「True Colors」
明々白々

明々白々 7

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仕事が始まってしまえば、正月気分もすぐに消え去って、慌ただしい毎日。
入社前研修の受け入れや、人事異動や昇給、退職者の社会保険なんかの、各手続き。
山ほど目の前に積み上がってるけど、やってることは、去年までと同じ。
俺たちペーペーが慣れたせいか、まだ楽になってきたような気がする。

でも、マシになった分、他のことを考える余裕ができたんだよね。
つい、昇平や由人が気になってさ。

向こうが何か言わってこない限り、そっとしておこうと思う。
っつーか、第一、それ以外にできることはない。
わかってるくせに、何かの拍子に思い出して、メールしてみようかと悩む。


なんせ、ルイが亡くなって、Quiet Lifeは解散しちゃったからさ。



休み明けに、ルイの訃報とQuiet Lifeの解散、SMSの独立が正式に表明された。


『ルイのギターがなければ、Quiet Lifeの音は作れない』


メイクなしの少し青ざめた顔したレンが、記者会見で、そう言った。
烈が録画してたのを一緒に見てて、淋しいけどしかたない、そんな気分になった。

だって、ルイ以外のギタリストは想像できなかったんだよ。
同じように、ヴォーカルはレン、ベースはキース、ドラムはケンじゃないとさ。

ファンだけじゃない、本人たちもそう考えてた。

よく、インタビューで言ってたんだよね。


『俺たちは、一人一人が車のタイヤみたいなもの。
 だから、誰一人欠けても走れないんだ』


レンは、新しい事務所の専務取締役になって、プロデュース業のみに専念する。
キースは、すっぱりミュージシャンを辞める。
ケンは、誘われてる、アメリカのバンドに参加する。

残された三人が出した結論は、素人の俺でも順当な気がした。






「ただいま。あいつらから、連絡なかった?」

「おかえり。今日も、何もなかったよ」


ここんとこ、毎日、この繰り返し。
烈も心配してるから、同じことを言われても、きちんと答えてくれる。

あいつらってのは、昇平と由人だけ。
笙と要は、なんだかんだと連絡をくれてる。

笙は、入社前研修はない。さすが、公務員って感じ。
手続きはしてるけど、正式に辞令が出るまでは、せいぜい懇親会程度だって。
東南アジアから帰ってきてからは、バイトして貯金してるらしい。

資格取得のため、テキストや通信講座なんかに金を使いたい。
配属先に寄っては、実家からは通えないかもしれないから、引っ越し費用も欲しい。

そう言ってたら、空港で夜勤に内示が出たんで、引っ越しはナシになった。
次にどこに転勤するかで、また考えるってさ。
夜勤だったら、片道一時間半でも、実家にいた方が、経済的にも体力的にも、楽なんだそうだ。



「笙が夜勤なんて...体、大丈夫なのかなぁ」


晩御飯を食べながら、烈が心配してる。
俺も同じことを考えてた。


「...うん、慣れるのも大変そうだよな。
 公務員だからって、カレンダー通りじゃないしさ。
 俺も、あそこだけは無理だと思ってたもん」

「あいつ、転職するって言ってるけどさ。
 目の前に仕事があると、きちんとこなそうとすると思うんだ。
 ナナが言ってたみたいにブラックなとこだったらさ。
 あいつの能力だと、こき使われそうじゃない?」

「そうだよなぁ。あいつは、自分の運と実力だから、しかたないって考えてるんだろうけど。
 時期が悪すぎたよな。俺たちより、ずっと厳しい就活だったはずだしさ」


俺たちが、ここで心配してもどうしようもない。
それは、わかってるんだけど、つい二人とも心配になる。

昇平と由人のことにしても、性格がわかってるだけに、こちらからは下手に動けない。
だから、余計に気をもんでしまう。
みんなの心配性が、どうやら俺たちにも伝染っちゃったみたい。



笙の話題から、連想が働いたのか、烈がSMSの話題へ変えた。


「あ!SMS、シングル発売できるみたいだよ」

「え、テレビやラジオ干されてたじゃん。なんとかなったんだ」

「うん、公式サイトでもレコード会社でも、告知してた!」


大ファンの烈は、とても嬉しそう。
潰されることはないって信じてたよね。
でも、元の事務所の横槍は、長引くかもしれないって、覚悟してた。


二組の独立は、ルイの遺志だった。
新事務所は「垂井音楽事務所」、つまり、ルイの本名にちなんでる。

社長は鮎川さんで、エイチは常務取締役。
この二人が、新事務所を軌道に乗せるために走り回ってる。

元の事務所とのやり取りは、もう一人の常務で、Quiet Lifeのチーフマネが担当。

そこら辺の情報は、笙と兄貴が教えてくれた。


兄貴も心配してるけど、社長には逆らえない。
他のHAKONIWAメンバー、特にユージは、かなりキレて、SMSの応援に回った。
それで、社長と揉めてるらしい。
板挟みで苦しんでるだろうけど、そのことについては、兄貴は愚痴らなかった。


兄貴も複雑だよな。

エイチに対しては、同い年でも、素直に尊敬してるっぽいのに。
以前よりもっと、ユージに対して、なんかこじれてるっていうか。

才能に圧倒され続けて、いじけちゃったのかも。

相変わらず、春樹には義務しか感じてないみたいでさ。
俺が就職しちゃってからは、少しずつ気力がなくなってる感じなんだよね。

実結のお祝いも、ずっと自分の名前が出ないようにしてて。
俺に電話してきて、「お前のと一緒に、ちぃに送ってくれ」って。

四月から、春樹は小学生。
お祝いしてあげたくても、兄貴に「やめてくれ」って言われると、何もできなくなるんだ。
生まれた時からだから、今さらなんだけど、実結と較べると申し訳なくなる。



頭の中が、あちこちに飛んじゃってた。
SMSの話が出ると、兄貴のことを考えちゃうんだよ。



「一緒に移籍したミュージシャンも、新譜出すっぽい。
 I.W.は、アルバムだって」

「よかったよね。これから来そうだって、烈、期待してたバンドでしょ?」

「うん、すっごく新しい音だと思うんだよね。
 今までにない感じのさ。ただ...」

「ん?」

「SMSみたいに、長く聴いてたいタイプとは違うから、飽きが来るかも」


へーって、単純に感心してた。

俺、ほんと余裕ないんだなぁ。
新しいミュージシャンとか、全然、知らないし。
好きなバンドの新譜は、烈が声をかけてくれるから、自分ではマメにチェックしてないや。



その夜、昇平からメールが来た。
メンバー全員宛に。


『仕事してるうちに、なんとか立ち直った。心配かけて、スマン。
 ルイが死んだんも解散も、めっちゃショックやったけど。
 ルイのおらんQuiet Lifeは、考えられへん。
 ファンのほとんどは、そう考えるはずやろ。
 これが学生の時やったら、もっと引きずったやろな。
 このタイミングなんは、ルイに感謝せなあかんかもしらん』



昇平らしいなって、読みながら思う。
俺たちに気を遣って、重くならないように、でも、正直に書いててさ。

そして、由人からも、その後にメールが来た。


『俺も、落ち込んでられへんな。みんな、ゴメン。
 昇平の言う通りやと思うわ。
 一つ、頼みがあんねん。
 次のスタジオは、Quiet Life演りたいねん。
 俺は、ギターでもキーボードでも演るよって』


俺も烈も、即座に「もちろん」って、返事したよ。


二人が、ルイの死を受け入れた。
プロになってもおかしくなかった、二人。

完コピも、昇平がアレンジしたバージョンも、ちゃんと覚えてるから。

思いっきり、演ろうな。











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