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「Time After Time」
午前六時のアラーム音

午前六時のアラーム音 6   冬威

 ←御礼 20180210 →午前六時のアラーム音 7   冬威

久しぶりに見る瞳は、別人のようだった。
老いとは関係なく、印象がまるで違っていたのだ。

自分の知っている瞳は、強気で上昇志向が強く、プライドが一番大事な女だった。
アイドルグループでセンターに立ち、スポットライトと視線を浴びるのが何よりも好き。
グループを卒業後、すぐに妊娠結婚して、若いママさんタレントとして活躍。

後になって考えれば、需要がなくなる前に結婚したかったのだと腑に落ちた。
だから、あれほど執着していたのだろう。
卑怯な手段を使ってでも、愛されていなかろうと、付加価値のために必死だったのだ。

歌も演技も巧くはない。
アイドルの割に、ズバズバと本音で話すという「キャラクター」で、目立っていただけだ。
自分の売りをよく知っていた。


その瞳が、穏やかに微笑んでいる、作り笑いでなく。

刺々しさはなりを潜め、優しげにさえ見える。






「来てくれて、ありがとう」


瞳の第一声。

以前の瞳とは違った、落ち着いた声。
恨みがましさも皮肉も感じられない、素直な言葉。


「二人だけで話したいの。
 沖田さん、春樹、少しの間、二人にしてくれる?」


瞳が静かに頼むと、沖田と春樹は病室から出ていった。


二人きりになるのは、何年ぶりだろう。
見た時から様子が違っていたので、瞳が取り乱す不安はなかったが、居心地の悪さは残っている。

促されて、ベッド脇の椅子に腰掛ける。
瞳は、冷蔵庫からスポーツドリンクのペットボトルを取り出して、渡してきた。


「これが、最後の一本。もう、買わないことにしたわ」


このドリンクのCMが、初めての共演だった。
自分のファンだと公言していることは知らされていたが、関心はなかった。

瞳の言葉の意味を掴みあぐねて、じっと手の中のボトルを見つめていた。

これまで、何度も離婚を希望して話し合おうとしたが、完全に拒否されて終わってきた。
自分は有責側だから、調停や裁判では勝てない。
瞳の気が変わるのを待っている内に、ここ何年かは、諦めて何もしなくなっていた。



ちゃんと言わなきゃな。
また、同じことの繰り返しかもしれないけど。



意を決して、話を切り出そうと顔を上げた。
瞳は、右手に持った封筒を差し出してくる。


「離婚届が入ってるわ。私の分は、記入してある。
 財産分与も慰謝料も要らない。
 正式な書類は、弁護士を通すことにしましょう」

「............」


あまりの驚きに、何も言えなかった。


「驚いてるわね。無理もないか」

「...ああ、何かあったのか?」


おずおずと質問すると、視線を外して、瞳が語り始めた。





......私ね、やっと諦められたの。

自分が特別な人間じゃないって、やっと受け入れられたのよ。


普通がイヤでイヤで仕方なくて、オーディションを受けた。
歌もダンスも演技も下手なくせに、芸能界に憧れてたから。
グループの中で、なんとか目立とうとして毒舌キャラ演ってみたり。

だから、卒業が近づくのが、何よりも怖かった。
年を取れば、私にはなんにも売りがない。
生き残るためには、どうしたらいいのか、必死で考えた。

自分を特別だと思いたかった。
冷静に考えれば、特技も何もないくせに、どうしてそう思ったのか不思議なんだけど。
グループでセンターに立ったし、CMに何本も出てたから、勘違いしちゃったのよね。

そんな焦ってた時期に、あなたと出会った。
あなたは覚えてないでしょうけど、音楽番組でよく見かけてた。
他のバンドの人は、声かけてきたりしたのに、HAKONIWAのメンバーだけは完全無視。
私たちの方が先輩なのに、挨拶さえしない。

そういうのも売りにしてたのは、後から知ったわ。

焦りと意地が、あなたに向かう力になった。

あなたは、遊び人を気取ってたから、近寄るのは簡単だった。
本当は、真面目な小心者だなんて、気づいたのは、ずっと後になってから。

相手はしてくれるけど、本気にはならない。
どんどん意地になって、あなたに執着した。
あの当時は、他の誰よりもあなたが光り輝いて見えてたしね。

ずっと観察してるうちに、コウセイへの片想いにも気づいてしまった。
それをネタに脅迫するような、最低なこともした。

子どもが生まれたら、変わってくれるんじゃないか。
そんなバカな夢も見た。


春樹にも、可哀そうなことをしたと思う。

春樹は春樹で、あなたじゃないのに。

そっくりな春樹が、私に甘えてくるのが嬉しくてしかたなかった。
春樹さえいれば、あなたが帰ってこなくても、淋しくなくなった。
離婚したくなかったのは、春樹を片親にしたくなかったことも大きいの。

でも、春樹だって大人になる。
当たり前のことなのに、それに耐えられなかった。

弱さも平凡さも認めることが出来ずに、アルコールに逃げて、挙句は入院してしまった。
自分が依存症だと認めることが、一番の苦痛だったわ。

結局、春樹の足手まといになってしまったのが、本当に情けなかった。





瞳が、言葉を切り、自分の方に向き直った。


「......相馬さんがね、ここに入れるよう手配してくれたの。
 依存症の離脱症状やうつの認知の歪みが治まった時、鏡を見て愕然とした。
 そこに映っているのは、病み疲れた、ただのオバサンだった。
 なんだか、憑き物が落ちるように、あなたに対する執着が消えていった。
 こんなオバサンが、あなたの妻で春樹の母だからって、偉そうになんか言えない。
 そして、やっと、どれだけバカなことをしてきたかに気づいた」

「.........変わったよな」

「うん、自分でもそう思う。
 冷静になれたら、誰が自分を支えてくれたのかわかった。
 沖田さんと春樹よ。沖田さん、事務所を辞めて、この近くで働いてるの。
 私なんかのために、家も買って、準備してくれた。
 愛してるかと聞かれれば、イエスとは言えない。
 でも、隣にいたいと思うようになってる」

「住んでいたマンションは、君の名義に変更してある。
 処分するなら、不動産会社を紹介する。
 沖田さんや春樹と相談して、連絡くれればいいよ。
 ......俺も、卑怯だったかもしれない。ごめんな」


瞳は、黙って微笑んだ。

軽く首を横に振った後、右手を差し出してくる。


「謝るのは、私の方。今まで、本当にごめんなさい。
 幸せになってね」

「ああ、君も」


握手した手は、細く弱々しく乾いていて。

瞳も自分と同様に、年を取ったことで見えてきたものがあるのだろう。

これからは、自分への嫌悪感や相手への罪悪感に悩まされなくて済む。


やっと、許された。

そんな気がした。 











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