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「Time After Time」
午後十時の薄明かり

午後十時の薄明かり 8   冬威

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『REALが、カウントダウンは演る。
 俺たちとBANZAI-SANSHOのヤツらが助っ人だ。
 来るんなら、チケット手配するぜ』


英一から、メッセージが送られてきた。

既にチケットは手に入れていたので、感謝と断りの返信をする。


「ありがとう。でも、ユージからもらったから、二枚持ってるんだ。
 電話もくれたんだよ、あのユージがさ」


送信ボタンをタップしながら、つい笑いがこみ上げる。
英一の仲介で、康生と長生に再会した後、優児が直接電話をかけてきたのだ。






『...康生と長生から、話聞いた。
 悪かったな。ハルにも、ずっと嫌な思いさせた』


ボソボソと喋る声は、昔と変わりない。
感情的になっても、大声を出すことはない。
むっと黙り込んで、周囲を威圧するタイプだ。

元々、無口な上に、身長が高く、目つきが鋭い。
口を開く時は、必要最低限のことしか言わない。
それも、ミスを指摘する時がほとんどだった。

大声になったのは、あの夜だけだったことを思い出す。
康生を傷つけたと、怒り狂い、叫んでいた、優児。


「俺さ、みんなが羨ましかったんだよね。
 金に困ってなくて、好きなことやれて。
 だからって、コウセイにあんなことしたのは、間違ってた。
 ユージが怒るのも、当たり前だ」

『お前が、板挟みで苦労してたのは、気づいてた。
 だから、ギリギリまで我慢するつもりだったんだけどよ』

「わかってるって。鮎川さんが言ってた。
 みんな、ガキだったんだよ。
 俺も、ユージも」


小さく、笑う声が聞こえた。

初めて聞く、ユージの笑い声。


『ああ、エイチにも言われたよ。
 周りが見えない、ボンボンだったってな』

「ユージにそんなこと言えるの、エイチぐらいだよな」


英一の表情が見えた気がして、優児と向き合う勇気が湧いた。

互いを理解することなど、決してできない。
それは、若くて愚かだった頃の思い込みかもしれない。


「...ゴウの体調は、どう?」

『痛み止め使って、カウントダウンまでは演るって言い張ってる。
 まぁ、再開しても、昔みたいには無理だろうな。
 俺だって、脊椎が大きく歪んでるしよ。
 それでも、騙し騙し、演ってくつもりだ』


脊椎が歪む...知識としてはあった。
しかし、自分がそうであったように、優児たちも、ルイの忠告は受け入れていたはず。
余裕ができるとすぐに、専属の整形外科医とトレーナーを雇っていた。

長年の習慣には、勝てなかったということか。
記憶の中の優児は、常にギターを抱えていた。


『まぁ、みんな、ジジイになったってこったよ。
 レンさんみたいな、バケモンもいるけどな』

「そっか。俺、自分が年食ったなぁとは思ってたけど。
 なんとなく、ユージたちが年取るイメージがなくてさ」

『バーカ、お前より年上だっての。老眼だって始まってるぜ』

「え、メガネかけたりするの?!」


優児は、余分を嫌う。
アクセサリーどころか、プライベートではサングラスも着けたことがなかった。
そんなところでも、事務所の方針に合わず、フラストレーションを溜め込んでいた。


『ああ、作業してっと、細かい文字が見えねぇのは困るんだ。
 お前は、まだなのか?』

「あ、もうキテる。台本のふりがなは、メガネないと無理」

『往年の王子様も、年には勝てねぇか』


優児が、カラカラと明るく笑っている。

釣られて笑いながら、不思議な気分が襲ってきた。
今なら、素直に自分の感情を伝えることができるかもしれない。

そう、思えたのだ。


「信じてもらえないかもしれないけど...俺は、REALのファンだよ。
 できれば、ずっと演ってほしいと思ってる」

『......ありがとな』





そんなやり取りの後、人づてに優児がチケットを渡してきた。

チケットを眺めていると、英一や康生たちが、優児について話していたことが思い出される。


『知ってると思うけど、優児さんは、少し鈍くて頭が堅いとこあるんだよ。
 俺のことも、かなり長い間、気づいてなかったみたいだしな』

『あいつ、エイチにひどいこと言っちゃったの、わかってはいるんだよ。
 ただ、タイミング逃して、謝れなくなっちゃってるの』

『あいつらしいよな、ったくよ。キャシーに会うまでは、遊びまくってたくせに』

『キャシーがいたから、REALは続いてるんだと思う。
 あいつの原動力は、いっつも「愛」だもんな』

『うん、本人に言うと黙り込んじゃうから、言わないけどね』


共に過ごしていた頃には、想像もつかなかった、優児の姿。
それだけ、視野が狭かったということだろう。




『俺は、どこまで行ってもノーマルだから、気持ちに応えることはできない。
 だけど、君が一途に想ってくれたことは、嬉しいと思うよ。
 投げ飛ばしちゃって、ごめんね』


康生は、強く焦がれた、あのままだった。

最後に、優しく笑って、そう言った。



やっぱ、コウセイは綺麗だよな。
見た目だけじゃなくて、中身がほんとに綺麗なんだよな。

だから、俺、好きだったんだ。
全部が全部、欲しいとしか思えなかったけど。



優児との絆の強さや、柔軟な精神。
周囲への細やかな気遣いに、何より、ヴォーカリストとしての才能。

自分が憧れて止まない、全てがそこにあった。

もちろん、聖人ではないこともわかってはいる。

穏やかに笑って、裏では策を練り、関係者に根回しもする。
要領の悪い優児をフォローするには、腹黒さがなければ無理だ。

知ってもなお、汚いと思うことはなかった。
逆に、自分と同じ人間だと、安心さえしていた。

その康生に、嫌われていなかっただけではない。
嬉しいとさえ言われ、報われたように感じた。
あの頃の、満たされることはない渇きが、嘘のように思えた。



俺、見る目はあったってことだよな。



古傷が勲章にすり替わり、我ながら単純だと、また笑いがこみ上げる。

こんなことが起きるのなら、年を取るのも悪くない。

素直に、そう思う。











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Re: NoTitle

Mさん、こちらこそよろしくお願いします。

年を取ると、視野が広がるだけでなく、細かいことがどうでもよくなってきたり(笑)
まだ「何者でもない自分」に苛立って、コンプレックスも持ちますよね。
特に、男の子はマウンティングに必死だったりしますし。

人によっては、ギラギラしてるんでしょうが、多くのアラフィフは、先が見えてスローダウンしてくる年齢じゃないかと思ってます。
冬威を通じて、そこら辺りの心境を書いていきたいと考えてます。
スローペースですが、おつきあいください。
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