「True Colors」
明々白々

明々白々 3

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寿司屋からファミレスへ移動して、まだまだお喋りは続く。
要とは話してたんだろうけど、笙の就活を心配して、昇平と由人が質問攻め。

氷河期は続いてる。
人事にいると、実感を通り越して、自分が就職できたのが奇跡だと思うくらい。

そして、やっぱり、笙は笙だった。


「インターンシップは、軒並み選考漏れしてる。
 予想はしてたけど、女は厳しいな。
 外資か公務員しか、道はないかもしれんけど、なんとか頑張るわ」



笙の学歴や資格で男なら、まずインターンシップで漏れることはない。
それは、今年の選考を手伝ったことで、よくわかった。

加藤も言ってたように、本人も「外資か公務員」って考えてるんだよな。




「公務員になってしもても、経験積んで転職はする。
 あ、昇平も由人も、コネは要らんからね。
 前にも言うたけど、念押しとく」

「わかってる。お前がイヤや言うのに、押し付けるわけないやんか。
 親父がうちに欲しいて言うてるけど、絶対に無理やって言うてある」

「ああ、俺んとこも言うてたな。オカンまでが「来てくれたらええのに」て。
 せやけど、お前が嫌がる気持ちもわかるしな。
 第一、俺自身がよそに就職したのに、お前を誘うのもおかしいもんな」


昇平も由人も、つきあいが長い分、笙の性格をよくわかってる。


人事にいるんだから、少しは手助けできればいいんだけど...。


「七海さんに何かして欲しいとか、思てませんから、悩まんでいいですよ。
 社名が変わっても、簡単に体質が変わるとは思えませんもん。
 Arixは、総合職どころか一般職もキツいでしょ?」

「うん、一般職は募集なしで、順次、派遣に切り替える予定。
 女性総合職も、募集はしない」

「コネで埋まるんですね」


ニヤッと笑って、見透かしてる。

ぜーんぶ、お見通しかぁ。
苦笑いして頷くしかないよ。



体質の古さは、こんなとこにも響いてる。
新規採用に、自社や取引先の幹部の息子や娘をねじ込まれる。
もちろん、そこそこの大学だったりはするんだけど、他にたくさん優秀な人間はいるのに。


『ムカつくやろうけど、俺らは上が言うた通りに動くだけや。
 入ってから淘汰されんのを、待つしかないねん』


伊藤先輩が、ボソッと話してた。
幸い、今の人事課には、一人もコネ入社がいない。
だから、気持ちよく働けるんだとも。






楽しい夜を過ごして、烈と帰る。
シャワーを浴びて、リビングで麦茶を飲んで、寝る前にもお喋り。

烈が、嬉しそうに喋るの見てると、すっごくほっこりするんだよね。


「七海の予想通り、笙はお酒強かったねぇ。
 要といい勝負で飲めるんだもん」

「ほんっと、美味しそうに飲んでたよね。
 日本酒が一番!って、辛口のヤツ頼んでてさ。
 親父さんの晩酌につきあってるって言ってたけど、すぐに想像ついたよ」



笙の家にも、何度かお邪魔したことがある。
親父さんが、昇平、由人、要相手に酒飲むの、すっごく楽しそうだったんだ。


『実の息子とは飲む気にならんが、君らと飲むんは楽しいなぁ』


って、ガンガンに勧めてた。

それ聞いて、ちょっと複雑な気分になったよな。

親御さんの反対を押し切って、高校中退して、インディーズデビュー。
すぐにプロデビューしたけど、その頃のことは、詳しく聞いてないまんまだ。

笙だけじゃなく、親父さんも、宗次郎さんのことをいないものとして扱ってる。
それは、どうやら、成功したからって、チャラになるわけではないらしい。

なるんだったら、とっくになってるよな。
兄貴のバンドほどじゃなくても、SMSはそこそこ売れ続けてるしさ。

浮き沈みの激しい業界で、きちんと結果を出し続けるのは、かなり厳しいことなんだ。
就職してから、兄貴には会えてないけど、たまの電話でつらそうなのは感じてる。





「あいつが男だったら、就活は苦労しなくて済むのに。
 上手くはいかないもんだよなぁ」


思わず、言葉が零れた。
烈しかいないから、気が緩んでるんだと思う。


「んー、でもさ」


烈が、考え考え、話し出す。


「笙が、以前、言ってたんだよね。
 タラレバは考えてもしかたないって。
 それに、男だったら、体が弱いことは、女以上にハンデになる。
 一長一短なんだから、自分の能力でできることをやるしかないんだってさ」


あー、笙らしいなぁ。あいつ、いろんな角度から、物事を考えるよね。
それに、常に客観的で自惚れもしないし、状況判断も的確にしてる。

だから、余計にもったいないと思っちゃうんだよ。
人事にいると、なんでこんなクズを、ってこと、見ちゃうからさ。


まぁ、でも。


「できることは、そんなにないけど...。
 せめて、愚痴を聞いたり、ストレス発散につきあうくらい、できるよね?
 俺たちのこと心配してアドバイスくれてたし、恩返ししたいんだ。
 昇平の時とは違って、少しは余裕あるんだから、今度は俺もメンツに入れてよ」

「去年のこと、根に持ってる?」


え、俺、そんなにしつこくないよ?


「俺がいっぱいいっぱいだったから、みんなが考えてくれたんでしょ?
 別に気にしてない。っつーか、逆に、申し訳ないと思ってるよ。
 だから、今年こそ、みんなの役に立ちたいんだってば」


烈が深呼吸して、麦茶を一口。


「そうだよね。ナナは、いつまでも気にするタイプじゃないもんね。
 去年は、要と由人が、ナナには余裕ができるまで話さないって、提案してくれたんだ。
 徹夜したりも多かったし、心配になったしさ」

「自分が思ってたより、要領が良くないって、身に沁みた。
 受験勉強や大学の単位取るのとは、訳が違うし。
 業務量もそうだけど、人事って、文字通り、人間相手だから、プレッシャーもキツい。
 みんなが気遣ってくれるの、ほんっと感謝してるよ」



烈の頭を撫でて、俺が「いつも、ありがとね」って言うと、真っ赤になって俯いた。

照れて真っ赤になってる烈、すっごく可愛いんだよね。
こんなのも、高校時代は考えられなかったなぁ。




笙が帰ってきて、月イチでスタジオでタイコ叩いて。
たまの贅沢で、いいモノ食べる。

笙は、ガンガンに履歴書送ってるけど、最初でハネられてる。
全くめげずに、合間にTOEIC受けて、インドネシア語検定や秘書検定も受けて。


そうこうしてるうちに、俺たちは社会人三年目に入って、笙は四年生になった。

今年度も異動は、課長が総務部次長に、補佐が課長に繰り上がっただけ。
補佐のポストが、しばらく空席なのは、年度途中に海外赴任から帰ってくる人用。


三年目ともなれば、さすがに俺も慣れてきたみたいでさ。
GWは、カレンダー通りに休めるようになったんだ。











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