「True Colors」
金剛不壊

金剛不壊 6

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ホテルの朝御飯は、そこそこ食べられた。
昼は社食の予定だから、食べられる時に食べておこうっと。

加藤は、昨夜のカップラーメンが美味しくなかった反動で、ものすごく食べてる。
昼も期待はできないよねって、小声で話してたら、木下係長が笑ってた。



迎えが来て、マイクロバスに乗り込んだ。
昨夜とは違って見える、朝の風景。
高層ビルが並んでて、すっごく都会なのは昨日も思ってたけどさ。
とにかく、朝のラッシュがすごいんだって!

うわ、バイクに家族四人で乗ってる!
車よりバイクの方が多いんじゃない?!
え?あれ?!信号守ってなくない?
ガンガン、人が横断していくんだけど、ブレーキ踏まない...。

今から本番だって言うのに、俺も加藤も驚きっぱなし。
俺でさえ動揺したんだ。加藤、大丈夫かなぁ。




社内に案内されて、会議室でコーヒーが出た。
飲みなれたインスタントコーヒーの味に、逆にホッとする。

次長と現地社員の説明を聞いているうちに、落ち着いてきたのかスイッチが入った。
加藤と「頑張れ」ってエールを交わして、担当セクションへ移動。


もう何人も見たけど、社内にもいるんだなぁ。
スカーフを頭に巻いてる女性社員さんたち。
ああ、それと天井にメッカの方向を示すマークもある。

イスラム教の国なんだなって、読んだはずなのに、実感するって言うか。
同じアジアでも「異文化」なんだよね。

好奇心が湧いてくるけど、今はそんな場合じゃない。
うん、仕事仕事!


提出された書類を、ひたすらチェックする。
英語が併記されてるから助かった。

アシスタントについてくれたワティさんは、同い年。
スカーフ姿が可愛らしくて、年下かと思った。
休憩の時に話してて、すっごいエリートなんだってわかってさ。
情けないけど、ちょっとビビった。

インドネシアで一番の大学出身で、東大に留学もしてたらしい。
日本語は、すっごく上手。俺より、難しい言葉使うしさ。
感心してたら、驚いた顔。


「村尾さんみたいな人、珍しいです。
 出張で来る日本の人は、みなさん、私のことを質問したりしません。
 ありがとう、も、あまり言われませんよ。
 機械みたいに仕事をして、それで終わりです」


へ、そんなものなの?
だって、これからも会うかもしれないのに?

ポカンとしてたら、クスクス笑ってる。
あ、鈍いのバレちゃったかな。


「村尾さんは、正直で素直な人ですね。
 最初に見た時とは、印象が全然違います」

「第一印象と違うってのは、よく言われるんだ」


やっぱりって頷かれて、俺も笑っちゃった。
せっかくだから、和やかに仕事したいし、ちょうどよかったかも。



ワティさんのアシストのおかげで、三時には全部終わっちゃった。
途中で礼拝休憩があったのには驚いたけど、それも就業規則にあるんだよね。

お礼を言って、こっそり日本の手土産を渡す。
サンドイッチを買った時、ついでにいくつか携帯ストラップを買っておいたんだ。

これも笙のアドバイス。
小さくてかさばらないし、これからのこともあるなら、持っていけって。

エリートでも女の子なんだな。
ニコニコして、「可愛いですねー!」って、すっごく喜んでくれた。

笙、感謝!



配布されたパソコンで、報告書作成開始。

テンプレートはデスクトップにあったから、項目をチェックしていくだけ。
最後の総括だけ文章を考えて、できあがったら、ネットにつなげて会社のメルアドに送信。
帰ったら、決裁を仰ぐ。
マニュアルで見たように、つき返されるんだろうな。

日本とは、労働法が違うから、戸惑った部分は確かにあった。
それでも、係長のマニュアルがあったから、チェックするのに問題なかった。

準備から始まって、本番の最中もずっと、中川係長の有能さに驚きっぱなし。
以前は、過去の報告書しかなかったらしいんだよね。

マニュアルを作ろうと思ったら、その業務を完璧に理解してないとダメ。
それに、わかりやすく書かないと、マニュアルとして成立しないしさ。

これがなかったら、絶対にスムーズには終わらなかったと思うんだ。
決まった後に徹夜しても、間に合わなかっただろう。

凄いなぁとは思っていたけど、思ってた以上だったなぁ。






全てを終わらせて、終業の時刻まで待った。

今夜は、宿泊してるホテルで懇親会の予定。
経費削減とかって言ってるのにさ。
こんなとこにお金使わなくてもいいんじゃない?
こういうのも、格式とかってことかなぁ。


「心配せんでも、懇親会の経費はこっち持ちや」


また顔に出てたらしくて、加藤が宥めてくる。
俺って、まだまだガキってことかぁ。


「先輩から教えてもろたんやけどな。
 インドネシアって、日本と同じで建前と本音の差がすごいんやと。
 ほんで、見栄とか格式とかは、日本以上に気にするらしいわ。
 どっちが上とかやない。文化の違いってことや」

「あー、そうなんだぁ。
 そこまでは、俺、知らなかったなぁ」

「マニュアル作ったんは、中川係長やんな?
 あの人は、そんなことまでは気にしてはらへんと思うで。
 業務に関係ないことは、切り捨てるタイプやろ?」

「お前、よく見てるなぁ」


言われて、思わず手を叩きそうになった。

中川係長は、他の人と違って、奥さんや子どもさんの話はしない。
聞かれたら答える程度で、家庭の愚痴どころか、仕事の愚痴も言わない。

この時、やっと思いついたんだ。

中川係長って、笙と似てるかもしれないってさ。
能力の高さだけじゃない。
人との関わり方とか、性格とかが

笙も、必要な時にしか仕切ったりしない。
面倒見はいいけど、押しつけがましいわけじゃない。

距離の取り方が近い気がするんだ。



「また、何か思いついたみたいやな。
 とりあえず時間やし、会場に行こか」


考え込んだ俺に、呆れた声で加藤が促してきた。
ネクタイを締め直して、部屋を出る。



「......ここ?」

「ああ、俺も驚いた。ここまでの規模やとはな。
 帳簿には計上されてへんかったぞ?」


このホテルは、俺でも知ってるような高級なとこ。
そのバンケットルームを使って、想像以上に豪華絢爛なパーティ。

帳簿に計上されてないって、どういうこと?!

なんか、飲み込みたくないけど、大人の事情が絡んでるんだろうなぁ。

ああ、さっさと日本に帰って、烈の顔見たいよ。

加藤も、隣でおとなしくなっちゃってるしさ。
わかってるように見えて、正義感強いし、わだかまってるんだろうな。


「俺、帰りたいわ」

「俺も」


周りには聞こえないように、ヒソヒソと話してた。
木下係長が近づいてくる。


「食えるうちに食っとけ。
 こっちの事情は、考えなくていい」

「「はい」」


俺、ペーペーでよかったなぁ。
係長が、肩に乗った荷物を下ろしてくれたような気になったんだ。

いつか、係長みたいに、後輩に言う日が来るのか。
説得力なくて、余計に不安させちゃいそう。

それまでに、どれだけの経験値稼げばいいのかなぁ。
考えただけで気が遠くなる。

高そうな料理の味なんか、全然、わからなくてさ。
砂を噛むようなって、このことかって初めて思った。











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