「True Colors」
明々白々

明々白々 2

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家からは、乗り換え一度で、スタジオの最寄り駅へ。
烈のベースを肩に担いで、二人でスタジオまで急ぐ。

時間に余裕はあるんだけど、全員揃うのが嬉しくて、つい早歩き。

...してるのは、烈なんだけどね。
身長差があるから、烈と歩く時は、合わせるのが習慣になってるんだ。

由人が迎えに行くって言ってくれたけど、せっかくだから、飲みたいだろうしさ。
笙が二十歳を過ぎてるから、アルコール解禁だもん。

元から強い要に昇平、強くはないけど好きな由人。
俺たち二人が飲めない分、笙と一緒に飲むの、楽しんで欲しいじゃん?
スタジオも寿司屋も、駅からは十分くらいにあるんだから、帰りも心配なし!




ドアを開けると、受付前のソファに、もう四人とも座ってた。

久しぶりに見る笙は、髪がストレートになってて、伸びてるくらいでさ。
俺たちに気づいて、嬉しそうに笑ってるのは、全然、変わってないんだよ。


「おかえり!」

「無事、戻りました」


みんな、ニコニコしちゃってさ。
俺もしてるんだろうけど。


「話したいことは、ぎょうさんあるやろうけど。
 とりあえず、音出そうや。笙がウズウズしとるしな」

「ウズウズって...ちょい鈍くなってるから、心配やねんって。
 家でピアノ弾いてみてんけど、やっぱ、ニ年も離れてると指動かんわ」


そんなこと言ってたくせに、いざ始まったら、ガンガンに弾きまくってて。
俺たちも、「これこれ」って感じで、すっごく楽しくて。

予約してた二時間は、あっという間に終わっちゃったんだ。




「あー、もうちょっと弾いてたかったなぁ」


会計を終えた昇平が、ため息を吐くと、笙以外のみんなも頷いてる。


「キリないやん。ライブまでは、なかなか無理やろうけど。
 みんなの都合合わせて、スタジオで演るのは、また来月もできるんやで」

「お前、スパーンと切んなって。相変わらず、男らしいな」

「そう言いたくなるぐらい、楽しかったんだよ。
 昇平が一番ストレス溜まってるしね」


笙がサバサバと言い切って、昇平が愚痴って、烈がフォローして。
いなかった二年が、あっという間に戻ってきたって感じ。




「やっぱ、社会人二年目だけあるわ。
 みんな、顔つきが変わってきてる」


寿司を待ってる間、笙が感心して喋ってる。
こいつは、俺たち相手に、お世辞や嘘は言わない。
褒めてくれるのは、素直に嬉しい。

最初のうち、「年下で女のくせに生意気」なんて思ってたのが、嘘みたいでさ。
今や、完全に信頼できる相談相手。
後輩でも、俺や烈の、はるか上にいるって、納得してる。


「昇平だけは、ちょっと無理してる感じするかなぁ。
 プレッシャーきついんやろうから、しゃあないけど」


ほら、俺なんか、全く気づいてなかったのに、簡単に予想ついてる。
昇平は、苦笑いしてるけど、違うとも言えない。


「まぁ、今日は、俺のことはええやんか。
 お前が無事に帰ってきたのと、就活頑張れって激励の席や。
 好きなもん、バンバン頼みや。親父持ちやよって」

「え、笙の分だけだよね?俺たちまでご馳走になるのは、申し訳ないし」


焦ってる要に、昇平がニヤニヤ顔に変わって言い返す。


「アホ言え。笙だけとか、ケチくさいこと言うかいな。
 お前らのことかって、親父は気に入ってんねん。
 全員が揃うの久しぶりやからって、親父から言うてきてんぞ。
 遠慮せんでええって」


すかさず由人が「親父さんのこと」を褒める。


「さすが、この不景気に生き延びてるだけあるよな。
 バブル弾けた時も、厳しい状況、切り抜けてたし。
 締めるとこは締める、使う時は使う。メリハリついてんなぁ」


昇平は、由人が褒めてるのが、自分じゃないってわかってる。
だから、また言い返して、応酬は続く。


「お前んとこ会社かて、そうやんか。親父さんの会社も就職先も。
 ズラーッと大手の同業他社が倒産してる中、きっちり生き残ってる。
 しぶといのんは、お互い様や」


昇平と由人がやり取りしてるのを、笙が嬉しそうに聞いてる。

由人は、アパレル関連の商社で、広報を担当。
見た目と喋りの達者さは、業務内容に見事にマッチしてるっぽい。


寿司が運ばれてきて、笙の笑顔は最高に明るくなった。




「向こうでは、日本食は高いから、食べる余裕なかってん。
 それに、寿司かって改造されてて、こんなんちゃうし。
 大学は楽しかったし、友達もできて嬉しかったけど。
 二年だけやったから、我慢できたんやと思う」


しみじみと感慨深げに言うもんだから、由人が言ってたの思い出して吹き出した。


『あんな食べモンにうるさいヤツが、ずーっと向こうにおれるかいや』


一昨年、出発直後に、昇平が要を「帰ってこなくなるかも」って、からかった。
その時、由人がそう言って、即座に否定したんだよね。


吹き出した俺を、みんなが不思議そうに見てる。
笙は、自分の言葉の直後だったからか、質問してきた。


「七海さん、私、何か変なことでも言いました?」

「いや、違う。えっとね...ゴメン、ちょっと待って」


説明しようとしたら、余計に笑えてきて、なかなか止まらない。
烈が、「あ!」って声を上げた。


「由人が言ってたの、思い出したんじゃない?
 笙は食べ物にうるさいから、向こうに長期間は無理だって話!」

「そう!烈、よくわかったね!!」


烈は、長い間一緒にいるせいか、俺の頭の中を簡単に読んじゃう時がある。
情けないけど、そのおかげで、ほんっと助かってる。
逆に、俺は鈍くて、烈ほどは読めないんだよね。




「由人、そんなん言うとったん?
 ...まあ、当たってるから、文句言われへんか」


図星でも、感情的にならないところが、笙だよな。
照れくさそうに、イワシの握りを頬張って、またニッコリしてる。


「美味しいなぁ。今日は、一日中「帰ってきたぁ」て、実感し通しやわ」


その笑顔を見て、嬉しくなったのは、要だけじゃない。
全員がニコニコして、同時にウニの軍艦巻きを渡そうとしたから、今度は笙が吹き出した。


「自分の分だけで充分やって。みんなで食べるんが楽しいのに」


それからは、みんなの職場の話や、笙のアメリカでの生活を、ワイワイ話して盛り上がった。
笙が、髪をストレートに戻して伸ばしたのは、就活準備らしい。
元から茶色いし、男と間違えられやすいから、笙なりの自衛策。


「内定取れたら、すぐショートに戻すけどな。
 長いと洗うのも乾かすのも、時間かかってめんどいし」

「ショートのんがお前らしいのは、お前らしいけどな。
 少しは、要の好みに合わせたりしてもええんちゃうか?」


昇平がからかうと、笙じゃなくて、要が応えた。


「似合ってれば、俺は何でもいいよ。
 今の髪型も可愛いし、短いのも可愛かったし」


次の瞬間、笙が真っ赤になって絶句した。

俺と烈は、こんな笙を見るのは初めて。
つきあいの長い昇平も由人も、驚いて固まってるから、もしかして初めて?


「やっぱ、要って大物やなぁ。笙が言葉が出えへんとこなんか、初めて見たわ」


昇平が感心して、由人も相槌を打つように頷いた。

要一人、不思議そうな顔してるのが、すっごく可笑しかった。











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~ Comment ~

きゃーーっ!! お帰りなさい!

笙さん! まあまあまぁ、さらに磨きがかかって!
向こうでオトモダチできた? って聞くのも野暮よね♡

そうか、笙さんでも自衛手段して就活してたのか。
・・・そして、あの出会いがあるんですね。

七海くん、烈くん、昇平、由人。 しっかり支えてあげて!
要さん。 よろしくお願いいたしますーー! <(_ _)> m(__)m


私は鰤と卵焼き、お稲荷さんが好きです。

Re: きゃーーっ!! お帰りなさい!

笙、この時は「顎までのボブカット」です(笑)

イクラ以外は、何でも食べます。
特にウニと白身、イワシやアジが好きではありますが。

↑自分の好みをもろに反映してたり...。お稲荷さんもいいですよね~。
タマゴも、寿司屋のタマゴ、魚のすり身ナシのヤツは大好きです。

あー、お稲荷さん食べたくなってきた!作ろうかなぁ。
でも、明日は、友達が来て「たこ焼きパーティー」なので、明後日にでも(笑)

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