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「Time After Time」
午前六時のアラーム音

午前六時のアラーム音 16   冬威

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伊織との共同生活が始まった。


伊織は、宣言通りにクリニックを閉鎖した。
と言っても、わずかに「クリニックらしさ」を示す掲示を取り外しただけで、他はよくわからない。
おそらく、伊織の弟に通知しただけではないかと思う。

自分はと言えば、春樹と共演した映画が最後の仕事だ。
そこそこの興行収入を上げたらしく、すぐにBlu-ray化の話を聞いた。

事務所も自分というお荷物がいなくなって、肩の荷を下ろしたことだろう。
商品価値がないわけではないが、春樹の足を引っ張りかねない存在は排除したかったはず。
今や、事務所の柱となった春樹には、少しの傷もつけたくないことは想像に難くない。

同棲している婚約者のことは、なぜか知られていない。
知っているのは、自分と瞳、海たち幼馴染だけだ。
マネージャーには、さすがにバレていると思うが、別れさせようとした痕跡はない。
挨拶の時に、その秘訣を聞いてみようか。



伊織の家での生活は、穏やかで快適だ。

不規則な時間帯の仕事をしていたが、自分は基本的に朝型。
若い頃のように飲み歩いたり、誘われるままに遊ぶようなこともない。

伊織も、患者がいなくとも、生活時間帯は変わらないらしい。
自分と同じ朝型で、低血圧だからと言って、寝起きが悪いわけでもない。

朝は六時に起きる。
アラームがなくとも、伊織はピタッと時間に目を覚ます。
その気配で、自分も目が覚める。

一時間ほど、ゆっくり散歩して戻ると、朝食が用意してある。
伊織が連絡しなければ、基本的には和食。
味噌汁に御飯、漬物に湯豆腐かみぞれ豆腐、温かい煮浸しなど。
消化にいい栄養バランスを考えた食事が、湯気を立てて待っている。


家事や身の回りのことは、全て、隣に住んでいる笹井一家が担当している。

笹井の父親が庭や建物のメンテナンスに、屋外の清掃。
母親が炊事、洗濯、屋内の清掃やベッドメイキング、衣服の管理。
そして、息子の洋一が、買い物や運転、相馬本家との連絡。

それぞれが、伊織のためだけに雇われて、伊織のことだけに心を砕いている。





自分が同居することは、笹井家に迷惑になるのではないか。
そう尋ねてみたが、伊織の答えは明快だった。


「本末転倒でしょ?僕が快適に過ごせるために雇われてるんだ。
 気を遣えば、逆に笹井たちが困るよ」


こんな時、住む世界が違うのだと、実感する。


伊織は、一通り、家事ができる。
しかし、両親が心配して、笹井一家を隣に住まわせた。
笹井の家は、曽祖父よりもっと前の時代、それこそ御典医を勤めていた時代からの使用人だったと言う。

伊織が生まれてすぐ、先代の笹井夫婦が世話係として就いた。
二人の息子がいて、長男が今の世帯主。
そして、その一人息子が、洋一だ。

連綿と続く主従関係も、自分には理解できない世界のことだ。
しかし、伊織自身は、下手に自分で動くと、周りが失職しかねないことを、物心がつく頃には理解していたらしい。



長年、派手な業界で、いろんな金持ちを見聞きはしてきた。
ミュージシャンや俳優、タレントだけではない。
スポンサーとのつきあいもあり、大企業の社長や世界的なデザイナーなど多業種に渡る。

しかし、伊織ほど、「かしずかれること」が自然な者は少ない。
そして、富裕層によく見られる、傲慢さや虚栄心の強さは、持ち合わせていない。
ずっと傍観者の立場にいる者には、持ちようのない感情なのかもしれないが、自分にはわからない。
わかるのは、伊織の高貴さや優雅さ、透明感を形成している、大きな要素らしいということくらいだ。



ただ、敏感で鋭い伊織が、気づいていないはずはない。
洋一が、自分に対して、強い負の感情を持っていることを。


「俺、疑われてるのかなぁ。まぁ、芸能人なんて胡散臭いことやってるし。
 俺自身がスキャンダルまみれの人間だから、しかたないんだけどさ」

「ああ、洋一のこと、気づいてたんだ。
 気にするなって言っても、君には無理かな。
 でも、君が僕に害を及ぼさない限り、あの子は何もしないから、大丈夫だよ」

「やっぱり、嫌われてるんだ......」


わかってはいたが、やはり、気持ちいいものではない。
知らない人間ならまだしも、伊織の親しい者に嫌われてしまうのは、淋しくもある。


「君じゃなくても、僕がつきあう人間は、性別問わず嫌われるから」

「......え、それ、もしかして」

「うん、あの子の初恋の相手らしいよ、僕」


ケロッと言われて、一瞬、思考が停止した。

笹井の表情を思い出す。
自分を見る目が、時折、忌々しげに歪んでいる。
隠そうとはしているが、隠しきれていない。
あれだけ強く憎まれているなら、今でも伊織に想いを寄せているということか。

戸惑っている自分に、伊織が釘を刺してくる。


「誤解しないでよ?僕は、一切、手を出したりしてないからね。
 あの子が告ってきた時に、きっぱりと断ってるし、それ以降は何も言ってこない。
 恋愛感情と過剰な庇護欲をごちゃ混ぜにして、拗らせちゃったみたいでね。
 まだニ十八で若いし、いい人見つけてくれるのを祈るしかないんだ」

「世話係を交代させられないの?」

「そんなことしたら、何しでかすか怖いんだよ。
 あの子、冷静に見えるけど、思いつめちゃうタイプだから。
 君と幸せに暮らしてるの見たら、諦めがつくんじゃないかと、少し期待してる」

「んー、昔の俺みたいで、気の毒かも」


康生にきっぱりと拒絶されて、長く引きずったことが頭に浮かんだ。

朝食を食べていた手を止めて、伊織が苦い笑みを零す。


「そういうとこが、君のいいとこだけど。
 こればっかりは、自分で解決するしかないって、君自身、わかってるでしょ?
 世話係を辞める選択肢もあったのに、続けているのは、洋一の意志だしね。
 僕にできるのは、気を持たせずに、雇用主として、関係を良好に保つことだけ」

「そうだね。簡単に諦められるもんなら、とっくに諦めてるだろうし。
 自分が楽になったら、途端に気楽に考えちゃってるなぁ、俺」


伊織の手が、頬に伸びてきた。


「君ならわかってくれると思った。
 笹井の人間は、僕にとっては家族みたいなものなんだ。
 忙しい両親の代わりに、ずっと面倒見てくれてたからね。
 あまり、突き放したくないのも、本音なんだ」

「うん、我慢するよ。まさか、刺してきたりはしないだろうしさ。
 でも、絶対に、浮気はしないでよ」


これが、スキャンダルまみれの半生を送ってきた、五十の男の言うことか。
口に出した後、自分で可笑しくなってしまって、つい吹き出した。

伊織も、今度は明るく声を上げて、一緒に笑ってくれた。











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