「True Colors」
金剛不壊

金剛不壊 7

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全部、終わった!

金曜は、時間が余っちゃって、どうしようかと悩んだくらい。
でも、みんな時間は余ってたから、会議室でダラダラしてるうちに時間は過ぎた。

烈、やっと帰れるよー!!


たった三日間なのに、すごく疲れたんだよね。
オジサンたちには、「若いくせに」って叱られたけどさ。
いくら鈍かろうと、いつもの環境とは全く違うところで、初めての業務は荷が重いんだってば。

って言うか、鈍いから余計なの!
体が疲れるより、精神的に疲れる方が、俺にはつらいの!!




空港へ送ってもらって、チェックインしようとしたら、空気がおかしい。

案内表示板を見ると、俺たちの便名のとこに「delayed」の文字。

うへー、遅れてるわけ?!

キャンセルじゃないだけ、まだマシなんだろうけど。
予定時刻を表示しないのが、すっごく気になる。

ただ、チェックインは、もうやってるんだよなぁ。
そんなに大幅には遅れないってこと?


「とりあえず、出国手続きはやっておこう。
 日本の航空会社と違って、探したりはしてくれないからな」


次長に言われて、そんなものなのかって、出国カウンターへ行く。
出国カードにサインし忘れてて、係の人に睨まれちゃったよ。



案内放送や表示板に気をつけながら、各自、時間を潰すことになった。
俺も加藤も、お腹が空いちゃって、ウロウロ探す。

広いロビーの中、ショップはたくさんあるけど、レストランがなかなかなくってさ。
またまた、笙のメモが大活躍。
加藤のガイドブックには、ジャカルタ空港の中までは、詳細な記載がなかった。

笙が言うには、空港内は入れ替わりが激しいんだそうだ。
「味は期待するな」って書いてあるのに笑いながら、加藤と探す。


探し当てたレストランには、次長たちがいた。
どうやら、喫煙席があるのは、ここだけらしい。
透明なパネルで仕切られた、奥のテーブルに陣取ってる。

こっちには気づいてないみたい。
気づかれる前に早く食べちゃおう。
あんな煙だらけの場所で、食べる気にはならないもん。

ただでさえ、あんまり美味しくなさそうなのにさ。
笙のメモは、ほんと正確。




「まだ表示されないねぇ」


晩御飯を食べてから、三時間経った。
それでも、予定時刻さえ表示されない。

これは、長くなるのを覚悟しないといけないのなぁ。

開き直って、おみやげを買ってみたりもした。
ほんとは、高いからやめとけって、書いてあるんだけどね。
烈と会社とメンバーに、コーヒーやティーバッグを選んだ。
お菓子はマズいんだって。



「眠いんやけどなぁ。
 寝てる間に、飛行機出たら困るし」

「寝てていいよ。俺、起きてる。
 どうせ落ち着かなくて、眠れないと思う」

「ああ、ライブに間に合うか心配なんか。
 そんだけ、大事やねんな」


加藤が、しみじみと言っててさ。
その口調も姿も、オジサン臭い。

だけど、不意を突かれたせいか、なんか感動しちゃったんだよね。

俺のこと、ほんとにわかってくれてるんだなぁってさ。

いくら読みやすいからって、理解しようとしなければ、そんなことまではわからない。
こいつにとっては、手のかかる同期かもしれないけど、見下げたりもしないしさ。



「うん、助けてもらってばっかだからさ。
 こんな時くらいは、頑張りたいんだよ」

「そっか、飛行機、早く出るといいなぁ」


加藤が、思いっきり、あくびしてる。

昨日の夜も、あまり寝つけなかったのかな。
ベンチに座ったまま、スーッと眠っちゃった。



加藤のバッグもしっかり抱えて、音楽を聴いてた。
テレビはインドネシア語だし、わけがわかんない。
ただひたすら、表示版を見つめてた。

予定時刻が表示された!

...と思ったら、搭乗開始は三時間後だって。


えーっと、そうすると...関空到着は何時だ?
げっ、市内に戻るの、お昼を大幅に過ぎちゃうじゃん!!

式どころか、パーティにも間に合わない......。
正午から式で、ライブは午後一時半の予定だもんなぁ。


あーあ、がっかり。
電話でもした方がいいのかなぁ。

あ、ダメだ。
時差忘れてた。

日本は真夜中だもん。
こんな時間に電話なんかしちゃ、迷惑もいいとこだ。

うーん、参加したかったなぁ。
残念だなぁ。

ちぇっ、つまんないの。
決めたのは俺だけどさぁ。



......俺、女々しい?


ぐずぐず考えても、飛行機は早くならない。
自分が決めたことなんだから、諦めなきゃね。



することがなくて、笙のメモを読み返してた。
最後の一枚がくっついてて、読んでなかったことに気がついた。

そこには、短いメッセージ。


『当日の朝、フライト情報をメールするよう、同期に頼んであります。
 遅れたとしても、すぐに対応できますから、やきもきせずに。
 慰労会だけでも、来てくださったら、嬉しいです』


............。


何度もメッセージを読んで、俺、感心しっぱなし。

さすが、笙。

用意周到って言葉は、笙のためにあるようなもんだよね。
ああ、男前もそうかもしれない。

ウェディングドレスでドラムを叩くのは、すっごく大変だと思うのに。
俺に気を遣ってくれて、落ち着かせようとしてくれた。
よく考えたら、自分だって準備で忙しいのに、この資料を用意してくれたんだもんね。
感謝してたくせに、そこに気づかないとこが俺なんだけどさ。




「すごいな。そこまで考えてんのか」


いつの間にか、加藤が起きてた。
手元を覗き込んできて、感心してる。


「最後のページがくっついてたみたいでさ。
 さっき、気がついたんだ。
 ああ、ほら、お前が言ってたじゃん?中川係長のこと。
 考えたら、この子って、中川係長と似てるんだよね」

「ああ、あんな感じなんかぁ。
 そら、仕事できるやろ」

「うん、そうだと思う。
 本人は、給料分を働いてるだけって言ってるけど」

「ほんまに仕事できる人間は、「できる」オーラ出さへんもんやって。
 敵作ると、仕事しにくうなるやろ?
 俺みたいなんは、どうしたって目立つから、「頑張ります」ってやるけどな」



加藤の言葉にも感心して、さっきの自分を反省する。

うん、やっぱり来てよかったんだよ。
嘘つかなくて済んだんだしさ。

今回のことは、ほんっと、いい経験になった。

中川係長の凄さを思い知った。
異文化や大人の事情も覗き見た。

加藤ともゆっくり話して、いいとこ再発見したし。
前から思ってたけど、こいつの方が、ずっと大人なんだよね。


「パーティは無理だろうけどさ。
 俺、この出張、来てよかったよ」

「えらい、サバサバしとんな。
 あんなに楽しみにしとったくせに」

「加藤も一緒だったのが大きいかな。
 じゃないと、気づかなくてイライラしっぱなしだったと思う」


素直に思ったことを口にしたら、加藤が照れて横向いた。


「ほんま、お前は......。
 チャラそうに見えんのに、不器用で。
 んで、そういうとこがタラシやねんな」


加藤が小声で言ってるけど、俺、最後のが意味わかんなくて。

聞き返したら、「もういい」って、話を変えられちゃった。











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