「True Colors」
明々白々

明々白々 1

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『来月頭の土曜の練習、夜は貴楽寿司な』


昼休みに弁当を食べながら、メールのチェック。
弾んだ声が聞こえてきそうな、昇平からのメッセージ。

例の寿司屋へ行くってことは、笙も都合がついたってことだ。

久しぶりに会えるのが嬉しくて、携帯を見てる顔が緩んだみたい。



「何、ニヤニヤしてんねん」


加藤に小突かれて、慌てて顔を引き締める。
誰に見られてるかわからないのに、つい気を抜いちゃう。
ほんと、俺、隙きだらけだよなぁ。




「ニ年ぶりに、バンドのメンバーが全員揃うんだ」

「坂井とやってるバンドか。ああ、あの子帰ってきたんか」



仲良くなってから、わかったんだけどさ。
加藤は、由人も笙も知ってたんだよね。

由人と同じ大学だけど、学部は違うし、マンモス校だから、お互い知らないと思ってた。
実際、由人は加藤を知らなかった。

加藤が、話してくれたんだ。

大学でも目立ってたし、由人のファンは多かったらしい。
ファンの友達に誘われて、由人や俺たちのライブも来たことがあるんだって。

その友達が、俺たちのことを褒めてたって話。
笙が留学してからは、対バンにも参加してなかったから、解散したのかと思ったってさ。


俺がドラムなのは、言うまで気がつかなかった。
サークルの話になって、もういいかって「軽音でバンドやってた」って話したら、由人に繋がった。
由人のバンドと対バンは何度もやってたから、俺たちのバンド「RPG」は記憶に残ったって。

要のヴォーカルと昇平のギター、笙のキーボード。
特に音楽に詳しくない加藤でも、プロみたいだって思ったらしい。




「うん、ニ年ぶりに会うから、どれだけパワーアップしたのか楽しみ」

「お前のこと、説教してくれた後輩やったな。
 ライブで見た時は、野郎かと思てたわ。男前やし。まさか、女の子やとはな」

「背が高いから、よく間違われるけどね。
 特に、うちのバンドはベースが華奢で背も低いからさ」


そう、昇平や由人は人気者だったけど、笙にも女の子のファンが多かった。
野郎だって勘違いしてたりもするんだけど、女だってわかってもファンのままなんだよな。

最初は不思議だったなぁ。
ヅカファンみたいなもんですよって、笙に教えてもらったっけ。
その「ヅカ」が宝塚歌劇団なのも、その時初めて知った。



「ほな、またライブやるんか?」

「んー、笙が就活始めるからね。落ち着くまでは無理かなぁ」

「え、そうなんか。大学院にでも行くんかと思てたな。
 わざわざ、コーネル大なんか留学するて、研究者目指すんが普通やろ」



普通は、そう思うんだよな。

俺は、最初に聞いた時、とにかくすごい、ぐらいにしか思ってなかったんだよね。
自分が採用する立場になると、留学経験とかチェックするから、必要になって調べたんだ。
それで、やっと、どれだけ笙が凄いことをやってのけたのか、理解した。

あいつの好奇心っていうか、探究心は、半端ないんだよね。
どうしても受けてみたかったって、必死に勉強して、金も貯めて。

ほんと、要とは似た者同士だと思うよ。
第一印象は、正反対なんだけとさ。



「そこまでの経験があっても、女やから、就活は苦労しそうやなぁ。
 総合職は、募集人員数、少ないし。公務員か外資狙いか」


加藤が、話したこともない笙の就活を心配してるのが、可笑しかった。
世話好きな性格が、もろに出てるなってさ。



経理課より、うちの方が向いてそうだと思うから、そう言ってみたことがある。
本人は、逆に「人事だけは、絶対にイヤ」だったらしい。


『採用で落とすヤツのこと考えると、胃が痛むわ。
 うちの会社かて、リストラやったりもしてるしな。
 それやったら、金の計算してる方が、何倍もマシやって』


情に厚いと、逆に負荷がかかるんだ。
見た目を裏切って繊細なんだよな、加藤って。
俺みたいに鈍い方が、まだ楽なのかもね。

んで、驚いて、つい、言っちゃったんだよね。


『お前だって、見た目裏切るよな。
 そんなに繊細には、絶対に見えないって』


ってさ。
そしたら、即座に言葉が返ってきた。


『よう言われんねん。小心者やのに、見た目で判断されんの辛いわ』


胸に大きなゴツい手を当てて、本気なのかフザケてるのかわからない口調。
その姿は、ゴリラがギャグやってるようにしか見えなかった。
俺以外にも野本とかいたから、照れくさかったんだろうな。

ノーマルだけど、俺なんかより、よっぽど客観的に自分を見てるってこと。
だから、早々に内定ももらえてたし、同期をよくまとめもする。





仕事に少しは慣れたのと、時期が時期だから、今日は定時で上がれた。
去年の忙しさは、異動で残ってた人間が半分しかいなかったのと、新人が三人もいたせい。
一年経って、一通りの業務を経験すると、それがよくわかった。

残された、足立係長、宮原さん、伊藤さんが、どれだけ大変だったか。
二年目になって、ぞっとしたもんな。
俺が伊藤さんや宮原さんの立場だったら、絶対にテンパってたってさ。



「ただいまー」


夕刊が抜かれてたから、烈が先に帰ってるのがわかった。


「おかえり!」


何か作ってるみたいで、いい匂いがしてる。
今日こそはって、帰りに買い物したんだけど、これは明日に回そう。


「もうすぐ出来上がるよ。着替えてきて」

「うん、ありがと。
 来週は、烈が遅くなるんだよね?
 俺、まだ余裕あるから、晩御飯は任せといて!」


確か、親会社の社内システムを、バージョンアップする予定だったよな。
今度の日曜から作業を始めて、次の土曜までに不具合を修復するって。


「ナナだって、また忙しくなるんでしょ?
 無理はしなくていいからね」

「無理はしてないよ。烈よりは体力あるしさ。
 さすがに、二年目で慣れてきたし。
 烈にべったり甘えてると、また笙に叱られちゃうじゃん!」


烈が吹き出して、次に嬉しそうな顔に変わった。


「メンバー全員集合だね」

「うん、すっごく楽しみ。揃うのも笙に会うのも、貴楽の寿司も」

「俺も!会社の上司に、東通りの寿司屋に連れてかれたんだけどさ。
 高いのに、貴楽みたいに美味しくないんだよねー。
 同じ値段の焼肉の方が、よっぽどマシだと思う」


あ、忘れるところだった。


「明日の夜は、忘れないで。急に仕事入ったりしたら、メールして」

「うん、ナナもね」


宮原さんが教えてくれた、美味しい焼肉屋に予約入れてあるんだ。
烈の誕生日だし、ちょうど週末だからさ。

烈、喜んでくれるといいなぁ。
あ、ってことは、今日の買い物分は、明後日になるんだ。

忘れないように、ホワイトボードに書いとこう。
じゃないと、もったいないもんね。











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