「Time After Time」
午前六時のアラーム音

午前六時のアラーム音 11   幸宏

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転活用に作成した履歴書と業務内容等説明書をプリントアウト。
いつものメンバーには、会社員はいないが、どこにツテがあるかわからない。
また、ツテはなくとも、アドバイスでももらえたらありがたい。


「いらっしゃいませ。今夜は、広い方にお集まりですよ」


ドアを開ければ、バーテン見習いの里中が、すぐに声をかけてくる。
きびきびと働く姿は、見ていて気持ちがいいものだ。

軽く礼を言って、個室へと歩く。
大きな個室にいるということは、自分をカウントして八人以上。
未満の場合は、小さな方に集まることになっている。





「こんばんは」


ここでは、ノックは不要だ。
常連客ばかりで、店員も口が堅いのはお墨付き。
店の作りも手伝って、ここでのヤバい話が外に出たことはないらしい。


今夜は、誘ってきた三神組、オーナー組、そして、笙。
さらに、初めて見る顔が四つある。

四人ともが長身でスタイルがいい、まるでモデルのようだ。
顔が小さく、座高は低く、ソファから大きく脚がはみ出している。
次元が違いすぎて、羨ましいとも思えない。

一人は年上、三人は年下と当たりをつけたが、これまで見た中でも一番の迫力を持っている。
一瞬、気迫負けしそうになって、腰が引けた。

しかし、大阪在住で会社員の笙が来ているのだ。
せっかくの機会を逃す訳にはいかない。
他のメンツとは違って、しょっちゅう来れるわけではないのだ。
ここ最近は、たまたま、東京への出張が多かっただけと聞いている。



「こっちの四人、会うのは、初めてだったよね?」


笙の問いかけに頷いて、まずは自己紹介。
聞いてはいるだろうが、礼儀としては当然だろう。

喋り終わって頭を下げると、笙が一人一人を紹介し始めた。
度々、話題になってはいたから、どんな人物かと楽しみだったのだ。



「鮎川さんが一回り若くなってるのが、斎藤昌行。
 英兄の弟分で、私の兄貴分。今は無職のおじさん」

「よろしくな」


無職と紹介されても、一切動じず、口の端を軽く上げて微笑んでいる。
声は少し掠れて甘めで低い。特徴があるから、すぐに覚えられそうだ。


「その隣が、私の雇い主で昌兄のパートナー、野上健太さん」

「はじめまして」


ニコニコと穏やかに笑っているが、冷静に観察しているだろうことは予想できる。
大阪時代、野上グループが、表と裏を切り離し、徹底的に改革していたのは聞こえてきていた。
その旗頭は、若くして後継者となった、この男だったはずだ。


「向かいが、斎藤涼さん。昌兄の息子で、うちの会社の顧問弁護士の一人」

「よっろしくねー!」


明るい茶色の髪に、白い肌。一見して、西洋の血が混じっているとわかる特徴を持つ。
いきなりのタメ口に驚いたが、隣の男に肘でつつかれても、平然としている。

ただ、能天気に見えるからと油断してはならない。
野上グループの顧問弁護士ならば、長野弁護士事務所に所属しているはずだ。
それぞれ得意分野が違う、凄腕を揃えていると評判の事務所。


「涼さんの隣が、斎藤怜さん。同じく、昌兄の息子で顧問弁護士」

「はじめまして。義弟が失礼しました」


握手を求めてきた男は、知的で穏やか、明るく健康的に笑っている。
懐の深さと器を大きさを感じさせるが、老けては見えない。
涼とは対照的にも、対のようにも見える。


この三人は、和哉と大学で同期だと聞いている。
構内でも目立っていたと、和哉が珍しく話してくれた。



しばらくの間、それぞれが近況などを楽しそうに話すのを聞いていた。
何か違和感があると思ったら、笙が関西弁ではないのに気がついた。
不思議に思って質問してみる。


「今日は英兄がいないしね。
 関西弁は、薄くなってる修さんだけだから、雰囲気に合わせてるだけ」

「え、関西ネイティブの人って、どこでも関西弁かと思ってました」


そう、それが原因で、高校でも大学でも敬遠されがちだったのだ。
急に関西弁だらけの環境に放り込まれ、即席で話そうとするのはカッコ悪いと思った。
思春期特有のカッコつけで、意固地になった。

下手でも、馴染もうと喋っていれば、好意は持ってもらえる。
それに気づいたのは、引っ越してから、かなり経った頃だった。
今さらな気がして、そのままにしていた。
幸い、就職先では、関西弁は少数派だったから、浮かずに済んだ。

卓也と仲良くなったきっかけでもある。
ただし、卓也は不器用で音痴なところがあり、英語の発音は綺麗なのに、関西弁は喋れない。
自分のように、意固地になったわけではない。





「んー、父さんは違うけど、俺たちは三人とも大阪生まれ大阪育ちだよ?
 俺と怜ちゃんは、親の転勤でたまたまそうなっただけ。
 家でも誰も喋ってなかったんだよね」

「お前が、「カッコ悪いからイヤだ」って、泣いたんじゃないか。
 だから、保育園でイジメられたんじゃん」


怜が軽く小突くと、涼は小突かれたというのに、嬉しそうに笑っている。
聞いてはいたが、この二人の関係は、見ただけですぐにわかる。
外では、決して見せてはいないだろうけど。



うへー、今日も、俺と笙さんだけ相手なしってよ。
いい加減、見せつけられるのも飽きるって。



少し羨ましいと内心で拗ねていたら、話題が途切れた。

ここで始めなければ、どんどん言えなくなりそうだ。

思い切って、笙に相談を持ちかけてみた。


「笙さん、教えて欲しいことがあるんです」










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