「True Colors」
金剛不壊

金剛不壊 12

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帰り着くと、郵便受けに、宅配の不在通知票。

兄貴から、俺たち二人あて。
中身は、ワレモノって書いてある。

何を送ってくれたんだろ。
今夜は、もう無理だから、明日の朝、忘れずに電話しようっと。




「要が知らなかったのは、驚いたね」


烈が、思い出して、また笑う。


「でも、要らしいよ。
 普段は、俺たちに合わせてくれてるんだなって、実感した」

「そうだね。要も笙も、曲を決める時、何も言わないし。
 自分の好きな曲を演りたいとは思わないのかな」

「あ、それは質問したことある。
 二人とも、バンド自体が好きだから、気にならないんだって。
 どうしても演りたいと思ったら、意見言ってるってさ」

「あー、ほんっと、似た者同士だなぁ」


顔を見合わせて、ニコニコしちゃう。
心が、ほわほわと温かくなる。



大好きで大事な烈と一緒に、大好きで大事な仲間とバンドを組んでる。
それが、どれだけ幸せで、どれだけ運のいいことか。
絶対に、忘れちゃいけないんだ。


車での由人の言葉も、すっごく嬉しかった。

誰一人、黙ってたことに、文句を言わなかった。

烈が、筋を通してくれた。

兄貴は、反対するどころか、祝福してくれた。



「いつか、烈のお兄さんに挨拶したいなぁ」

「そう言い出すと思ってた。
 兄貴には、こっちに出張がある時にでも、晩御飯食べようって連絡してある」


くすっと笑う烈は、ほんとに頼もしくて可愛くて。

手のひらの上で転がされてる気がするけど、それが俺たちなんだよね。
烈がしっかりしてるから、俺が鈍くても気が利かなくても、なんとかなってるんだろうし。


「ナナは、少し鈍いところがあるのは確か。
 でも、昔から優しかった。
 俺の嫌がることはしないように頑張ってくれたもん。
 高校の頃から、それは変わってない」


烈の両手が、俺の顔を包み込む。


「居心地がいいのは、ナナが頑張ってくれてたから。
 そう気がついた時、他の誰にも感じたことない気持ちが湧いてきた。
 俺もできるだけのことをしようと思った。
 ずっと待てると思ったのも、ナナだからだよ」


顔が近づいてきて、チュッと軽くキスされる。
好きって自覚した日のことを思い出して、また泣きそう。


「そういう感激屋なとこも好き。
 すっごく可愛いもん」


我慢できなくて、涙が零れてくる。
好きとありがとう、それだけを繰り返す。

烈の腕が首に回ってきた。
ギューっと抱きしめて、烈の熱を体中で確かめた。






翌朝。

宅配の電話をすれば、すぐに持ってくるって返事。

朝御飯を食べ終わって、洗濯を始めた頃、インターホンが鳴った。

少し重い箱を開ければ、中にはクリスタルの置き時計、そして手紙。



『二人が、これからもずっと同じ時間を歩いて行けるように。
 そばにいられない俺の代わりに、この時計を送る。
 見守ることしかできないが、幸せを祈ってるよ』


二人で、何度も読み返す。
烈が、小声で「ありがとうございます」って、何度も呟いた。



時計を出して、ローボードに置いてみた。

シンプルな文字盤。
よく見たら、裏側に小さく、俺と烈の名前が入ってる。

安アパートには似合わない、オシャレで高級な感じ。
俺には、よくわからないけど、烈が驚いてたから、高いんだろうな。


「いつか、この時計が合うような部屋に住もうね」

「うん、みんなが気軽に遊びに来れるようなとこ探そう。
 兄貴と姉貴にも、来てもらえるといいな」



洗濯物を干して、二人でゆったりコーヒータイム。
一緒に住んでてよかったなって、また思う。


ソファに並んで座って、これから先のことを考える。


家を買うにしたって、名義はどうするのかとか、ローンとか、ややこしいことはたくさん。
うちの会社では、おおっぴらにはできないし、バレたら辞めなきゃならないと思う。
だから、加藤に言われるまでもなく、資格取得や英会話は頑張らないとね。

それは、烈も同じみたい。
今の仕事は、年を取ったら厳しくなってくるって言ってるし。
辞めないにしても、他の部署にも行けるように、頑張るって。


忙しいって、言い訳しちゃいけない。
不器用だって、きちんと考えないとダメだ。
だからって、焦らなくてもいい。

必要なのは、烈と向き合って、話し合うこと。

烈が気を回してくれるからって、甘えてはいられない。


烈が、何か思いついたかな?


「養子とかって、今は考えられないけど。
 法律が変わることもあるかもしれないし、気長に待とうね」

「うん、俺もそう思ってる。
 今は、もっとスキルアップして、準備する時期だよね」

「そうだ、お兄さんにお礼言わなきゃ!
 メールするでしょ?俺からも、「ありがとうございます」って忘れないで」


......まただよ。

ほんっと、俺って気が利かない。


「落ち込まなくていいの。
 ナナの足りないところは、俺が頑張る。
 俺が足りないところは、ナナに頑張ってもらうんだから」


腕の中にいた烈が、体を起こして覗き込んでくる。


「要と笙みたいに、何でもできるわけじゃないじゃん?
 比べちゃダメなんだよ。
 俺たちは、俺たちなんだからさ」


言い聞かせるように、ゆっくりそう言って、俺のほっぺを軽くつねった。
烈にできなくて、俺にできることって、何だろうって考える。

すぐに気づいて、烈が説明してくれる。


「他人と向き合うようになって、理解できなくて不安になることが多かった。
 でも、ナナと一緒にいると、不安が消えて、なんとかなるって思えるようになった。
 ナナは、滅多に落ち込んだりしないし、いつも前向きじゃん。
 それに、間違っても、きちんと間違いを認める素直さも、大好き」

「細かいことに気づかないから、前向きなのかもしれないよ?」

「それで充分じゃん!
 みんなも、ナナのそういうとこが好きなんだってば。
 昇平たちが言ってたよ。

 「うちのバンドは、七海がドラムだから、バランスがいいんだ。
  中心で、どっしりリズムキープしてくれるから、安心してプレイできる」

 俺も、その意見は大賛成」


うはー、照れくさい。

でも、嬉しい...。

あ、ちゃんと言わなきゃね。


「烈が、みんなと俺を調和させてくれてるから、そう感じるんだよ。
 ベースが烈で、ほんとによかったと思ってる」

「そういう意味でも、俺たちは「いいコンビ」だってことだよね?
 なんとなくで始めたベースだけど、演っててよかったな」



ニコニコと笑ってる烈は、ほんっと嬉しそう。

「好き」じゃ足りないくらい、大きな感情が湧いてくる。

これが、愛しいってことなのかもしれない。



「これからも、俺が鈍くて迷惑かけることがあると思う。
 その時は、すぐに言ってくれるかな。
 烈が哀しい思いをするのが、一番イヤだからさ」

「そう思ってくれるのが、一番、嬉しいんだよ」




時計の針が、一秒一秒、進んでいく。

烈の鼓動と同じリズムで、刻んでいく。

決して遡ることはできない。

ほんの一秒でさえも。




明日も、またいつものように、別々に仕事。

だけど、この一瞬があるから、また頑張れる。


「後悔しないし、させない」


力強い、烈の言葉に、俺も、大きく頷いた。


「俺も、後悔しないし、させない」


愛してる、烈。



















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~ Comment ~

終わっちゃった。 さみしい。

明日から、冬の風が身に染みそうです。
ナナと烈の、ほっこりした感じが、猫を抱いてる時のほんわりした気持ちに似ていて、読んでて楽しかったので。

ひとつづつ気が付いて周りが見えるようになってく。
揺れたことがあっても、芯はブレない。
近所のおばさん気分で、そんな彼らを見守っていたような・・・。


そしてやっぱり、笙ちゃんから笙さんになる彼女を見られたのが嬉しかった!
しばしば主人公くんたちを忘れてしまったこと、ごめんなさい<(_ _)>

最後になりましたが、蒼生さん、お疲れ様でした!

Re: 終わっちゃった。 さみしい。

ますみさん、いつもありがとうございます。
主人公が、一番凡庸な話でしたが、それでも読んでくださって嬉しいです。

斜に構えて大人ぶっていたけど、実は鈍くて何もわかっていなかった。
周りの人間に助けられて、自分のことに気がついて、七海も成長していったと思います。

七海の目を通しての、笙の姿も楽しんでいただけてよかったです。
隠しコメや拍手コメでリクエストいただいていたので、いい機会だし書いてしまえって感じで。


少しだけ休みをいただいて、来週から再開します。
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