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「Time After Time」
午後十時の薄明かり

午後十時の薄明かり 16   冬威

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残り時間が、五分を切った。
楽しみは、また来月まで待たなければならない。


「あ、さっき話した、REALのカウントダウン。
 チケットが一枚残ってるんです。よろしければ、いかがですか?
 席は俺の隣になりますけど、ちゃんと知らん顔しておきますよ」


相馬は、SMSを好んで聴いているのは知っていた。
毎年十二月二十八日の、通称「仕事納めライブ」に、北川たちと行っていることも。
REAL WORLDの音は好みでなくとも、SMSが共演するとなれば、興味を惹くかもしれない。

相馬の表情が、予想を裏切って動いた。
いつものように、微笑んだまま、首を横に振り拒絶する、そう考えていたのに。


「......それは、悩むなぁ。
 REALとの共演は、二十周年の時に演ってたでしょ。
 あれ、すごく良かったからね。
 今度は、REALにより合わせるだろうけど、なかなかない機会だし」


それきり、黙って考え込んでしまったのだ。
それも、ハーブティーをカップに注いだ後に。

これも、いつもとは違う。

残り時間五分になれば、次の予約日時の話題に切り替わる。
話題の途中でも、傷つけることなく、逆に甘やかすこともなく、綺麗に切り上げる。

予想外の嬉しい出来事に、心が浮き立つのを感じながら、じっと相馬の返事を待った。


「この後、予定は入ってる?」

「何もありませんよ」


驚きは、まだ続いている。
引き留められたのは、初めてだ。

だからと言って、露骨に喜んではいけない。
警戒させては、せっかくのチャンスを逃してしまう。


「では、昔話につきあってもらおうかな」


これが、一番の驚きだった。

相馬の顔には、いつもの穏やかな微笑が戻ってきた。
正面を見ているようで、どこか遠い。

相馬が自身のことを語るのは、関係が変わってからは、一度もなかった。
それ以前も、多くは語りたがらなかったから、知っていることは、ほんのわずかだ。







僕はね、ある面では、君と同類なんだ。

ああ、セクシュアリティのことじゃなくてね。
気恥ずかしい言い方をすると、立ち位置、かな。

君も知っての通り、僕の実家は、医者の一族で、僕は本来なら跡取りのはずだった。
それが、病弱で体力もない、成人になるまで保つかどうかって感じの、期待はずれに生まれた。
幸いなことに、すぐ下に、妹弟が何人もできて、皆、健康で出来が良かった。
だから、跡取りにはならずに済んだんだけど、祖父と父が不憫がってね。
一生、働かなくても生きていけるようにしてくれた。

僕としては、跡を継ぎたいと思ったことなんかなかったから、運が良かったよ。
結局、跡を取ったのは、すぐ下の弟だけど、特に嫌がりもしなかった。
僕が病弱で、子どもの頃に何度も死にかけたのを見てるから、当然の成り行きだと思ったらしいよ。


ただ、体が弱くて甘やかされてきたせいで、他人と関わるのが、本当に苦手でね。
早死にするんだろうって、自分でも思ってたから、なるべく楽な方に楽な方に逃げてた。

つまり、常に傍観者の立場に自分置くことで、距離を保ってたんだよね。

何かに打ち込むとか、他人と深く関わるとか、ずーっとしてこなかった。
そんなことしちゃうと、長生きしたくなるんじゃないかと思ってたな。
体の弱さが悔しいこともあったけど、「何事にも執着しない」ようにしてれば、気にしないでいられる。

いつ死ぬかわからないのは、人間みんな同じなんだけどさ。
毎日、呪文のように「先は長くないだろう」って言われてたら、将来に希望なんか持てないよ。

科学の進歩と実家の財力のおかげで、結局は今まで生きてこれたけどね。

そんな風に生きてきたから、腹を割って話せる人間は、本当に少ない。

北川と原田、井上くらいかな。
ああ、井上は知ってるよね?
医学部で同期だったんだ。



国家試験に合格して、父親のコネを使って、研修も楽なところで終わらせた。
さて、どうしようかと思った時に、このクリニックを思いついた。

当時は、まだ精神科に通うって一般的じゃなかったからさ。
北川や井上のコネクションも使って、いろんな心療内科や精神科の医師と連絡を取った。
そして、それぞれの得意分野を考慮して、患者を振り分ける窓口になろうと思ったんだ。

僕自身がずっと診ることは、最初から考えていなかった。
いつ倒れるかわからない僕には、「長期間に渡って治療する」のは不可能だと思ってたからね。


君も、似たような感じだったでしょ?

妹や弟のために稼ぐことが第一で、自分のやりたいことや野心は考えもしなかった。
その時その時は一生懸命だったろうけど、基本的には流されてきた。

ここでは、本音で話せるのか、いつも諦めた顔をしてたよね。

治っても、ずっと予約を受け付けていたのは、そういう部分に共鳴してたんだろう。
自覚はなかったんだけど、今日、話していて気づいたんだ。


そして、その君が、大きく変化した。

さっき、優児君たちのことを話してた時、自分で気がついてた?

子どもみたいに嬉しそうな顔だったんだよ。
すっきりと明るくて、本当に楽しそうでね。
僕まで嬉しくなったくらいだ。

君の本質って、こういう感じなんだろうなって。
長いつきあいのはずなのに、初めて知った感じで、新鮮だった。


振り返って、自分のことも考えてみた。

早死するって割には、充分に生きた。
それも不自由なく、好き勝手に「傍観者の立場」でね。

もちろん、大きく変わるつもりはないよ。
元々が臆病者だしね、僕は。

そんな僕でも、君の変化を見てて、もう少しだけ踏み込んでみようかと思えたんだ。

残り少ない人生、変化も少しは必要なんじゃないかって、ね。






「だから、もっと、外に出てみようと思ってるんだ」

「じゃあ、カウントダウンは...」


ハーブティーを飲み干して、相馬が笑顔で頷いた。

今度もまた、いつもと違って、少し照れくさそうに。











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~ Comment ~

NoTitle

時計の螺子がカチッと噛み合って動き出した。

そんな感じに見えました。
そうですよ、相馬先生。世界は美しいです。 誰かがいなくなっても変わらず時間は流れます。

とある小説の一文に、
「悲しいのは、あなたとそれに関わった人たちだけ。 場所は場所にしかすぎません」
というのがありました。  本当にそうだと思います。

一歩踏み出すきっかけが 音楽 だったの、冬威には嬉しいでしょうね。


こちらは雪かきが日課になってます(苦笑
蒼生さんの方は雪に悩まされていませんか? 寒さはまだ続きますから、暖かくしてお過ごしくださいね。

Re: NoTitle

伊織の心境の変化は、冬威の変化がきっかけだったんじゃないですかね。
似ていると特別扱いしてきた冬威が、優児たちとの和解で変化した。
その変わりように驚いて、振り返って自分のことを考えてみたって感じで。
体が弱く年も年ですから(この時点で、伊織五十二歳)、大きな冒険はできなくとも、少しずつ頑張って欲しいです。

雪はチラつく程度で積もってはいません。
しかし、寒い!です。
猫二匹と、こたつの取り合いになってますw
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