「True Colors」
黄道吉日

黄道吉日 12

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ハワイに滞在中は、毎日、起きたら「何しようか」って、烈とワクワクした。

別の島へと足を伸ばして、観光名所もたくさん行った。

解放感で調子に乗って、マリンスポーツもやってみた。
シュノーケリングに始まって、バナナボート、ジェットスキー、パラセイリング。

普段、インドアもいいとこの俺たちが、別人みたいに行動した。
暑いの苦手なはずなのに、全然、気にならなかったんだ。


ただ、完全には振り切れてはいない。


ホテルの中や街中で、Arixの製品見つけるとデジカメで撮ってみたり。
烈も、パソコンショップに行ってみて、出たばかりのOSを触ってみたり。

無意識に、就職後につながるようなことを探してる。

烈に指摘されて、二人で考えたけど、これ、昇平の影響なんだ。



昇平は、入学前から進路を決めてた。

親父さんは、あの地域では大きめの不動産屋で、大手とは違う地域密着型。
その後を継ぐって決めてたから、昇平は、一年の頃から意識的に行動してた。

一緒に行動してる時でも、いきなり立ち止まる。
何かと驚いてると、建築中のマンションをデジカメで撮影してたりするんだ。
一戸建てのモデルハウスや、分譲マンションのモデルルームに、ふらっと入っていったりもする。

今は、どんな間取りが受けるのか、価格帯はどの位か。
情報をいつも集めては、分析してた。

もちろん、資格試験の勉強もしてたけど、普通に社員として働くわけじゃない。
従業員が何人もいるような会社で、いつかは舵取りをしなきゃならない。


最初は驚いてたけど、すぐに慣れて気にしなくなった。
でも、就活を終えた今、その凄さをやっと理解した。

あいつは十八の頃から、先を見据えて努力してたんだよなって。


要だって、そうだ。

入学してからずっと、奨学金とバイトで貧乏生活だったけど、学術書には金をかけてた。
大学の図書館にないと、国会図書館にコピー頼んでた。
そんなことができるのさえ、要に教えてもらうまで、俺たちは知らなかった。

そこまで頑張ったのに、進路変更するのって、すっごく悩んだろうな。
俺だったら、悔しくてしかたないと思うかも。

本人は、ケロッとしてたけど、笙の前では愚痴ったりしたのかな。

ああ、同じ国内だから、笙に電話してみようかって言ってたんだけど。
あいつ、ホームステイしてるから、英語できないとキツいって諦めた。

俺たち、そーゆーとこヘタレ...。




一ヶ月近く、ハワイを思いっきり楽しんで、帰りの飛行機の中。


眠れない烈相手に、みんなの話をずっとしてた。
ハワイのことを話してても、つい、あいつらの話になるんだ。


「由人も早かったよ、進路決めるの」

「ああ、そう言えば内定取るのも早かったっけ」



烈が言うには、志望した会社を選んだ理由は、いろいろあるらしい。

意識したのは、本人が好きな外国のブランドを、OEMで販売してるって知った時。
その会社のことを調べていくうちに、どんどん興味が湧いていったんだって。

繊維関連の企業がバンバン潰れていった中、どうやって生き残ってきたのか。
今もそうだけど、安い外国製品がどんどん入ってくるのを、どう戦略を立てているのか。

そして、


「詳しくは教えてくれなかったけど、どうやら、笙に関係してるっぽいんだよね」

「へ?それ、どういうこと?」

「昇平もだけど、由人も、笙のこと、すっごく可愛がってるじゃん?
 で、笙が喜ぶからって、ボソッと言ってたんだ。
 それ以上は、話してくれなかったから、よくわからない」


二人で首をひねったけど、全然、思いつかない。

そのうち、眠くなってきたのか、烈が無口になった。
お喋りを止めて、烈にブランケットをかけてやると、すっと目を閉じた。

もう、真っ白に戻っちゃったね。


日焼け止めも塗らないのに、烈の肌は、少し赤くなるだけで、黒くならない。
ローション塗って、黒くなりすぎないように気をつけてたけど、俺は真っ黒になっちゃった。

橋本さんや、運転手さんに、二人でデジカメで撮ってもらったんだけどさ。
烈と並んでると、俺が胡散臭くて、頭悪そうで、ちょっと情けなかったな。




帰ったら、また大学と会社のレポート、頑張ろう。

あ、そうだ。

帰って一月も経てば、姉貴の出産予定日じゃん!


烈の提案で、姉貴のおみやげに、可愛いベビー服とかも買ったんだ。
来年の夏に着れるようなサイズを店の人に教えてもらってさ。
弟の俺が思いつかなかったのに、烈が店の前を通りかかった時に言い出してくれて。

日本人の女性が経営してる店だったの、ラッキーだったな。
いつ生まれるのか、どこに住んでるのかって質問されて、いろいろ見繕ってもらった。

性別は聞いてないから、どっちでも着れるようなデザインや色。
それだけを伝えて、後はお任せ。
そこそこの値段して、烈が出すって聞かなくて、結局は割り勘にした。


生まれたら、あれ持って、会いに行こう。
就職も決まってるから、心配させなくて済むしね。



内定の報告したら、姉貴も兄貴と同じくらい喜んでくれた。

ハワイ行きは反対されるかと思ったのに、餞別を振り込んでくれた。
驚いてたら、メールが来たんだ。


『あんたがおにーちゃんに甘えるのは、これが最後のつもりなんでしょ?
 おにーちゃんも気づいてるから、奮発したんだと思う。
 就職すると、一ヶ月も海外なんか、まず無理だからね。
 私も、卒業旅行で贅沢させてもらったから、あんたも楽しんでおいで』


あ、そう言えば、ヨーロッパに行ってたな。
俺や烈に、おみやげたくさんくれたっけ。
オシャレなキッチングッズや写真立て、マンションで使ってるヤツ。



出発前に、メールに添付されてた画像。
大きなお腹を抱えて、神崎さんと二人、ニコニコして幸せそうだった。

兄貴にも送ったらしくて、嬉しそうに電話かけてきた。
すごく楽しみにしてて、一緒になって喜んだけど......。

電話を切った後、春樹のことを思い出して、複雑な気分になった。


俺にとっては、どっちも「甥」や「姪」で。
姉貴んとこに生まれるって知った時、やっぱり思い出して、複雑な気分になったよな。

兄貴が愛せないのは、兄貴自身の問題で、俺には口は出せない。
それでも、もし、俺が役に立つことがあるんなら、兄貴の代わりにフォローできたら。
そう思ったんだ。

姉貴のとこの子は、無条件に可愛いと思う。
可愛がっても、限度を越えなければ、姉貴にも神崎さんにも嫌がられないし。

そう考えた時、罪悪感からかもしれないけど、春樹だって甥っ子なんだよなって。
当たり前のことを、思ったんだ。




長いと思ってたフライトも、そろそろ終わりに近づいてくる。

窓から眺めると、遠くに紀伊半島が見えてきた。


ああ、帰ってきたんだな。

東京から戻る時も、いつの間にか、そう思うようになってた。
二年までは、東京へ帰るって感覚だったのに。


ただいま、大阪。











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