「True Colors」
金剛不壊

金剛不壊 10

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「あ、兄貴。大阪で仕事がある時、会えないかな。
 顔見て話したいことがあるんだ」


留守電にメッセを残しておいたら、兄貴からメールが来た。
来月封切りになる主演映画の宣伝で、二週間後に来るらしい。
翌日は広島で仕事だから、大阪泊まりにしてくれるそうだ。

烈に都合を聞いて、三人で晩御飯を食べることにした。
由人に相談して、いつも宿泊するホテル近くに、店を予約する。
由人の知り合いの店で、個室があるとこ。

由人には、兄貴のことは話してない。
それでも、事情があるってわかってくれた。

家に来てもらうことも考えたけど、バレるのは兄貴が困る。
ホテルだと、烈が気を遣うと思うし。



今度の集まりで、メンバーには兄貴のことを話そうと思う。
きっかけを逃したまんまだったから、なんとなく話しにくかったんだよね。
でも、要と笙が結婚したことと、烈が挨拶しようとしたことで、踏ん切りがついた。

今まで、奇跡的にバレてないだけでさ。
テレビや雑誌に、いつか、嗅ぎつけられてもおかしくないじゃん?
そんな風にあいつらに伝わるよりは、自分で話しておきたい。

そう思ったんだ。




兄貴との約束の日。

なんとなく落ち着かなくて、いつもより仕事に集中できなかった。
忙しい時期じゃなくてよかったぁ。

周りには、出張の報告書をつき返されたせいだと思われたらしい。
係長たちが、「気にするな」って励ましてくれたから、たぶん。

わかってたことだから、それで落ち込んだりはしなかったんだけどね。
仕事に集中できなかったのは事実だから、申し訳ない。

兄貴は反対しないだろうけど、どんな顔するんだろうって。
つい、考えちゃったんだよね。


先に烈と待ち合わせて、二人で店に向かった。
烈と兄貴の二人っきりになると、話しにくいと思ったし。

烈は、少し緊張してるのか、表情が堅い。


「大丈夫?無理しなくていいよ?」

「大丈夫だってば。
 ナナこそ、大丈夫?顔、強張ってない?」


え、俺、緊張してるのかな。
自分ではわからないんだけど?


「ちゃんと仕事した?気になることがあると、集中力が落ちるでしょ」


うう、さすが、烈。
俺のことなんか、ほんっとお見通しなんだから。


「ゴメンね。なんか、気になっちゃってさ。
 俺がこんな風だと、烈も兄貴も困るよね。
 気合入れるから、ちょっとだけ待って」



謝って、大きく深呼吸。
烈の顔を見て、何度も思ったことを、また思う。

烈が、隣にいてくれるから、俺は幸せ。
烈の顔が暗くなるのは、絶対にイヤだ。

同じように、烈も思ってくれてるんだ。
だから、兄貴に挨拶って考えたんだよね。


ああ、親離れか、これ。

俺、笑えるくらいに鈍いなぁ。
経済的に自立して、迷惑かけないようにってばっかり考えてたな。

精神的には、まだまだ頼ってたんだ。
だから、兄貴の反応が怖かったんだ。

兄貴と姉貴には悪いけど、俺にとっての「一番」は、烈。
二人が反対しても、俺は、烈を選ぶ。
当然だと思ってたつもりなんだけど。
どこかで、兄貴に見放されるのが怖かったんだな。


「うん、これでOK。
 心配かけて、ゴメンね」


烈が笑ってくれたから、怖いのは消えた。
帰りに笑えなくても、筋を通すことが、今は必要。

これも、仲間に教わった。





店に到着。

俺も兄貴も好きな中華にしたんだ。
マナーとか気にしてると、話しにくいと思ったし。

名前を告げると、奥の方に案内された。
まだ、兄貴は来ていない。

前もって、コースを予約しておいた。
今日は、俺の奢りだから、ゴージャスとは程遠い。
兄貴の舌には合わないかもしれない。
でも、由人が教えてくれた店だし、美味しいとは思うんだ。


椅子に座って、飲み物を頼んでいると、兄貴がやってきた。
店の人は気づいてるっぽいけど、何も言わない。


「久しぶり。兄貴はビールでいい?」

「はじめまして、江藤烈です。
 いつもお世話になってます」


烈も一緒だってメールしたのに、兄貴が驚いてる。
なんでだろ?


「あ、はじめまして。ジロジロ見てゴメン。
 ...いや、驚いたな。実物の方が、数倍整ってる。
 ななも、俺と同じで面食いなんだなぁ」

「見た目じゃないんだってば!」

「わかってるって。烈君、失礼したね」


烈は真っ赤になっちゃうし、俺は、それ以上、何言っていいかわからないし。
どうしようかと思ってたら、兄貴が爆笑してる。


「とりあえず、飲み物頼もうか。
 なな、俺もお茶でいいよ。
 今日は、アルコールは要らない」

「う、うん。じゃあ、お茶頼んで、料理もスタートしてもらうね」


兄貴がさぁ、ニコニコして、俺たち見てるの。
烈が一緒ってことで、もう想像ついてたんだろうな。


前菜から始まって、五品。締めにチャーハン。
デザートは、俺も烈も好きなマンゴープリン。
由人から、ここのは美味しいって聞いてたから、楽しみにしてたんだ。

食べてる最中、兄貴は、料理を皿によそってくれたり、お茶を注いでくれたり。
ずーっと、嬉しそうにしてて、話も振ってくれる。
俺と烈の仕事の話を聞いて、楽しそうだ。


お店の人がいなくなって、烈が深呼吸した。


「こんなこと言うと、驚かれると思いますが。
 七海君と、ずっと一緒にいたいと思ってます。
 お兄さんには、きちんとご挨拶したかったので、七海君に連絡を取ってもらいました。
 お忙しいのに、無理を言ってすみませんでした」


深々と頭を下げる、烈。

兄貴は、動揺もしてないし、哀しそうでもない。
それどころか、優しい顔をして微笑んだ。


「ありがとう、烈君。
 七海のこと、よろしくお願いします。
 君がいてくれたから、こいつも成長したんだと思う。
 本当に、ありがたいと思ってる」

「やっぱり、気づいてた?」

「ああ、お前はわかりやすいからな。
 ちぃも気づいてるんじゃないか」


やっぱりかぁ。予想はしてたけど、恥ずかしいかも。

でも、反対されなくてよかったよ。
烈も、ほっとしたと思う。

あ、言っとかないとね。


「兄貴、老後の海外移住計画は、烈も加わるからね」


兄貴は、声を上げて笑ってる。
俺、本気なんだけど。


「せいぜい稼いどくよ。
 お前に面倒かけないようにな」


冗談だと思ってるっぽいなぁ。
まぁ、いいか。先は長いんだしね。

それまでに、兄貴が本当に好きで、兄貴のことを好きな人が現れるかもしれない。
その時は、俺も「冗談に決まってるじゃん!」って、笑えると思う。



別々に店を出た方がいいだろうから、兄貴に先に行ってもらった。
払うってうるさかったけど。
今日くらいはカッコつけさせてって笑えば、兄貴も烈も笑ってた。

兄貴の背中を、二人で見送った。
少しだけ、肩が落ちてる気がしたけど、声はかけなかった。

兄貴だって、カッコつけたいだろうから。

ありがとう、兄貴。











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