「True Colors」
金剛不壊

金剛不壊 11

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パーティ後、初練習。

終わったら、晩御飯を新居でご馳走になる予定。
笙が明日も休みだから、ちょうどいいって言ってくれたんだ。

結婚したのに、なんにも態度が変わらなくて驚いたけど。
よく考えたら、変わる要素ってないんだよね、この二人。

パーティ前に引っ越してたし、仕事を辞めるわけでもないし。
笙なんか、会社でも「及川」のまんまらしい。
病院で「折島」って呼ばれても、気づかなくて叱られるって笑ってる。



間取りは1LDKで、リビングダイニングがかなり広い。
パソコンデスク二つと本棚が、壁にくっついて並んでる。
室内は、茶色と緑色が調和してて、すっごく落ち着く。
新婚さんって言うより、落ち着いた社会人の共同生活って感じ。

四人がけのダイニングテーブルは、少し大きめ。
椅子を足して、六人で座れるようになってた。

二人とも友達が多い。
気軽に遊びに来てもらえる間取りが、希望だったらしい。
長方形のこたつ台もあるから、まだまだ人数は余裕だね。



「今、ビーフシチュー温めてますから。
 サラダでも食べててください」


出されたサラダは、みんなが大好きな、笙ん家のオリジナル。
大根、ニンジン、ブロッコリー、白と緑のアスパラガス、プチトマト、セロリ。
たくさんの野菜を、アンチョビとオイルサーディン、レモン汁と塩コショウで味付けてある。
でっかいタッパーが三つもあったのに、ペロッと食べちゃった。

よく、おばさんが出してくれたんだよね。
苦手な野菜が入ってても、この味付けだと不思議と食べられるんだ。


「シチューは、昨夜、要が煮込んでくれました」

「牛テールを、初めて使ってみたんだ。
 舌に合うといいなぁ」


舌に合うどころか、すっごく美味しくてさ。
缶詰のデミグラスソースを使わなかったって聞いて、さらにびっくり!


「学生寮と違って、台所を占領してもいいのが嬉しくってさ。
 社員寮には台所がなかったし、ストレス溜まってたんだ。
 みんなに食べてもらうと思ったら、つい、はりきっちゃった」

「次は、餃子を皮から作るて言うてます。
 これで、片づけも完璧やったら、ありがたいんですけどね」

「そこまで言うてやるな。
 要やったら、すぐに慣れるやろ」

「由人の言う通りや。
 それに、弁当まで自分で作るような男は、そうそうおらんぞ」


昇平と由人の言葉に、笙がニヤッと笑う。
どうしんだろう?


「ここにいる男五人のうち、三人は自分で作ってるやん。
 いい年して、おばさんに甘えるの、いい加減にしといたら?」


あ、確かに。

感心してたら、昇平が詰まってる。
烈は、笑って手を叩いてる。


「昇平とは一緒にせんといてくれるか。
 俺は、一通り、家事できるわ。
 それに、もうすぐ一人暮らしの予定やしな」

「え、お前、家出るんか?」

「せやねん、兄貴夫婦が同居するんやと。
 甥っ子が付属志望やから、受験が終わってからになるけどな」

「ああ、それでリフォームて話になってんのか」


なんとなく、昇平が淋しそうなのは、気のせいかなぁ。


「ま、そういうわけで、駅前に安いとこ探してくれるか。
 昇平、頼んだで」

「駅前て...会社に近いとこやないんか?」

「市内やと、車処分せんならんやろ。
 実家にも、すぐに顔出せるとこがええねん」


ああ、由人まで引っ越しちゃうって、取り残されるような気になったんだ。
駅前って聞いて、いきなり元気が戻ってる。
俺たちだけじゃない、笙も引っ越しちゃったもんね。

淋しがりの昇平らしいよ。
俺も人のことは言えないんだけどさ。




食べ終わって、後片付けは全員で。

俺が洗って、烈が濯いで、要が棚にしまう。
昇平と由人が、テーブル周りを掃除。
その間に、笙がコーヒーを淹れてくれた。


今度は、こたつをローテーブル代わりに、ラグに座ってお喋り。
二人の新婚旅行や、みんなの仕事の話、SMSの十周年について。


ひとしきり話して、会話が途切れた。

うん、ここが切り出すタイミングかな。


「あのさ、今まで黙ってて、ゴメンね」


まずは、謝ろうと思って、頭を下げた。
烈と笙以外の三人が、驚いてる。


「タイミング逃しちゃったから、言えなくなっちゃってさ」

「いきなり、どないしてん?」

「えっとね、俺の兄貴って、HAKONIWAのトーイなんだ。
 親が離婚してるから、苗字が違うんだよね」


どんな反応が返ってくるのか、ドキドキしながら待った。

しばらくの沈黙の後、昇平が「あぁ」って声に出す。


「えらい高いマンションやったから、かなりの金持ちやとは思てたけど。
 そんなら、納得できるなぁ」

「うん、もう頼ってはいないけど、分不相応な贅沢してたと思う。
 俺と姉貴のことは、事務所の社長とマネージャーさんしか知らないんだ。
 笙、烈、今まで黙っててくれて、ありがとね」


あれ?要、どうしたんだろ?
キョトンとしてる。


「ゴメン、トーイって誰?」


すまなそうに質問してくるから、思わず吹き出しちゃった。
気負ってたのが、バカみたい。

みんなも笑っちゃって、声我慢するの必死になってる。


「ほんま、要らしいなぁ」

「うん、興味がないことには、無頓着もいいとこだよね」

「HAKONIWAは、一度もコピーしてないもんなぁ」

「スコア読めるし、音源渡してるから、邦楽演れてるけどね。
 普段は、ほんまにプログレしか聞かへんのよ。
 ああ、要、ちょっと待って」


由人、烈、昇平が、笑いながら喋ってる。
笙も続いて、すぐにパソコンを立ち上げた。


「要、この人が、七海さんのお兄さん」


HAKONIWAのサイトから、兄貴のページに飛んで、要に説明してる。
要は、覗き込んで何度も頷いた。


「ああ、この人かぁ。テレビで見たことある」

「英兄のお友達やねん。せやから、私は知ってたけどな。
 七海さんが黙ってはるから、言わんといた。
 第一、言うても言わんでも、あんたには関係ないやろ」

「うん、そうだね。
 お兄さんが誰でも、七海は七海でしょ?」


要の言葉に、昇平も由人も頷いてくれて。

......俺、情けないけど泣きそうになった。



「相変わらず、涙もろいなぁ。
 見た目チャラいくせに」

「まだ泣いてないよ。
 それに、見た目は関係ないだろ
 嬉しくて、ほろっと来たけどさ」

「ほな、もっと泣かしたろか?」


昇平がからかってきたから、ムキになって言い返しちゃった。
しんみりした空気は、それでどこかへ消えてった。

みんなで笑って、和やかにお開き。
次は、家で鍋でもしようって約束した。



先に出た由人は、近くのコインパーキングへ。
近いからいいって言ってるのに、俺と烈も乗れってうるさい。



「昇平だけやのうて、俺のことも信用してくれたんやな。
 照れくさいけど、言うとくわ。ありがとな」


信号待ちの間に、由人がボソッと話す。

今度は、昇平もからかわなかった。











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