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「Time After Time」
午前六時のアラーム音

午前六時のアラーム音 8   冬威

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「はい、ご本人の確認ができましたので、届け出は受理されました。
 瞳さんには、現在のご住所に通知が届きます」


テキパキと説明する職員が、免許証を返してきた。

あまりにもあっけない幕切れに、笑いがこみ上げてくる。
まるで、自分が主役のコメディを見ているような気分だ。

一礼をしてから、サングラスをかけ、区役所を後にした。





仕事は入っていない。

時計を見れば、午後一時。

約束は夜だが、今、会いたい。



逸る心がタクシーを拾わせた。
クリニック近くで降車したが、そこで小心者の本性が顔を覗かせる。



押しかけたりしたら、伊織さん、引くかな。



携帯を取り出し、相馬の番号を呼び出した。

タップするかしないか、たっぷり三分は迷っていたら、肩を叩かれた。
驚いて振り向くと、相馬が立っている。


「どうしたの?家に来るか、迷ってる?」

「...伊織さん」


相馬が周りを見回したかと思うと、自分の腕を取って歩き始めた。
本人に会えたのは嬉しいが、見つかってしまった気恥ずかしさは、何とも言えない。





「ちょうどね、お昼御飯用にサンドイッチやパンを買ってきたところなんだ。
 教えてもらったお店で、どれも美味しそうだから、買い過ぎちゃってさ。
 もしかして、早めに来てくれるかな、と思ってたから、背中見つけて嬉しかった」


ダイニングで楽しそうに昼食の準備をする、相馬。

この人も変わった、しみじみと思う。

頑なに線を引いていた頃には考えられない、親しげな言動が増えた。



先に話してしまいたい。
じゃないと、味なんかわからないよ。



「伊織さん、食べる前に少しだけ話していい?」

「どうぞ」


やっと、タメ口に慣れてきた。
それだけ距離が近づいたのが、嬉しい。

そして、もう、堂々と告げてもいいのだ。


「さっき、届け出してきた。独身に戻ったよ」


話を続けようと相馬を見ると、こちらを向いて腕を広げている。

自分より、随分と背も低く華奢な相馬に、吸い込まれるように抱きとめられた。



「今まで、よく頑張ってきたね」


相馬の言葉が、すーっと心に染み込んでくる。
何十年ぶりだろう、演技でない涙が溢れてきた。



母を庇っては、父に殴られ蹴られていた。
泣いてしまえば、母が余計につらくなる。
妹や弟も、一緒に泣いてしまう。

両親が離婚してからは、一層、泣けなくなった。

我慢しているうちに、泣き方を忘れてしまった。

男だから、兄だから、泣くのはみっともない。
世間の常識も手伝って、すっかり、涙も枯れ果てたはずだった。







「カッコ悪いね、俺」


相馬の肩に乗せた額を上げ、涙でグチャグチャになった顔を見せないように横を向く。
気恥ずかしさでいっぱいの自分に、相馬の手が伸びてくる。

頬を撫でられ、その温かさに、また泣きそうになった。


「そんな君も、可愛いよ」

「.........」


可愛いと誉めたことはあっても、言われたのは初めてだ。
さっきの気恥ずかしさとはまた別の恥ずかしさが湧いてくる。

相馬が濡れたタオルを持ってきて、顔を拭いてくれようとした。
さすがに恥ずかしさが勝ち、自分で拭こうとタオルを受け取る。


「もう、大丈夫かな?お茶、淹れ直すね」

「うん、ありがとう。お腹空いてるのに、ごめん」


立ち上がった相馬は、今度は黙って微笑んだ。
そのまま、キッチンへと歩いていく。



タオルに顔を埋めて、大きく深呼吸してみる。
微かにハーブの香りが漂う。



これは、診察の時に飲んでいたハーブティーと同じ香りかな。
この匂いがすると、反射的に伊織さんのこと思い出して、安心するんだ。



瞳の隣に沖田がいたように、自分には相馬がいた。
思っていた以上に、長い間、相馬に支えられていた。

今さらながら、そのことに気づかされる。



「さぁ、食べようか」


相馬が、何事もなかったように声をかけてくる。
なんとなく物足りない気もするが、下手にかしこまられるのも困る。

相馬の性格を考えたら、抱きとめてくれただけでも、大きな変化だ。
調子に乗って、距離を縮めようとすれば、逃げられてしまうかもしれない。



ガツガツする年でもないもんな。
伊織さん相手なんだし、長期戦は覚悟しなきゃ。



相馬は、今はフリーだ。
決まった相手がいる時は、すぐにわかる。
そして、一夜限りなら気にしないが、交際する相手には「既婚者」は選ばない。
倫理観からではなく、離婚などの騒動に巻き込まれるのを避けるためだ。

父や弟に、これ以上の迷惑はかけられない。
そう説明していた。

ただ、マスコミで騒がれることは、決してない。
相馬家を敵に回すような真似をしては、大手スポンサーを失うことになる。

スポンサーだけではない。
セレブ御用達と言われる、美容整形や各種医療センターを経営している相馬家だ。
顧客に一言頼めば、叶わないことはないとさえ言われている。


一番大きな障害が消えたのだ。
焦ることはない。

そして、一番、みっともない時期の自分を知られていることを思い出す。
どれだけカッコ悪かろうと、あの頃よりはマシなはず。


目の前の相馬は、好物のベーグルを頬張っていた。
ニコニコと美味しそうに食べる姿は、可愛いとしか思えない。

さっきまでの、慈愛に満ちた高貴な姿とのギャップが、この男の魅力でもある。


自分もベーグルを手に取りながら、これからのことを、ゆっくり考え始めた。











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