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「Time After Time」
午後十時の薄明かり

午後十時の薄明かり 10   幸宏

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皮肉なことに、卓也の長期出張が始まってから、仕事には余裕ができた。
合併後の混乱が鎮まり、新しい流儀にも慣れ、残業することはほとんどない。
いい機会と思い、転職用に資格を取ろうと準備を始めた。

が、なぜか、気力がついていかない。

最初は、やっと嵐を抜けたばかりなのに、新しいことを始めようとしたからだと考えた。
少し休めば、仕事と同様にやる気が出るはずだと。

卓也のそばに戻るためだ。
これ以上、強い動機があるわけがない。

なのに、なかなか気力が湧いてこない。
どころか、体調もどこかおかしい。



週末、Crossroadで、大樹相手に、つい愚痴をこぼした。

今日は、北川を中心とした「仲間」が、珍しくほぼ出揃っている。

それぞれが小さなグループを作り喋っているから、自分の愚痴は気づかれないと考えていた。
しかし、一番遠く離れていた、笙と北川から質問が飛んでくる。


「夜、ちゃんと眠れてる?食欲はある?夜中に何度も起きたりしてない?」

「肩や首が変な凝り方してないかい?頭が重いとか、以前と違う感じがしてるんじゃない?」


詳しくは話していないのに、現在の不調を全て言い当てられた。
二人の表情が真剣で、少し不安を覚える。


「ん、心療内科を紹介するよ。
 早く対処しないとマズいからね。
 一時的なものなら、それはそれで安心できるしさ」

「ああ、聡志さんのお友達なら安心やわ。絶対に診てもらいや。
 吸収合併やら超遠距離やら、立て続けに来てるもん。
 自分の健康、過信してると酷い目に遭うよ」

「体が丈夫だと、不調には気づきにくいもんだしな」

「そうそう。病気慣れしてへん人は、先延ばしにして拗らせるよね。
 男の人は、病院行きたがらんのも多いし」


その場にいる全員が、一斉に自分を見た。
どの顔も心配そうな表情を浮かべている。
ここで意地を張るのは、かなりの覚悟が必要だろう。

知り合って間もないが、及川と北川、川上に反論して勝てるとは思えなかった。
特に及川は、たった二度しか会っていないというのに、自分の状況を的確に把握している。


「そんなにヤバいっすか?年のせいかと思ってたんですけど」

「まだ若いのに、何言ってるの。
 睡眠に異常が起こってるのが、サインなんだよ。
 寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に起きてしまう、目覚めが悪い。
 一ヶ月以上も続いてるのはマズいんじゃないかな」


北川が隣に移動して、じっと顔を覗き込んできた。
英一も、正面から見つめてくる。


「ああ、俺もやったことあるな。
 最初は薬で眠れてたけど、二度目は薬飲んでもダメだったっけ。
 駿がいてくれたから、なんとか立ち直ったようなもんだ」

「アホが、迷惑かけたおした時やろ?
 ほんま、英兄には申し訳ないことばっかりやわ」

「俺も弱かったんだよ。今なら、それがわかる。
 それに、お前が謝ることじゃねぇって。何度も言ってるだろ」

「わかってはいるんやけど、クセになってしもてるんよ。
 チビの頃から、ずーっとやからなぁ」



SMSは、デビュー直後に大きく揉めた。
長く口を閉ざしていたが、十五年を過ぎた辺りで簡単に触れるようになっていた。
音楽性の違いで、当時のリーダーだった宗次郎と英一がぶつかったのだと。

もっと複雑な事情があったのは、既に聞いている。
それを聞かされたということは、仲間だと認められた証なのも、大樹に教えられた。








「来週の土曜、午後一時に予約取れたよ。
 俺たちの友人だから、遊びに行くくらいの気楽な感じでね」

「そやな。構えてまうと行きにくなるやろ?
 相馬んとこは、病院病院してへんし、ゆったりと茶でもしばくつもりでええぞ」


帰り際、北川にメモを渡された。
メモには、「そうまクリニック」とあった。
住所と電話番号、最寄り駅からの案内図が書いてある。

精神科の予約はなかなか取れないと、鮎川たちが話していた。
それだけ心配して、骨を折ってくれたということだろう。


「来週、金曜は来れないけど、土曜の夜には来るつもり。
 よかったら、診断結果を報告に来てね。
 無理はしなくていいけどさ」

「いえ、絶対に来ます。わざわざ、ありがとうございました」


自然と頭が下がった。

北川だけでない。
この場にいる仲間たち全員が、自分のことを心配してくれている。
通いだしてから、まだ三ヶ月あまり。
それだけの関係なのに、みなが自分のことを当然のように気遣ってくれている。

ここは、奇跡のような場所なのだ。

普段の意地っ張りが嘘のように、ここでは素直に言うことを聞く気になる。
表面だけのつきあいではなく、心の底から仲間を大事にしているのがわかるからだ。



すっげぇよなぁ。
普通、こんなに親切にできねぇってば。

なんか、ボランティア団体みたいな、「善意の人」たちってわけじゃねぇもん。
敵に回したらヤバいのくらいは、初っ端から感じたし。

大樹が言ってたよな。


『笙さんに出会って、認めてもらったのは、人生最大のラッキーでした!』


とかってさ。
大げさなヤツだと思ってたけど、話聞いてるとそうでもねぇんだよなぁ。








異変が起こったのは、週明け、月曜朝。

目は覚めているのに、体が鉛のように重く、なかなか起き上がれない。
やっとの思いで、準備を済ませ、なんとか家を出た。

人だらけの、いつもの風景。
普段、気にしたことのなかった、他人の体温や臭い。
大音量の構内アナウンスや発車メロディー。

その全てに苛ついている、自分。

体の怠さが、イライラに拍車をかける。



うわ、吐きそう。

何なんだよ、一体。

北川さんが心配してたの、これかよ?!


会社、行きたくねーーーーー!!!



叫び出しそうになったのを、必死に抑えた。

開いたドアへ、後ろから押しこまれる。

最寄り駅までのたった十分が、何時間にも感じて、気が遠くなった。 











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