「True Colors」
明々白々

明々白々 6

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今年の正月は、四日が日曜だから、仕事始めは五日。

元日以来、昇平と由人からは連絡なし。
笙だけは、卒業旅行に二月から一人で東南アジアを回るってメールが来た。
その間、昇平と由人をよろしくって。

仕事が始まっちゃうと、俺は入社前研修や異動関係の業務で、余裕がなくなる。
烈が、年度末までは余裕があるから、自分に任せろって言ってくれた。


「もう三年目だからね。ナナのサイクルもわかってきたしさ。
 俺が暇な分、フォローできるよ」


ありがたいなぁと、感謝しながら、最後の餅を食べる。



まだ、ルイの死は公式には発表されてなくてさ。
それも影響してるのか、SMSの公式サイトには、ライブ告知もないんだ。

去年、アルバム出してるから、今年は、大がかりなツアーはないだろうって、予想はついた。
それでも、地上波どころか、BSの音楽番組にも出演予定がない。
烈が、毎日チェックしては、更新されてないことに首をひねってる。


明日は、いよいよ仕事始めだって夜、兄貴から電話がかかってきた。


『なな、お前は知ってる?』

「...もしかして、ルイが死んだこと?」

『ああ、知ってたか。公式発表は、初七日が明けてかららしい。
 独立の話は聞いたか?』

「え?それは知らない...」

『Quiet LifeとSMSが、事務所から独立する。
 昨日、ハワイから帰ってきたら、鮎川さんから電話があった。
 ルイさんが亡くなったから、あの事務所にいるのは危険だと判断したらしい』

「危険って、どういうこと?」

『ルイさんしか、あの社長とは対等にやりあえないからな。
 いいように食い物にされるのは、ゴメンだってことだろう。
 セルフプロデュースできなくなるのは、エイチも我慢できないだろうしな』


ああ、そうか。

Quiet Lifeの音楽的な柱は、レンだ。
だけど、レンは、事務的なこと、つまり、ビジネスについては、全く役に立たない。
それを一手に引き受けてるのは、ルイだって話だったよな。

SMSにしても、ルイという後ろ盾がいなくては、発言権が弱まる。
もっと大売れするように、路線変更を強いられる可能性があるってことか。

そこまでは思い浮かんだけど、俺が心配なのは、兄貴。
合わないはずの業界で、頼りにしてた人がいなくなるのは、つらいよね。



「にーちゃんは、大丈夫?」

『...ショックはショックだよ。信頼も尊敬もしてたからな。
 ただ、俺は、エイチみたいな才能はない。
 社長には恩もあるし、言うことを聞くしかないんだ』



最後に苦しそうに笑って、電話は切れた。

俺が社会人になってから、兄貴は虚勢を張らなくなった。
無理して明るく話そうとはしなくなったんだ。

俺が、一人前だって、認めてくれた証拠だと思う。

嬉しいし、もっと頼られるようになりたいと頑張ってるけど...。
上手く慰める言葉もかけてあげられない。


神崎さんのお母さんが亡くなった時も、そうだった。
姉貴から連絡が来て、慌てて駆けつけたよな。
烈もお世話になったからって、二人でお焼香させてもらったっけ。

もう一年過ぎたんだよなぁ。
一周忌には、日帰りで顔だけ出した感じ。

神崎さんや弟くんたちは、覚悟はしてたっぽいけど、やっぱりすっごく落ち込んでてさ。
下の祐太君が中一だったから、ちょうどお袋が死んだ時の俺の年。
思い出したら、胸が痛くなった。
でも、言葉が見つからなくてさ。


ああ、修行が足りないよなぁ。






「れーつー、サイトが更新されない理由、わかったよ」

「お兄さんから電話?」


頷いて、独立の話をすると、烈は「納得」って顔してる。


「しばらくは、テレビとか干されちゃうかもね。
 あの事務所なら、それくらいやりそうだもん」

「あー、世話になってるから、悪口は言いたくないんだけどさぁ。
 兄貴の使われ方を見てたら、文句言いたくなるもん。
 警戒するのは、当たり前だよね」

「でもさ、エイチもルイみたいに戦略家じゃん?
 だから、このまま潰されたりはしないと思うんだ。
 それに、お父さんたちも一緒にだったら、社長もあまり無茶はやらないんじゃないかな」



ああ、兄貴が前に言ってたっけ。

あの事務所が大きくなったのは、Quiet Lifeがバカ売れしてからだって。
レンとルイが、自分たちの経験を活かして、他のミュージシャンやアイドルをプロデュースするようになった。
それが、ことごとく当たったから、俳優やモデルまで扱う、大きな事務所になったんだ。



「エイチもつらいだろうけどさ。
 烈や笙が、そこまで信じてるような人なら、絶対に立ち直るよ」

「うん、俺、信じてる」


烈がベースを始めたきっかけは、SMSだった。
エイチの音作りやセンスに惹かれて、一人じゃ楽しくないはずのベースを練習してた。

俺は、兄貴が頑張ってギター覚えてる隣で、段ボール叩いてた。
兄貴は、音感はいいけど、リズム感がいまいちだって、悩んでたんだよな。
だから、励ますつもりで、一緒に練習してたんだ。
そのうち、兄貴が自主練する時、貸しスタジオに連れてってもらうようになった。

考えたら、俺だって、一緒にバンドを演りたいなんて友達は、烈以外にいなかった。



「SMSがいなかったら、烈とは、こんなに仲良くなれてなかったよね。
 そういう意味でも、感謝しなきゃな」

「あー、んー、でも、SMSのファンになったのって、ナナとつるみだした後だよ?
 だから、SMSがいなくても、二人でバンド演ってたとは思う。
 ベースじゃなかったかもしれないけどね」


ああ、そっか。
本格的にデビューしたのって、俺たちが高校入った後だよな。
すっごいベテランな気がしてたけど、兄貴とほぼ同期だった。


「そう言ってくれるの、照れくさいけど、嬉しい」


素直に、今の気持ちを言葉にすると、烈が少し赤くなった。
烈も、同じような気持ちなんだろうな。




「さぁ、明日から仕事だよ。今日は、早めに寝よう。
 俺たち、夜更かし癖がつきやすいからさ」


烈に促されて、風呂に入って。
明日着ていくスーツを準備して。


昇平は、もう仕事が始まってるはず。
由人は、明日が仕事始め。


二人が、少しでも元気でいてくれたらいい。
そう祈りながら、灯りを落とした。 











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