「True Colors」
明々白々

明々白々 4

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社労士の実務経験を積むには、今の所属では無理。
去年、仕事に慣れてきた頃に、それに気がついて、指定講習を受けてる。


...正確に言えば、自分の資格のこと、すっかり忘れてたんだ。
忙しくて余裕がなくなると、目の前のことしか見えなくなるのは、俺の悪いとこ。

早いうちに講習受けないと、スカッと内容忘れそう。
ってことで、慌てて申し込んだ。


通信制でニ月からの四ヶ月間と講義形式の四日間。
忙しい時期の課題提出は、ハードだったけど、なんとかこなしてきた。
GWには、ほぼ終了できるんじゃないかな。

それが無事に済んだら、夏休みを使って、講義を受けに行く予定。
烈と休みを合わせて、どこかへ行こうと思ったけど、こればかりはしかたない。
烈に話したら、「そんなこと気にしなくていいから、頑張って」って、逆に激励された。






社労士の通信講座を終了後、最初のスタジオ。

全員が、日頃のストレスをぶつけまくってるって感じで、ど迫力の音を出した。
なんでかって言うと、終わったら、みんな「スッキリ」って顔してたから。
自分では意識してなかったけど、俺もそうなんだと思う。




「大阪府と国二、一次は合格しましたわ」


いつものように、ファミレスで晩御飯してると、笙が思い出したように言う。


「ノンキャリて、お前なら一種狙ってもいけんちゃうんか?」


昇平が、俺も思ったことを質問してる。
自分は無理だと思ったけど、笙なら一種でも大丈夫だと思ってたんだよな。


「キャリアなんかなったら、東京と地方をピンポンで飛ばされまくるやん。
 霞が関におったら、資格取る暇もない。
 さっさと転職したいのに、本末転倒になる」


笙の返事を聞いて、すっかり忘れてたことを思い出す。
こいつにとっては、公務員は通過点でしかないんだった。 


「せやな、キャリアなったら、大学院にも行かせられる。
 どんどん、転職する選択肢がのうなるもんな。
 どっちも受かったらどないすんねん?やっぱ、大阪府が第一志望か」


由人は、さすがによくわかってる。
感心してたら、笙が顔をしかめた。


「そのつもりやってんけど...頭痛いねん。
 オトンが、今頃になって、府はやめとけとか言い出してん。
 今、自分が府警本部にいてるかららしいけど、行政職やから関係ないはずやのに」

「親父さん、そこら辺、ガチガチやもんなぁ。
 少しでも、疑われんのがイヤやねやろ。
 まだ大阪市やったら、よかったんかもな」

「せやねん。日程がかぶるから、どっちかしか受けられへんのに。
 さっさと言うといて欲しかったわ」


親父さんを思い浮かべて、言いそうだとは思った。
昇平ん家とは、また違った種類の「見るからに頑固オヤジ」だったよな。

昇平が言うには、宗次郎さんが高校中退するまでは、そこまで厳しくなかったらしい。
それだけ、宗次郎さんは、笙ん家を引っ掻き回したってことなんだろう。



「ほしたら、国ニかぁ。希望してるとこ、あんのか?」

「いくら公務員でも、女は不利やから、片っ端から面接受ける。
 省庁の個別説明会にも行ったんやけどな。
 はっきり、「新卒男子しか採りません」って言い切るとこもあったし」

「それ、人事院に言いつけたらええんちゃうか。
 性別で差つけんのは、今時、あかんやろ」

「そんなん言うたかて、証拠ないもん。
 録画でもしてない限り、逃げられるに決まってるやん。
 もし、人事院から注意が来ても、適当にごまかすだけやろ」


由人の質問に、淡々と冷静に答えてるのが、笙らしくてさ。
俺は、ただ感心するだけだった。

自分でも公務員を受験しようとしてたのに、笙みたいには考えられなかったもん。
男だから、考えなくても済んだんだよな。

宮原さんが、よく「男やから、下駄履かせてもらってる」って、言ってるんだけどさ。
やっと、わかった気がする。
笙みたいな優秀なヤツでも、女ってだけで、こんなに苦戦するんだ。



「まぁ、とにかく、二次に合格せんことには、話にならんし。
 民間も、まだ諦めてないから、心配せんといて」





そして、結局......。


笙は「あそこだけは行きたくない」って言ってた省庁に、採用が決まった。
俺も、就活の時に調べてて、絶対に無理って思ったとこなんだ。

普通なら、ノンキャリは全国異動はないし、地方局なら残業も、それほどない。
でも、あそこは、ガンガンに飛ばされるし、サービス残業がやたらと多い。

労働条件が悪すぎるんだよ。
体が丈夫じゃないのに、やっていけるのか、心配になった。

似た者同士だから、要みたいになりそうな気がしてさ。

あいつは、まだ希望してた会社だから、我慢できるだろうけど。
それに、男で体力もあるし、見た目を裏切って、実は健康体だしね。

でも、笙は、肚を括ったらしい。
そこしか受からなかったんだから、それが自分の実力と運なんだって。

あいつが決めたんなら、口出すことじゃないのはわかってるんだけどさぁ。


とか、思ってたら、あっという間に年末がやってきた。



年が明けたら、また嵐がやって来る。
その前に英気を養う意味でも、正月はゆっくりと休もう。

烈とも相談して、毎年恒例になってる、昇平ん家の新年会と初詣だけのスケジュール。
就活を終了して、卒論も無事に提出したから、笙も合流予定。

要は、休みに入ってすぐ帰省してる。
お袋さんのガンは、今のところは再発はしてない。
だからって、油断はできないから、できるだけ帰省するように頑張ってる。



「あけましておめでとうございます」


烈と二人、昇平ん家に。
おじさんの好きな酒と、おばさんの好きなお菓子を持って行く。
毎年のように押しかけてるから、申し訳ないと思ったけど、お二人に笑い飛ばされた。

二日以降は、仕事のつきあいがあるから、正月気分は元日だけ。
親戚の集まりもないし、昇平一人が家にいても、楽しくないんだってさ。
笙ん家もそうだけど、賑やかなのがお好きだからね、お二人とも。


豪華なおせちやオードブルをご馳走になって、おじさんが酔いつぶれたから、昇平の部屋へ移動。
笙が飲めるようになって、すっごく嬉しそうでさ。
ガンガン飲んでたから、今年は早かったな。

笙は、顔色も変えずに飲んでたけど、いつもより口数が少なかった気がした。
マシンガンみたいに親父さんが喋ってるせいだろうって、勝手に思ってた。



「由人には、さっきメールで知らせたんやけどね」


笙が、昇平に向かって、話しだした。
けど、顔色が悪くなってて、何か言いにくそうなんだよな。


「どないしてん?お前らしくもない」


昇平が怪訝そうに聞き返すけど、やっぱり言いにくそう。

俺と烈は、空気が重くなったのを感じて、じっと二人を見てた。


「うん、あんな......」











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