「True Colors」
黒白分明

黒白分明 3

 ←臨時休業 20170917 →黒白分明 4

姉貴に会いに行った。

当たり前だけど、姉貴にも帰る実家はない。
神崎さんと二人で暮らしてるマンションに、烈と二人でお邪魔した。
ベビーベッドを置いて、新しい家族の世話に大変そうだけど、幸せいっぱいって顔してた。

なんでも頑張っちゃうから、ちょっと心配してたんだよね。
でも、家事は代行サーヒースを頼んだりしてるし、神崎さんも手伝ってくれてる。

そして、闘病中とは思えないくらい、元気な神崎のお母さんがいてくれる。


俺たちが遊びに行くって、神崎さんから聞いて、張り切ってご馳走作ってくれててさ。
マンションに長居するのは、姉貴が疲れるだろうからって、すぐに実家の方へ案内してくれたんだ。

神崎さんの家族にもおみやげ買ってたから、それを渡して帰ろうとしたら、引き留められた。

烈は人見知りせずに、すっと馴染んだ。
みなさんがいい人で、大歓迎してくれたからだと思う。

ベビーベッドが置いてあって、姉貴には休むように言ってくれて。
ほんとに大事にしてもらってるんだって、実感して安心できた。



...ただ、元気に見えるけど、まだ寒くないのにニットキャップなんだよ。
抗がん剤の副作用で、髪が抜けるって、ほんとなんだな。
そして、手術じゃなくて薬剤治療をしてるってことは、元の場所から遠いところに転移してるってこと。

要から聞いてたけど、こんなに明るくて元気に見えるのに、完治は無理なんてさ。

心がチクッとしたけど、考えないように考えないように過ごして、ホテルへと戻った。




「...ガンって聞いてなかったら、絶対にわからないくらい、お元気だったね」


烈も、気を遣ってたんだろう。
ホテルの部屋で、お茶飲んでたら、ポソッと零した。


「うん、初孫で女の子って、すっごく喜んでたもんな。
 自分のことで大変なはずなのに、姉貴と実結の世話してもらって、ありがたいよ」


俺の姪っ子は、「みゆう」って名前になった。
姉貴と神崎さんが、いくつか候補を考えて、お母さんとお父さんが選んだらしい。

音は可愛らしいけど、秋生まれにふさわしい漢字を使ってある。
画数も多すぎないし、難読ってほどでもない。
今時のキラキラネームの中なら、悪目立ちもしないんじゃないかな。


姉貴が秋生まれで「千秋」、兄貴は冬生まれで「冬威」。
俺は夏生まれだから、連想で「七海」。

あのクソ親父が、全部決めたらしい。
大嫌いだったけど、名付けだけは感謝してる。
字面はいいし、覚えやすい。
就活でも話のネタになったりした。




「実結が大人になるのを見なきゃって、張り切ってらっしゃったし。
 完治は無理でも、少しでも元気で長生きしてもらいたいよ」

「そうだね。誰だって、いつ何が起こるかわかんないもん。
 関西だって、俺たちが入学する前の年にすっごい地震があったしね」


ああ、あの時は大変だったらしいもんな。
昇平や由人、笙の家は、比較的マシだったらしいけど。

神戸の方へ行くと、まだ道路にヒビが入ってるとかあるしさ。
サークルのメンバーには、本人や親戚の家が、崩壊したり火事になったり。
死人やけが人が出たってヤツもいる。



『食器棚の食器が全滅して、裸足やと歩かれへんくてなぁ。
 余震が続くし、石油ストーブは怖ぁて使われへん。
 そんな状態やのに、親父らに、笙が言い出してやぁ。
 物資の配給やら、すぐに動いてて、感心したわ』


笙らしいなと思って聞いてたら、笙は知らん顔してた。
ほんと、褒められるの苦手なんだよな。




「あ、思い出した!」


後は寝るだけになって、烈が急に声を上げる。
なんだろうと思って、顔を見た。


「次に住むとこさ、上町台地にしようよ。
 あの地震の時も、ほとんど被害なかったらしいしさ」

「上町台地って、大阪城から南で天王寺辺りまでだっけ」

「うん、天満橋近辺でも天王寺でも、便利だしさ。
 環状線の内側だと、少し家賃高くなっちゃうけど、環境がいいっぽい」


俺が就活してる間に、そんなことも調べてくれてたんだ。
ありがたいよなぁ。


あ、でもさ...。


「二人で住むの、烈は構わない?
 俺は、すごくありがたいけどさ」

「え、卒業して就職しても、一緒に住もうって言ってくれたじゃん。
 俺、そのつもりで調べてたんだけど?」


よかったぁ。
俺、ひどいことしちゃったから、気が変わってるかもって、ちょっと心配だったんだよね。

とりあえず、烈に本気の相手ができるまでは、一緒に住めるってことか。


「いや、烈が彼氏を作る邪魔したくないと思ってさ。
 烈がいいんなら、俺は嬉しいよ」

「............」


烈の顔が強張って、そのまま黙り込んだ。

俺、またやらかした?!


「ゴメン、俺、また変なこと言った?」

「いや、別に。もう寝るね。おやすみ」



変な空気が流れて、でも、烈は毛布を被って、向こう向いちゃってる。
シングルベッドのすき間は、少しだけなんだけど、すっごく遠く感じる。




悩んでるうちに寝ちゃってたところが、俺の能天気さ。

目が覚めたら、もう烈は起きてて、シャワー浴び終わってた。


「...俺もシャワーするね」

「ん、コーヒー淹れとくよ。ここのだから、インスタントだけど」



半分、ボーッとした頭で、シャワーを浴びてるうちに、昨夜のことを思い出してくる。

あれ、なんだったのかなぁ。

共同生活を続けるなら、今のルールは存続だろ?


友達は呼んでも、男は呼ばない。


まぁ、もうずっと遊んでないから、烈以外とはヤッてないけどさ。

大学と違って、社会人になったら、別々のとこ通うんだし。
違う世界を持つってことじゃん。
そこで、烈が好きになるヤツが現れるかもしれないしさ。

今の烈なら、普通に他人とコミュニケーション取れるようになってるし。
すっごく可愛いから、俺と同類なら寄ってくる可能性は高い。

それで、烈も好きになれるヤツだったら、反対するわけにはいかない。

淋しいけど、仕方ないもんね。

烈には幸せになって欲しい。
兄貴みたいな、苦しい切ない想いはさせたくない。

だって、大事な家族だもん。



「今日は、別行動で、羽田に五時集合だったよな?」

「うん...」


あれ、なんだか歯切れが悪いのは気のせい?


「どうしたの?お袋さんと対決でもするわけ?
 イヤなことだったら、ついていこうか?」

「...遠山先輩から連絡来たんだ。
 ナナが構わないなら、ついてきてくれるとありがたい」


遠山先輩...って、あ、転校してった先輩か。
俺の前に、烈のボディーガードしてた人。


「連絡取り合ってたの?」

「ううん、六年ぶり。俺、携帯のアドレス変えてないじゃん。
 こっち来るって決まった直後に、会いたいってメールが来たんだよ。
 すっかり忘れてた人だけど、助けてもらったのは確かだしさ。
 イヤだって言い難くて、連休に東京でって約束しちゃったんだ。
 ナナに話そうと思ってたけど、タイミング逃しちゃった、ゴメン」

「そんなこと、謝らなくていいよ。
 行きたくなさそうってことは、遠山先輩が下心ある感じってこと?」


烈が、苦笑いして頷いた。

そんなことなら、絶対についていかなきゃ!
烈が世話になったとしても、今の烈に害になるなら、排除しなきゃ!!

大事な烈に、傷一つ、つけさせないからね、うん。











にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ 3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ 3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ 3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ 3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ 3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ  3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ  3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ  3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ  3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ  3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【臨時休業 20170917】へ
  • 【黒白分明 4】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【臨時休業 20170917】へ
  • 【黒白分明 4】へ