「True Colors」
黒白分明

黒白分明 12

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月曜、出社すると、先に宮原さんが来てた。
俺を見つけると、ダッシュで近寄ってきて、ガバッと音がしそうな勢いで頭を下げる。


「ごめんなさい。体は、大丈夫なん?
 ほんまに、もう。いい年して後輩に絡んでもうて、恥ずかしい。
 中川係長にも足立係長にも、めっちゃ叱られて、反省したわ。
 二度とあんなことせぇへんから、許してくれへん?」


表情を見てると、本気で謝ってるのが、鈍い俺でもわかる。
こんなに反省してるんだから、もういいかなぁ。


「いや、自分の体質わかってるのに、ヤケクソになったのは俺です。
 気にしないでください。ただ、二度目は勘弁してくださいね」

「ありがとう!ほんまに、ありがとうね。
 絶対にせえへんし、なんなら、他から勧められたら、間に入るわ。
 つい最近、一気で死人が出てて、気をつけなって、話してたとこやのに。
 村尾君の意識戻ったって、中川係長から電話もらうまで、気が気やなかったわ」



二人でやり取りしてると、小中と野本が近づいてきた。
朝早めに来て、お茶の準備やデスク周りを掃除してくれてるんだ。

揃って体調を心配してくれて、やっぱり飲むんじゃなかったって、反省リピート。
周りに迷惑や心配をかけるのは、社会人とは言えないよね。

そうこうしてるうちに、伊藤さんや係長たちも出社してきて、全員が揃った。
係長が二人とも早めに来たけど、何かあるのかな。



「金曜日の件は、補佐や課長には内密に頼む。
 宮原も反省してるし、村尾も無事だった。
 こういったことが、二度と起こらないように、足立と気をつける。
 よろしく頼むな」

「中川の言う通り、大事にするとこれからの業務に差し支える。
 俺たちも、もっと注意するから、今回は流してくれ」


ああ、俺の件か。
って、やっばり、俺って鈍いな...。

救急車まで呼んじゃったんだから、補佐や課長には報告する必要があるんだろう。
でも、そうしたら、宮原さんが追い詰められる。
宮原さんに処分があれば、まぁ、あっても「厳重注意」だろうけど、辞められても困るもんな。

今、宮原さんに抜けられると、インターンシップの受け入れ業務に支障をきたす。

...それに、言い方悪いけど、宮原さんに「ちょうどいいお灸を据えた」結果になった。
宮原さんは、分担に文句は言わずに、頑張って働くだろうからさ。


組織が上手く回るなら、それでいいか。
半分は、俺も悪いんだしね。



補佐と課長が出社してきた。
補佐が、不思議そうな顔をして、足立係長に何か聞いてる。

おお、さすが!
空気が微妙に変わってるのを、勘づいたってことかな。
俺みたいに鈍い人間ばっかりじゃないんだ。

って、そんなこと感心してる場合じゃないよ。
さっさと、自分の業務こなさなきゃ。




こんな感じで、ドタバタもあったけど。
上司や同僚に恵まれたおかげで、なんとか仕事にも慣れていった。




気がつけば、もう二年目に入ってた。

俺が入社した時に異動が多かったせいか、今年度はメンバー変わらず。
加藤も経理課に残ってて、すっごく安心した。


昇平に似てると思ったのは、間違いじゃなかった。
距離が近いのは仕方ないって、気にならなくなってきたしね。

最初に「しゃあないな」を聞いてから、ずっとフォローしてくれてさ。
小中にも、それとなく、他の同期を勧めたりして、俺からターゲットを外してくれたんだよ。

ほんっと、ありがたかったな。

冬のインターンシップが終わってからは、また課内全員で怒涛の忙しさに突入で。
一緒に徹夜とかもしてたから、タゲ外れてなかったら、俺、マジギレしたと思う。

小中は、早く結婚して辞めたいみたいで、俺に脈がないって判断したら、すぐに他に行ってた。
それも、気づかなくて、加藤が教えてくれたんだけどさ。

一般職で先が見えない会社に留まるより、さっさと結婚相手を探したい。
大卒な分、野本より二歳上だから、急がないとって焦ってる。

姉貴や笙みたいに、「男に養ってもらう感覚がない」女ばかりじゃないんだな。
そういう意味でも、ちょっと東京と違う感じがする。
みんながみんな、そうじゃないとは思うけど。
俺より資格も能力もあるんだから、もったいないと思う。


そうメールに書いたら、笙の返事で納得した。


『結婚は、保険ですよ。いくら資格があっても、一般職は肩たたきされる可能性が高い。
 給与も安いから、実家にずっといてなあかん。
 結婚すれば、子どもを作るまで粘れば、出産後に事務のパートも応募し易い。
 女は、男よりずっとリアリストが多いし、それだけ頑張った人なら現実見えてるでしょ。
 きっちり計画してはるんですよ』


あー、そうかもなぁって、姉貴のことを思い出した。
ちょっと違うパターンだけどね。





烈に愚痴って、昇平や要、由人と都合が合う時に、スタジオでタイコ叩きまくって。
一年目を乗り越えられたのは、メンバーのおかげでもあるよな。

由人は、俺よりも女性社員に言い寄られてたっぽいけど、かわしまくってる。
秘訣を聞いたら、「お前には無理。加藤とか言う同期に任せとけ」って、デコピンされた。


まぁ、オープンにしてた大学の時はともかく、中学からずっとモテてたらしいしね。
高校の時は、ファンクラブまであったって、昇平や笙が話してたもん。

慣れやコミュニケーションスキルだけの問題じゃなく、俺が鈍いのも大きい。
だから、由人の真似をしても、俺は失敗するだけだってことじゃないかな。


昇平以外は、同じ立場のせいか、愚痴の言い合いもしやすかった。
自由な感じの社風に見える由人の会社でも、頭の堅い上司がいてストレス溜めてるし。

昇平は昇平で、三代目ってことのプレッシャーが厳しいらしくて。
なんでも安々とこなせるように見えたけど、そうじゃなかったんだよな。


「お前らにしか、よう愚痴らんしな」


ほんっと、俺、鈍い。

立場が違うってことは、全面的な味方が、社内にはいないってこと。
いつか自分たちのトップに立つ、そういう目で常に観察される。
同期に相談したり、愚痴ったり、そんなことは、昇平には不可能なんだ。

本人に言われるまで、それに気づいてなかった。
で、どうやら、俺だけっぽい。

烈も要も由人も、昇平を気遣って、メールや電話してた。
俺が余裕がないのを知ってたから、三人でフォローしようって話し合ったらしい。

二年目に入って、やっと周りを見る余裕ができたら、烈がそう話してくれた。






「来週には、笙が帰ってくるよ。
 平日だから、出迎えは要らないって断られた」


要が、ニコニコして話してる。
結局は、一年の延長になった、笙の留学。
超遠距離恋愛でも、要と笙には障害にならなかったね。

笙の見立て通り、要は卒論や仕事に一生懸命で。
何より、他の女の子に魅力を感じてない。


『話が通じないんだよ。宇宙人みたい。
 笙が例外だって、会社でもよくわかった』


だってさ。

まぁ、テレビ見ないし、ブランドには縁がないし。
食べるの好きでも、贅沢しないしね。

女の子が好きそうなモノは、軒並みわからないだろうな。

要らしいって、全員で爆笑しちゃったもん。



あー、いよいよ、笙が帰ってくる。
今度は、あいつが就活だから、少しは助けてあげられるといいんだけど。


......俺じゃ、無理かなぁ。











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