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「Time After Time」
午前六時のアラーム音

午前六時のアラーム音 2   幸宏

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北川から教えられた住所と地図を頼りに、迷うことなくたどり着いた。
しかし、門の前で、本当にここなのかと、不安になる。
表札に「相馬」とあるだけで、病院らしい看板もない。
目立たない小さなプレートが、一枚あるだけだ。


『高級住宅街の一軒家やから、わかりにくいかもしらんけどな。
 表札は「相馬」って出てるし、同じ苗字は近所にはおらん。
 ああ、保険医療機関って、小さいのんが門のとこに貼ってあると思うわ』


原田の説明を思い出して、深呼吸。

今まで、大きな病気はしたことがない。
毎年の健康診断でも、オールクリア。
せいぜい、風邪や虫歯で通院したことがあるだけだ。
そんな程度の通院でも腰が引けてしまうのに、心療内科を受診するのは度胸が必要だ。



壊れかけてんのは、間違いねぇんだ。
せっかく、北川さんが話通してくれたのに、びびってる場合じゃねぇよな。
これで逃げ帰ったりしたら、卓也にも呆れられちまう。



覚悟を決めて、インターホンの呼び出しボタンを押した。


中に入っても、落ち着いた色合いの高級な調度に、吹き抜けになった階段と、病院らしさの欠片もない。
広い玄関の壁に、小さく表示があるのが唯一そうかもしれない。


『相馬診療所 開設者 相馬孝徳
       管理者 相馬伊織』


慣れている人間にはわかるのだろうが、開設者と管理者の違いもわからない。
とりあえず、出迎えてくれたのは、北川と原田の友人「相馬伊織」だと言うことだけは理解した。






「麦茶でいいかな?ハーブティーは飲み慣れてないでしょ」


多少、面食らったが、確かにハーブティーなど飲んだこともない。
頷いて、目の前のグラスに麦茶が注がれるのを見つめていた。

冷たい麦茶を飲むと、少し落ち着いてきた。
相馬は、自分が渡したスケジュール表を、真剣な顔で読んでいる。
異変を感じるようになってから、スケジュール表には、起床や就寝時間、その日の体調なども書き入れるようにしていた。


華奢な自分より、さらに華奢な相馬。
ちょうど、翼くらいだろうか。
緩くウェーブのかかった髪は、少し白髪交じり。
後ろで無造作に括ってある。

顎も鼻も細いが、神経質そうに見えない。
スケジュール表を渡すまで、ずっと穏やかに微笑んでいたからだろう。
そして、よく観察すれば、やはり、北川や原田と同種の人間だと思える。
つまり、「只者ではない」のだ。


クスッと、小さく笑う声が聞こえた。
相馬の真剣な表情が、柔らかく崩れている。


「どうやら、君には、薬も専門医の紹介も必要なさそうだね。
 自分でも、薄々はわかってるでしょ?」


読み終えたらしく、相馬が顔を上げた。
まず言ったのが、それだった。


「それでも、きちんと来たのは、北川たちに義理立てしたのかな?
 プライベートでの人間関係構築は、苦手そうに見えるのに」

「あー、確かにそうなんですけど...。
 北川さんたちには、何でもお見通しっつーか。
 気負わなくていいんで、すごく楽なんで。
 自分でも驚いたんすけど、あっという間に距離が近くなったんすよね」

「ああ、笙ちゃんや英一君たちにも会ったのか。
 あそこは、居心地がいいよね。
 僕みたいな人間でも、たまに行きたくなるくらいだから」


相馬の言葉に、少しひっかかりは感じたが、下手に踏み込まない方がいいと判断した。
本人が言う通り、他人とは距離を取るタイプなのだろう。
特に、今は自分が診断されている立場だ。
感情的にこじれるのは、避けたいところだ。


「君に一番必要なのは、パートナー君との話し合い。
 休職したいなら、診断書は出せるけど、まだ症状が軽いし。
 話し合いの結果次第では、休職せずに済むと思うよ」

「あー、やっぱ、そうすかぁ。
 卓也と話したら、途端に体調スッキリしたんすよね」

「うん、診断書出すとしたら、「適応障害」になるんだよね。
 君の場合は、仕事や新会社の環境じゃなくて、遠恋が過負荷になってるんだと思う。
 ま、そこら辺は難しいよね。
 ノーマルなら、結婚を理由に転勤希望とか出せるけどさ」

「いえ、先生と話して、自分の思い込みじゃないってわかったんで。
 卓也と話し合って、転職するかどうか、考えます。
 ...自信がなくて、仕事に逃げてたんすよね」


すっと、相馬の右手が伸びてきた。
ゆっくりと、頭を撫でてくる。
子どもの頃に、母親にされたような、あやすような撫で方。

気がつけば、完全にリラックスして、肩の力も抜けていた。




「ずっと一緒にいられるとは限らない。
 そう思っちゃうと、予防線張りたくなるよね」

「先生でも、そんなこと考えたりします?」

「先生って呼ばなくていいよ。医療行為は、何もしてないし」


ソファにもたれている相馬は、飲んでいるのは同じ麦茶でも、優雅に見える。
自分のような、普通のサラリーマン家庭育ちとは違う、品の良さとでも言った違いがある。

北川の仲間にも何人かはいるが、目の前の男は飛び抜けている気がした。
年齢を感じさせない、強いて言えば透明感みたいなものを感じさせるのだ。

そして、その分、生命力は弱いように思える。
同じように華奢な翼は、体が弱くとも、生命力に溢れて見えるのに。

自分とは全く違うタイプだと思っていたが、なんとなく似ている気もする。
そう思っているのは、どうやら自分だけではなさそうだ。



「ずっととか、一生とか、そんな言葉は使えないって、思い込んできたんすよね。
 でも、気がつけば、二十年も一緒にい続けてきて、この先もあるんじゃないかって」

「立場は違うけどね。僕もそうだったから、わかる気がするよ。
 で、偉そうに言っちゃうけど、医者じゃなくて、人生の先輩として一言言わせて」


相馬は、一旦、言葉を切って立ち上がった。
空になったグラスを持ち上げ、ゆっくりと麦茶を注いでいる。



「必死になるのは、カッコ悪いことじゃないよ。
 欲しいくせに、欲しくないって嘯く方が、カッコ悪いと思う。
 ......つい最近までの僕みたいにね」











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