「True Colors」
明々白々

明々白々 5

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青ざめた笙は、ものすごく歯切れが悪くて。
只事ではない感じが、すっごくしてて。

急かすのもマズい気がしたから、じっと待ってた。



「昇平。あんな、ルイさんが」

「おう、ルイがどないしてん?大晦日は、恒例カウントダウンやろ?」

「うん、終わってから、倒れはって。
 ......亡くならはったそうや」

「はぁ?正月早々、変なこと言いなや」


昇平は、思いっきり怪訝そうな顔したけど、笙の表情は変わらない。

烈は、驚きで固まってるし、俺はポカンとしちゃってさ。



「まだ公式には発表されてない。
 英兄に、あけおめメールしたら、駿さんから電話かかってきてん。
 「英一はショックで返事ができないから、許してやってくれ」やって」

「なんでやねん?去年のツアーかって、いつも通り演ってたやんか?!
 なんで、こんな急に死ななあかんねんっ!」

「ガンやって。見つかった時には、もう手遅れやったらしいわ。
 言わん方がいいかなとは思ったけど、知ってるのに隠されるんはイヤやろ?」



笙が、ほんっとにつらそうでさ。

呆然とした昇平を見て、泣きそうな顔してるんだ。

昇平が感情を取り戻したのか、座ったまま、頭を抱えこんだ。

このまま、ここにいてもいいのか悩んでたら、笙がまた口を開いた。


「一人になりたい?」

「......すまん、今日はそっとしといてくれるか」


笙が「わかった」って立ち上がったから、俺も烈の肩を抱いて立ち上がった。



部屋の外に出て、ドアを閉めると、ガシャンと大きな音がした。
あれは、たぶん、マグカップの割れる音。

笙は、何も言わずに階段を降りていく。
おばさんが、何事かと台所から飛び出してきたのを見て、近づいていった。


「おばちゃん、昇平にとって、めっちゃショックなことがあってん。
 しばらくは、そっとしといてやって。
 うちらは、もう帰る。ごちそうさまでした」

「......あの子、物に当たるなんて、何年ぶりやろ。
 笙ちゃんが、そない言うなら、叱らんとくわ。
 みんな、また、遊びに来てな」


俺と烈はお辞儀して、「ありがとうございました」ってお礼を言った。
二人とも、まだ頭の中がはっきりしなくて、笙にふらふらとついていく。




近くのコンビニまで歩くと、笙が携帯を取り出した。
メールをチェックした後、すぐに電話をかけてる。

誰にかけてるのかは、俺でも予想がついた。


「...うん、メールに書いたやろ。駿さんが電話してきたん。
 今から行こか?うん、うん、わかった。
 しんどなったら、いつでも話し相手になるから、電話でもメールでもして。
 ...ほな、またな」


切った後に、大きく息を吐いて、俺たちを見る。


「由人も、めっちゃショック受けてますわ。
 英兄ほどやないとは思うけど、それでも二人には大きな存在やったから。
 ...こんな時、何もしてあげられへんのは、悔しいなぁ」



初詣って雰囲気じゃないから、三人でいつものファミレスへ。
コーヒーを飲みながら、笙は、小声で、ポソポソとルイの話をしてくれた。



ルイさんは、英兄にとって、もう一人のお父さんみたいなもんなんです。
メンバーはみんな、そんな感じらしくて。
売れへんかった頃、おばさんが大黒柱やったから、メンバーみんなで子守してくれてたそうです。
離婚しはった後も、ずっと大阪でのライブには会いに行ってたらしいし。

ブロになってからは、ルイさんが一番の相談役やったんですよ。
そこら辺は、烈さんも知ってはるでしょ?
どんなインタビューでも、「尊敬するミュージシャンは、Quiet Lifeのルイ」って答えてますしね。

ミュージシャンとしてだけでなく、プロデューサーとして、社会人として、めっちゃ尊敬してて。
私と喋ってても、しょっちゅう、話に出てきましたわ。
英兄の場合、セクシュアリティの問題も抱えてたから、余計にでしょうね。




そこまで聞いて、また驚いちゃってさ。
隣の烈を見ると、動揺してない。

ステージでの演出だとばかり思ってたから、思わず聞いちゃったんだ。


「あれ、演出じゃなくて、本当だったんだ」

「レンさんは、ノーマルですよ。
 おばさんのこと、めちゃくちゃ愛してはりますもん。
 ルイさんがゲイなのは、業界だけやなく、ファンの間では有名ですやん」


笙が苦笑いして、軽く諌めてきた。
また、やっちゃったかな、俺。



思い返してみれば、ヴォーカルでリーダーのレン以外、スキャンダルは報道されてない。
まだ、それほどの年でもない。
俺が知ったのは、メンバーが四十代に入った頃。

ベースのキースとドラムのケンは、普通に結婚して、子どももいる。
それも、ネットで流れてるだけで、公式には発表されてない。
ルイに関しては、一切、見たことがないどころか、噂すら知らない。

あんなド派手な美形なら、兄貴みたいに寄ってくる女も多かったはずだ。

ああ、ほんっと、俺って鈍い。
兄貴がバイなのも気づいてなかったもんなぁ...。



「まぁ、そこが七海さんのいいとこなんでしょう。
 あんまり繊細過ぎると、人事なんかやってられへんやろし」


笙が少し笑って、やっと場の空気も軽くなってきた。

烈も俺も、好きは好きだけど、昇平や由人ほど、入れ込んではいない。
好きなミュージシャンの死は、もう何度か経験してる。

自分のショックより、昇平と由人の方が、何倍も心配でさ。
でも、笙が言ったように、何かしてあげられるわけでもないんだよな。



「昇平と由人、大丈夫かなぁ...」


俺がつぶやくように言うと、笙が、またつらそうな顔になる。


「二人とも、ちっちゃい頃からの大ファンですからね。
 すぐには立ち直れんとは思いますけど。
 性格考えると、こっちからは、下手に触らん方がいいでしょう。
 正月休みが終わったら、すぐに現実に戻らんならんし」


烈が相槌を打って、言葉を繋いだ。


「うん、そうだね。
 他人がいると、絶対に気を遣っちゃうもんね、二人とも。
 俺もナナも、やけ酒にはつきあえないし。
 立ち直ってきた頃に、話を聞いてあげるくらいかなぁ」

「そうしようよ。笙、伝言頼んでもいいかな?
 まずは、笙に連絡が行くだろうからさ。
 話し相手が欲しくなったら、連絡してくれって」


笙が微笑んで頷いた。

それを合図に、今日は解散。




帰り道。

ずっと、何かを忘れてる気がしてた。
帰り着いて、やっと、はっきりした。


「兄貴、知ってるのかな」


ブラコンなくせに、兄貴がルイさんを慕ってることを、すっかり忘れてたんだ。
俺にとって、遠い世界の話だからか、兄貴に引きつけて考えてなかった。


「確か、いつもハワイだよね?
 メールしてみる?」

「いや、止めとく。事務所から連絡行くだろうしね。
 笙も、俺たちが他に言わないと信じて、話してくれたんだと思うし」



兄貴は、訃報を受けて、どう感じるんだろう。

数少ない、業界での信頼できる人って、前に話してたよな。
兄貴がバイだってことも、ルイとエイチだけには話してあるって。
あ...ルイがゲイだから、話せてたんだよな。
やっぱ、俺って鈍いなぁ。



「そっか」


それだけ言って、烈はショウガ湯を出してくれた。
熱すぎないようにしてくれたのを、少しずつ飲んだ。











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