「True Colors」
黒白分明

黒白分明 4

 ←黒白分明 3 →黒白分明 5

ホテルを出て、烈が向かったのは、渋谷。

昼御飯をって、言われたらしいんだけど。
烈としては、できれば、お茶で済ませたい。

俺は、少し離れてついてって、烈が無理に連れて行かれそうになったら、止める係。
最初から一緒に行くのは、向こうも気分が悪いだろうって、烈と話し合った。


これも、笙効果。


単純だから、隣で睨んでれば大丈夫だって思ったけど、少し考えた。
俺も烈も、来春には社会人。
どこで誰が繋がってるのか、わからない。
考えなしに、敵は作らない方がいい。

笙は、最初に出会った頃から、それを理解して実行してた。





「烈!」


嬉しそうに手を振ってる、遠山さん。
俺の前を歩いてる烈は、軽く頭を下げて近づいていく。


「お久しぶりです」


人が多いから、紛れるのは簡単だった。
声がなんとか聞こえるところで、俺は待機。


「きちんと挨拶できるようになってる!
 メールの文章も丁寧だったし、大人になったんだな」


遠山さんって、体型は俺と近いけど、イメージは正反対なんだよな。
優しそうで、落ち着いてて、大人っぽくてさ。

そんな人が、ちょっと顔赤くして、一生懸命喋ってるのに、烈は戸惑い顔。


ああ、想像してた通りなんだ。

烈は、大学入るまでの俺との関係みたいに、遠山さんとも「ギブアンドテイク」だと考えてた。
でも、高校時代に見かけて、俺は違うんじゃないかと思ってたんだよね。


遠山さんは、烈が好き。
だけど、嫌われたくないから、ボディーガード役でガマン。
心理的に距離を詰めると、烈が引いちゃうからさ。

「利用してんのかな」って、思ってたんだけど、烈はそんなつもりじゃなかった。
俺との関係が始まった時に、話してくれたんだよ。
俺と違って、趣味は合わないし、完全にお互いが割り切った関係だって。




「何食べたい?烈は、肉が好きだったよな?」

「とりあえず、コーヒーでも飲みませんか。
 俺、喉渇いたし」

「じゃあ、コーヒー飲みながら、決めよう」


烈の肩を抱こうとして、さっと逃げられてる。
警戒心バリバリになってる烈を見るのは、久しぶり。

遠山さんは遠山さんで、烈の反応に少し驚いてる。
まぁ、ただの後輩だって、肩を抱くぐらいするし。

実際、俺が高校で見た時、烈は、よく肩を抱かれて歩いてた。
そうしてたら、他の男が寄ってこなかったからだけど。


少し歩いて、コーヒーショップのチェーン店へ入ってった。
まだランチタイムだからか、人はそれほど多くない。
俺も後から入って、アイスコーヒーのLをオーダー。


烈とは、近くに空いてるテーブルがあるとこに座るよう、話してる。
遠山さんが、奥の方へ行こうとするのを先回りして、少し手前のテーブルに座り込んだ。


ワガママだけど、こだわらないところは他人任せ。
高校時代の烈しか知らなかったら、今の行動は驚きの連続だろう。
オーダーだって、ホットを二つ頼もうとした先輩を制して、自分はアイスを頼んでた。

アイスなら、すぐに飲んで席を立つことができる。
セルフの店なら、勘定も済ませてあるから、遠慮はいらない。
なんなら、ぶっかけても火傷はしないしね。




「就職決まったんだよな。帰ってくるんだろ?」


ああ、ワクワクしてるの隠せてないよ、先輩。
気の毒だけど、烈にその気がないんだから、気づいてくれないかな。


「いえ、大阪です。転勤もない部署なんで、東京には戻りません」


先輩の顔が険しくなった。
おいおい、六年も放置してたくせに、今さら、何様のつもりだよ?


「そんな...俺、烈に会いたくて、頑張って東京で就職したんだよ」

「いや、そんなこと言われても困ります。
 先輩、引っ越してから、何の連絡もくれなかったじゃないですか」


さすがに、「体だけの関係でしょ」とは、言わないよな。
ちょっと離れてるけど、他に人がいるし、先輩もゲイバレはしたくないだろう。


「連絡取って、もう他に男ができてたら、挫けそうだったんだよ。
 やっと、試用期間も終わって、こっちに定着できる自信ができたから、連絡したんだ」

「俺、先輩にガードしてもらったのは感謝してます。
 でも、一度も好きだとか、思ったことないですよ」


うっわ、久々に出た。烈のバッサリ!

そっと先輩の顔を見ると、青ざめて引きつってる。


「でも...!俺の気持ちは知ってただろ?」

「すみません、ただのギブアンドテイクだと思ってました」



あーあ、先輩の顔、青ざめてたのが、赤くなってる。
怒らせちゃってるなぁ。

でも、嘘はついてないんだよ。
烈は、ほんとにそう思ってたんだからさ。


ヤバいなぁと思って、アイスコーヒーを飲みながら、じっと観察してた。
先輩が激昂して殴ろうとしたら、すぐに動けるように。



先輩が、烈の腕を掴んだ。
烈の顔は見えないけど、力が強かったんだろう、小さく声を上げた。

とっさに立ち上がったけど、先輩は、すぐに手を離した。

がっかりを絵に描いたような顔をして、椅子に座り直してる。


烈が、深く息を吸い込んだ。
大きく吐くと、頭を下げる。


「誤解させてたなら、すみませんでした。
 俺、大阪でやりたいことや、仲間、見つけたんです。
 先輩には、世話になったと思いますし、感謝もしてます。
 でも、遊びとか無理ですから、もう連絡しないでください」



ああ、烈が筋を通してる。

昔のこと謝って、今の状況説明して、礼を言って。
きっちり、線を引いて、断って。

これも、あいつらの影響で、できるようになったんだよな。



「いや、わかってくれてるはずだって思い込んでた、俺がバカだった。
 俺が好きなのは、一緒にいた頃の烈でしかないんだな。
 どんなワガママ言われても、可愛いとしか思えなかった。
 今の烈は、きちんと自分の意志を言葉にできるようになってる。
 まるっきり、別人みたいだ」


先輩は、深い溜め息を吐いた後、哀しそうに笑ってる。


...この人、優しいだけじゃなくて、頭いいんだ。
烈の変化に気づいて、自分も子どもだったって認めてる。

大人で、器が大きいってことでもあるだろう。
ついさっき、感情的になったのに、すぐに冷静になってるもんな。



烈が立ち上がって、もう一度、深々と頭を下げた。
先輩は、せつなそうな顔で、それを黙って見てる。


「失礼します。お元気で」


そのまま、烈が店を出た。

少しだけ遅れて、俺も出る。


六年の間、烈に会いたくて努力してきたのかと思うと、心が痛む。
先輩が、気の毒になっちゃったけど、俺が声をかけるわけにもいかない。


だけどさ、自分でもわかってるんだよな。
きちんと伝えてなかったことは、自分のミスだって。


人の振り見て我が振り直せ、念仏のように頭の中で唱えて。

慌てて、烈の後を追いかけた。











にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ 3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ 3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ 3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ 3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ 3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ  3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ  3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ  3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ  3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ  3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【黒白分明 3】へ
  • 【黒白分明 5】へ

~ Comment ~

NoTitle

烈~~!
七海クンは、ど直球じゃないと伝わらない事がとーっても多いようです。
先輩は気付いたっぽいのに、本人まるで解ってません! ( ´艸`)

鏡でも持ってきてあげようか?

Re: NoTitle

ほんとに...七海は、上書き保存できないタイプっていうか(笑)
自分のことになると、鈍いんですよね。
こーゆーとこ、光といい勝負かもしれません。

家族のフォルダに烈を振り分けて、それで安心しちゃってるのかなぁ(笑)
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【黒白分明 3】へ
  • 【黒白分明 5】へ