俺ですから。
 内村さんにも葛西さんにも、心配かけてすみませんでした」


それだけ言って、なんとか通話を終了した。





......卓也らしいっちゃ、卓也らしいか。

高島が転職してきたことも、できれば隠し通したかったんだろ。
下手に名前出したら、浮気しちまったこともバレやすくなる。
今まで、コナかけられたことはあっても、マジの相手とヤったことはないはず。
口説かれたぐらいのことでも、俺が気分悪いだろうって、黙ってたくらいだし。
まぁ、バレバレだったけど。

あー、全部、俺が悪いんだよな。

離れてたのは、俺の都合。
さっさと踏ん切りつけさせてやれなかったのは、俺のわがまま。
あいつは仕事が好きだから、我慢できるだろうって、見込みの甘さもあったよな。

俺が淋しかったように、卓也だって淋しかったんだ。
忙しくてバタバタしてた俺と違って、卓也は変わらない生活してたんだし。



自分のせいだと思いながらも、卓也が他の男と寝たと思うだけで、頭が割れそうに痛くなる。
無意識に噛み締めた奥歯が、ギリっと音を立てて、我に返った。


不意に、Skypeのコール音がした。

卓也からだ。


今話すと、何を言ってしまうかわからない。
やっと、腹を割って話せたと思った矢先に、こんな爆弾が飛んでくるとは思いもしなかった。




止まないコール音に、頭痛がひどくなる。
ログオフしようとしたが、それは逃げではないかと、躊躇いが生じた。

話し合う前は、決裂してもいいとまで覚悟したのだ。
ここで避けていては、また元通りになってしまう。


首にかけていたヘッドセットを、両耳に装着し、応答をクリックした。


『...内村からメールが来た。黙ってて悪かった』

「............」



謝るとこ、そこかよ?
俺のこと大事だとか言いながら、他の男と寝てたんじゃねぇか!
それも、高島って?
あいつ、卒業した時、諦めたんじゃねぇの?!
もしかして、ずっと繋がってたりしねぇよな?!



口から溢れそうになる言葉を、必死に飲み込んだ。


「高島は本気なんだろ?もしかして、追っかけて転職か?」

『転職のことは、詳しく聞いてない。卒業後は、修士からずっとアメリカだったしな。
 たまに学会で挨拶する程度だったんだが...一度でいい、そう言われて絆された。
 俺も淋しくて、バレなければいいかと、軽く考えてしまった』

「お前が相手したから、可能性はゼロじゃないって、諦めつかなくなってんじゃねぇの?
 それわかってっから、転勤とか転職とか言い出してんだよな?」

『...............』

「黙るなよ。お前も絆されたってことは、少しは傾いてんだろ?
 お前の性格なら、興味なかったら、完全にスルーだもんな」

『一度だけだ。許してくれないか?』

「待たせてんのは、俺だからな。許すもなんもねぇよ。
 でも、高島のことは、きちんとしてくれ。
 引導渡さずに逃げるだけじゃ、また追っかけてくんぞ」

『.........わかった。帰ったら、きちんと話をする』



あーあ、かっこいいこと言ってやがんの、俺。

浮気って聞いただけで、こんなに頭が痛いのに。
吐き気までしてんのにな。
自分が悪いってわかってても、だ。

卓也が他の男とヤってたの考えただけで、気持ち悪い。
変な汗が出てきて、なんかヤバい。

あ、聡志さんに報告しなきゃ......。




PCを落として、携帯を探す。
電話帳から、北川を探して、タップした。

呼び出し音を聞きながら、これが夢ならいい、そればかりが頭に浮かんでは消えた。











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~ Comment ~

NoTitle

うわあぁ。。
特大の地雷でしたね、高島。
でも、二人が離れている今、知られた方が良かったんじゃないか・・・?

近くに居たら反動が周囲にも跳ね返りそう。
お互いが大事な存在なの。傷が深くならないことを祈ります。

Re: NoTitle

自分で気づくのと、本人から白状されるのと、他人からバラされるのと。
幸宏の場合、最後が一番イヤなはずなんです。
それも、世話になってる先輩からですから、文句も愚痴も言えない。
普通ならって言われても、普通ってなんなんだよって話もありますし。

卓也みたいなタイプは、浮気するのも下手だし、後処理も下手。
さぁ、どう動くやら。
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