「True Colors」
黒白分明

黒白分明 5

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店から少し離れたところで、烈は待ってた。
白い顔が青ざめて、小さく震えてる。


「早く移動しちゃおう。また顔合わせるとマズいだろ」


声をかけると、黙って頷いてるだけ。
肩を抱いて、駅に向かって歩きだした。


「メールもらった時は、ただ、ヤリたいだけだと思ってた」


ポツリと零した言葉の裏には、後悔が隠れてる。


割り切った関係だと思いこんでたのに、実は先輩を傷つけてた。
そのことに気づいて、ショックを受けてる。

単純に慰めるだけじゃなく、きちんと説明してあげるのも、必要だろうな。
でも、ヤバ過ぎる内容だし、おおっぴらには喋れない。


「ん、俺、特に買い物もないし、羽田で昼御飯にしよう。
 もし、キャンセルがあれば、繰り上げて早く帰ってもいいしさ」

「......いいの?」

「大丈夫だって。さっさと大阪に帰ろうぜ」


明るく、いつもとは違う言葉遣いで笑ったら、烈の顔から少しだけ力が抜けた。
早くマンションに戻って、安心させてやりたい。




羽田に着いて、カウンターで変更を申し込む。
急に決めたから、早割は使ってないし、変更可能のはず。
連休でも中日で昼間なせいか、三時の便に早めることができた。

ただ、二席並んでは無理だったけど、まぁ一時間だし、寝てればすぐ。
少しでも早く大阪に戻る方が、烈にとっても楽になると思うし。


いつ見ても、どこか工事をしてる羽田。

そう言えば、再来年にはワールドカップがあるんだよなって、思い出した。
日韓共同開催って決まった時は、絶対に生で見たいと思ったのに、すっかり忘れてたな。




「軽くでいいから、何か食べよう。
 烈は、お腹空いてると、どんどん暗くなるじゃん」

「否定したいけど、その通りだしなぁ。
 お腹空くと、マイナスの感情って増幅してくよね」

「うん、怒りっぽくなるし、落ち込みやすくもなる。
 俺もそうだから、ほんと似た者同士だよね」


みっともないけど、練習しててもバレバレらしいんだ。
昇平が「これでも舐めとけ」って、飴を口に入れてくる。


『飴ちゃん持ち歩くなんか、オカンみたいなおばちゃんだけやと思てたのに。
 まさか、自分で持ち歩くようになるとは思わへんかったわ』


笑いながら、よくそう言ってたよな。

笙は笙で、無花果やプルーンとかドライフルーツ持ってて、渡してくるんだ。
貧血気味だから、お袋さんに持たされてるらしい。

甘いし、腹にも溜まる。
よく噛んでるうちに、満足感も出てくるから、あれはあれで助かったな。



適当な店で、蕎麦と丼頼んで、二人でがっついた。
大した味じゃなくても、腹が減ってるせいで、充分に満足。

食べ終わって、顔色が戻った烈を見て、すっごく安心した。
まだ少し暗いけど、冷静になってきたっぽいよな。


そのまま、適当にコーヒー飲んで時間を潰して、大阪便に乗り込んだ。
俺は、離陸したら、すぐに寝ちゃってた。
爆睡してたらしくて、着陸の振動でも起きなくて、烈に起こされた。

たぶん、マヌケな顔して寝てたんだな。
なんでかって?烈が、笑ってたんだよ。
カッコ悪いなぁとは思ったけど、烈が笑ってるのが嬉しくて、恥ずかしくはなかった。


伊丹からタクに乗って、マンションへ。
ほんと、近くてよかったな。

コーヒーメーカーをセットしてから、洗濯機に汚れ物を放り込む。
たった一泊しただけだから、部屋のホコリは気にならない。

部屋着に着替えて、手や顔を洗って、うがい。
そうしてるうちに、コーヒーができあがったから、リビングのソファに、二人とも座り込む。



どっぷり暗いわけじゃないし、顔色も悪くはない。
でも、烈は、全身で反省してるって感じ。

何か言い出すまでは、そっとしといた方がいいよね。


しばらくして、烈が話しだした。


「高校時代の俺って、考えなしもいいとこだったんだね」

「んー、俺もそうだったから、偉そうなことは言えないな。
 ただ、遠山さんが烈のことを好きなのは、俺でも気づいてた。
 でも、本人も言ってたじゃん。きちんと伝えてなかったんだからさ。
 烈が悪いと思わなくてもいいんじゃない?」

「うーん、記憶を辿ってみてたんだけどね。
 先輩が引っ越すって時のこと、俺、あんまり、覚えてないんだよ。
 困ったことになるなって、思ったくらいでさ。
 先輩がどんな顔してたかとか、どんな話したかとか、全く思い出せないんだ。
 俺がそんなだったのに、好きでいてくれたんだって思うとさぁ」

「だからって、何の連絡もなしに六年だろ?
 そんなの放置もいいとこじゃん!
 メールだって約束だって、スルーしても良かったのに、ちゃんと対応した。
 烈は、筋を通したんだから、これ以上は考えなくてもいいよ。
 それにさ......」

「ん?」


由人の本気には気づいて、期待を持たせないようにしてるだろ。
そう、言葉を続けようとして、なんか言いたくなくて詰まっちゃった。

でも、言わないと、今の烈は違うんだって、本人に伝えないと。


「今は、口説かれても、期待持たせたりしてないし。
 ギブアンドテイクだけじゃない人間関係、きちんと作れてるじゃん!」


由人の名前は出さずに、なんとか言いたいことは言えたと思う。


「ああ、そっかぁ。そうだよね。ぐずぐず悩んでも、今さらだもん。
 過去は変えられないんだから、同じ間違いしないように気をつける。
 先輩のことは、着拒しといた方がいいかもなぁ。
 もう、連絡来ないとは思うけどさ」


その方がいいかもね、で、この話は終わった。


後は、実結や姉貴たちの画像を見て、どっちに似てるかなんて、明るい話題に。

可愛く撮れてるのを選んで、写真用台紙にプリントアウトしてくれるって。
それに、メモリカードにもコピーして、一緒に送ろうって、言ってくれた。


「普通のカメラと違って、いろんな使い方できるのが便利だよね。
 あっという間に、画素数も増えて、絵もきれいになったしさ」


パソコンもオーディオも携帯も、どんどん便利になってくよな。
ネットだって、かなり普及してきたっぽいしさ。

あ、仕事には、当然のように関わってくる。
だって、作って売ってる会社なんだから!


「烈にガンガン教えてもらわないとね。
 俺、烈や笙ほどは、パソコンとか詳しくないからさ」

「あー、仕事になったら、イヤでも使うようになるもんね。
 俺でよかったら、いくらでも教えてあげるよ。
 ナナなら覚えるの早いから、教えるのも楽だし」

「烈や笙には、評判の悪いArix社製品だけどね」


ちょっとふざけて言うと、烈が顔をしかめた。
俺が内定もらってからは、口に出さなくなったよね。

就職が決まってから、Arixのノートパソコンを買ってみた。
先行してる他社製品に比べると、まだまだな感じがするのは否定できない。
俺でもそう思うんだから、烈みたいに、子どもの頃から弄ってた人間から見れば、評価が低いのは当たり前。


「でも、テレビやワープロ作ってたぐらいから、すぐに追いつくんじゃないの?」


烈からしたら、精一杯の慰めなんだろうけどさ。
俺はこれからだと思ってるから、気にしてないんだよね。


「Arixって、偏りすぎないとこが、長所だと思うんだよね。
 ま、俺が入社して、もっと発展してくのは間違いないよ」

「...ナナ、なんとなくだけど、昇平や由人みたいになってきたよね」


うわ、馴染んでないとか言ってたのに、こんなとこでも影響受けてる?!

ま、烈が笑ってるから、それでいいか。











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