「True Colors」
千紫万紅

千紫万紅 12

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結局、夏休みは日帰りでしか出かけなかった。


近いから、いつでも行けると思ってた、大阪城、USJに海遊館。
烈は、人混みが苦手だから、USJと海遊館は避けてたってのもある。

その烈が、「一度くらいは」って言い出したんだよね。
烈が希望するんなら、俺はもちろん即OK。
烈が喜ぶなら、できることは何でもしたいもん。


大阪城は、ライブでホールにしか行ったことなかった。
今の家からは、遠足気分で歩ける距離なんだ。
二人で、お弁当作って行ってみたら、結構楽しかったな。

暑いから、午前中に出発したけど、さすが大阪の夏。
すぐに蒸し蒸しして、俺、汗びっしょりになっちゃってさ。
烈の提案で、Tシャツと大きなタオルを持っていって、正解だった。

広い公園内を、二人で日陰を探しながら歩いた。
桜や紅葉の時期には、台湾の人がたくさん来るらしい。
和歌山に梅を見に行った時、たくさんいたよな。
あんな感じなのかもね。


USJは、平日でも行列がすごかったなぁ。
俺たちが大学の時にオープンしたんだよね。
テレビでも話題になってて、人気らしいのは知ってた。

でも、あんなに人がいるとは思ってなくてさ。
烈が気分悪くなるんじゃないかって、初めの方は心配してた。

俺の心配をよそに、烈はケロッとしてたな。
最長で二時間待ちとかあったけど、二人で喋ってるうちに時間は過ぎた。

あ、どっちかって言うと、海遊館の方がつらそうだったかも。
並ぶ必要はなかったけど、屋内だから閉塞感があったっぽい。
外の光が見えると、ほっとしてたもん。

ペンギンが何種類もいて、面白かった。
ラッコも可愛かったよ。
あ、大きな水槽に、カツオやマグロ、イワシが、たっくさん泳いでてさ。
つい、「美味しそう」って言ったら、烈に笑われたっけ。

合同練習前に、二人だけでスタジオにも行った。
ドラムとベースだから、ちょうどいいんだよね。






「よし、ええ感じやな。
 みんな、時間ないのに、よう頑張ってるな」


昇平が、リーダーって感じで、練習を締めた。
全員揃った練習は、本番までにあと一度しかできない。
笙が、土日休みってわけじゃないからね。
それでも、この調子ならなんとかなるんじゃないかな。


いつも通りに、練習後は一緒にご飯。
今回は、笙の友達が働いてるイタリアンレストラン。
オーナーも知り合いらしくて、挨拶に来た。


「笙ちゃん、ちょっと早いけど、結婚おめでとう。
 これ、お祝いや、持って帰り」


差し出されたのは、ワインが二本。

パーティの準備を通して、再確認したんだけどさ。
ほんっと、笙って顔が広いんだよね。

大学の時も、そう。
学食で食べてたら、学部の違う学生どころか、留学生や先生たちまで声かけてた。
笙が加入して、チケット捌くのが格段に楽になったって、昇平が嬉しそうだったよな。


「うわ、ありがとうございます。
 パーティでも安ぅしてもろてるのに、なんか申し訳ないわ」

「何言うてんねんな。
 笙ちゃんが連れてきた客は、みーんな上得意になってくれてはる。
 ここでパーティやってもらいたかったくらいやわ。
 人数が人数やから、諦めたけどな」


上機嫌で戻っていくオーナーを見て、由人がニヤニヤ笑ってる。


「ここだけやのうて、貴楽の大将も台北酒家のオーナーもや。
 お前の披露パーティやって言うたら、二つ返事やったわ」

「そうそう、食事と飲み物は、金額の割にはショボくならんと済んでる。
 それも、全部、お前のパーティやからやぞ」


昇平もかぶせたら、笙が真剣な顔で頷いた。


「ほんま、ありがたいわ」


みんな、笙を見て微笑んだ。
口先だけじゃなくて、心から言ってるのが、俺にも伝わってくる。


料理が運ばれてきた。
今夜は、パーティで出す料理の試食も兼ねてる。

冷菜にサラダ、パスタと続いて、魚と肉はニ種類ずつ。
俺と烈、要と笙、昇平と由人でシェアして、全部を味わう。
どれも美味しくて、笙が好きで通う理由がわかった。


「......俺と由人で分けるんは、しかたないけどおもんないなぁ」


食べながら、昇平がぼやくのは、悪いけど笑っちゃった。
まぁ、俺だけじゃなく、みんなも笑ってた。
昇平もわかってるから、怒ったりはしない。

今、彼女いないもんね。
結婚するつもりだった女の子とは、具体的な話を始めたら揉めちゃったんだっけ。
ノーマルでも、うまくいかないことはあるんだなって、報告受けた時に思ったもんな。




「笙!」


コックコートの若い男が、近づいてきた。
さっき名前が出てた人なんだろう。
俺より、少し年上かな。

俺たちにも、礼儀正しく挨拶をして、笙に話しかける。


「どないや?」

「どれも美味しいわ。せやけど、パスタはナシでもええんちゃうかな
 伸びてしまうやろ」

「アホ言え。当日は、ランチ休んで全員で出張るんや。
 伸びたもんなんか、出すわけないやろ」

「え、搬入するだけちゃうの?」

「おう、あっこの会場は、前にもやったことがある。
 下ごしらえは、ここでやるけどな。
 パスタ茹でたり、最後に火ぃ通すんは充分できるで」


安心させるように爽やかに笑って、亮太さんは厨房に戻っていった。



「亮太さん、別人みたいやな」

「おう、たった三年やのにな」


昇平と由人が話してる。
よくわからなくて烈を見ると、烈もわかんないっぽい。

すぐに、笙が気づいて、説明してくれた。


「髪の毛切ってるから、わかりにくいかも。
 よう一緒に対バン演ってたはずですよ。
 亮ちゃん、由人と同い年のギター弾きで、プロ志望やったんですわ」

「ほら、1984っておったやろ。メタル系のバンド」


バンド名を聞いて、驚いた。
記憶の中のギタリストとは、全く別人みたいだったんだ。
すごく巧かったけど、諦めちゃったのかぁ。


「俺ん家の近所に住んでて、よう一緒にギター弾いててん。
 好きな音がちゃうかったから、組みはせんかったけどな」

「オーナーがお父さんで、後継ぐって決めたんですよ。
 今は、おじさんは体いわさはって、厨房には立ってはりませんけどね。
 二代目オーナーシェフ目指して、修行中」

「年が明けたら、イタリアに留学予定やねんて。
 パーティの話聞いて、無茶苦茶、張り切ってはるんや」


みんなの話を聞いてて、ちょっとだけ不思議だった。

うちのバンドは、全員がプロを目指してはいなかった。
だからと言って、よほど無理なバンド以外、プロ志望なヤツのことは応援してたはず。

笙の同級生のバンドは、確かにオリジナリティに欠けるし、華もないから納得したけど。
亮太さんのとこは、かなり巧かったし、コンテストでも常連だったよな。

考えてると、笙が俺の表情を読んで、答えてくれた。


「ヴォーカルだけがスカウトされて、抜けたんですよ。
 そんで、解散になったんですわ。
 ま、結局、そのヴォーカルもデビューしただけで売れてないですけどね」

「あん時、親父さんが入院してたからなぁ。
 考えに考えて、亮太のヤツ、後継ぐって決めよった。
 あんなに好きやったのに、もうギターは弾いてないらしいわ」


由人が、少し淋しそうにしてる。



ユージのことを思い出した。

兄貴が言ってたんだ。
ユージが、兄貴を受け入れたのは、親父さんが病気になってて、早く安心させたかったのが大きい。
本人は言わなかったけど、サムが教えてくれたって。

親のこと考えたら、ユージみたいな頑固者でも妥協することがあるんだな。
そう淋しそうに笑ってた。


俺には親がいない。
それでも、兄貴と姉貴を安心させたいとは思った。
元々、何がやりたいわけでもなかったんだよな。


早くから学者になりたいと決めて頑張ってたのに、お袋さんのことを考えて、進路変更した要。
才能はあったのに、タイミングが悪くて解散しちゃった、亮太さん。

二人とも、キッパリと切り替えて、今の仕事に一生懸命だ。
未練タラタラでグズグズしてないのって、カッコいいよな。

あ、兄貴がカッコ悪いわけじゃないよ。
兄貴は兄貴でカッコいいんだよ、俺にとってはね。











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